愛猫との快適な暮らしを実現したいという方へおすすめなのが、キャットウォークのある家です。後付けではなく、家づくりの初期段階からキャットウォークを組み込むことを想定すれば、より柔軟で多彩なキャットウォークを取り入れることができます。
そこで、キャットウォークありきで家づくりを進める場合、どのような点に注意すればいいのか、どのようなキャットウォークが実現できるのか、キャットウォークのある住宅で実績のある石川淳建築設計事務所の石川淳さんに話を聞きました。
目次
キャットウォークとは?
単に「キャットウォーク」といった場合、舞台や点検で使う高所の通路という意味もありますが、愛猫家にとっての「キャットウォーク」は、家の中の高い場所に設けられた猫専用の通り道のことです。最近では、猫を室内で退屈せずに過ごさせるための設備やスペースを総称して「キャットウォーク」と呼ぶこともあります。
猫を飼う家にキャットウォークは必要?
猫を飼っている全ての家にキャットウォークがあるわけではありませんが、実際にキャットウォークを設けた愛猫家の人の声を聞くと、猫にとっても、飼い主にとっても好評のようです。やはり、キャットウォークはあったほうがいいのでしょうか?
「少なくとも、猫にとっては快適なようです。外にいる猫は、たいてい縁石の上やブロック塀の上を歩いていますから、ああいう所が好きなのでしょう。また、家の中で猫以外に大型犬を飼っているお宅にお邪魔した際、猫は犬を避けながら歩いているように見えました。猫専用の通り道があれば、猫はもっと家の中を自由に動き回れるはずです」(石川さん、以下同)
キャットウォークに求められる条件とは?
キャットウォークを設置しようと思ったときに気になるのが、どのようなキャットウォークにすればいいかという点です。気をつけたほうがいいポイントはあるのでしょうか?
強度や素材は?
最も気になるのが強度や素材です。せっかくつけたのにすぐに壊れるようでは困ります。
「当然ですが、猫の体重で壊れない強度が必要です。しかも、一匹ではなく複数飼っている場合は、全部の猫が一度に乗っても壊れないようにする必要があります。そのため、どのくらいの大きさの猫を何匹飼っているか、事前に建築士や施工会社に説明して相談したほうがいいでしょう。素材は木が一般的です。軽くて加工しやすく、コストも抑えられます」
レイアウトは?
レイアウトに関して、何か気をつけることはあるのでしょうか?
「猫は多頭飼いになると縄張り意識が生まれるケースもあり、順位が上の猫がキャットウォークにいると、順位が下の猫はそこを通れないこともあるようです。そこで、全ての猫に家の中を自由に歩き回ってもらうため、複数の経路を用意しておくといいでしょう。
行き止まりをつくらないようにすることもポイントです。できるだけ、家の中をぐるぐると回遊できるようにしてあげたほうが、猫も快適に過ごせます」
キャットウォークありきで進める家づくりのメリットは?
既に出来上がった家にキャットウォークを後付けするケースもありますが、新築時にキャットウォークを設計の中に組み込むことで、より多彩で自由度の高いキャットウォークが実現します。
総合的に満足度の高いキャットウォークを設置できる
住宅の設計段階からキャットウォークを前提にすることで、猫も飼い主も満足できる理想的な配置が可能になります。空間を自由にデザインできるため、猫が移動しやすい高さや幅を確保しつつ、安全性や耐久性も高められます。
また、インテリアの一部としてキャットウォークを取り入れることで、部屋全体を調和したデザインにすることができます。
猫にとっては、キャットウォークは、垂直方向・並行方向の移動ができる場所であり、隠れ家や遊び場にもなるので、ストレス軽減や運動不足解消に大きく寄与します。
人の動線上を避けて設置できる
キャットウォークを家の設計段階から計画すると、人の生活動線に合った設置場所を考えることができます。例えば、後から設置する場合、家具や壁に取り付ける際にスペースの制約が生じ、人の動線を邪魔してしまう可能性があります。
それに対して最初からキャットウォークの位置を決めておけば、人の生活空間と猫専用の空間をうまく分けることができます。例えばで人の動線を邪魔する場所は避ける、家具や家電の設置場所を想定する、猫が落下したときに危険のない場所にするなど、猫も人も快適に過ごせる環境にするために検討すべき観点はいくつもあります。また、キャットウォークを天井近くに配置すれば、高い場所を好む猫の本能を満たしつつ、人の邪魔をせずに猫が自由に動き回れる空間が確保されます。
後付けやDIYと比較したメリットは?
「新築時に組み込むことで、キャットウォークが家のデザインの一部になります。そのため、インテリアとして魅力的なものにすることができます」
また、レイアウトの自由度も格段に上がり、壁際に設けたキャットウォーク以外にも、部屋と部屋の間を空中で結ぶ橋のようなキャットウォークや、上下階を結ぶトンネルのようなものも可能になるといいます。人間の居場所と猫の居場所をあらかじめ考えて設計できる点もポイントです。
新築時の設計にキャットウォークを組み込むメリット
・インテリアとして魅力的になる
・レイアウトの自由度が格段に上がる
・人間の居場所と猫の居場所を想定して設計できる
人間の暮らしやすさを邪魔しない工夫
猫にとって過ごしやすい家にこだわるあまり、人間が暮らしにくくなっては意味がありません。人間の暮らしを邪魔しないようにするポイントはあるのでしょうか。
「人の動線と猫の動線が被ってもいいのですが、ぶつからないようにというのは意識して設計した方がいいでしょう。また、小さいお子さんがいる家庭では、誤って子どもがキャットウォークに上ってしまわないようなレイアウトをする必要があります」
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キャットウォークの実例紹介!
キャットウォークには、さまざまな種類があります。ここでは、キャットウォークの実例をいくつか見てみましょう。
リビングの壁を伝う階段状のキャットウォーク
リビングの低い位置から高い位置へ、壁伝いにレイアウトした階段状のキャットウォークで移動できるようになっています。テレビの上に設けた踊り場は、絶好の休憩ポイントです。
屋上へ続く階段状のキャットウォークとらせん階段
人間用の階段の頭上に、屋上へと続く階段状のキャットウォークを配置。その横のらせん階段は猫と人間が共用しています。らせん階段はキャットタワー代わりにもなっており、猫は2つの経路で屋上へ上がれます。
通路のようなキャットウォーク
狭いところが好きな猫のために、天井の低い通路のようなキャットウォークも設けました。路地裏を行くようで、猫も楽しそうです。
寝室の上にわたるブリッジ状のキャットウォーク
部屋の上を斜めに横切るようにわたされたブリッジ状のキャットウォーク。写真の右側にわたり切ると、日当たりのいいロフトへ出ます。猫にとっては、つかの間の空中散歩です。
1階のキャットウォークにつながる2階床のトンネル
上下階に猫が通れる大きさの穴をあけ、1階のキャットウォークにつながるトンネル。2階リビングでくつろいでいると、猫がひょっこりと床から顔を出すユーモラスな光景が見られます。このような仕かけは、新築時でないと難しいでしょう。
猫が過ごしやすい工夫は他にも!
ここでご紹介したキャットウォーク以外にも、広い意味で猫が過ごしやすい工夫は他にもあります。
キャットタワーは、階段状のキャットウォークよりも垂直方向の上下運動を促すため、猫の運動不足解消にいいといわれています。
一日中家で過ごす猫には、外の景色が見える環境を用意してあげることも大事です。猫がゆっくり外を眺められる小窓などがあると理想的でしょう。
他には、猫専用の小部屋をつくって猫グッズを置いておき、掃除のときなどはそこに避難しておいてもらうというお宅もあります。
【注文住宅実例】キャットウォークのある家で猫と住まう先輩たちの事例を紹介!
キャットウォークのある家は、愛猫家にとっては憧れの的。そこで、スーモカウンターを利用してキャットウォークのある家を建てた先輩たちが、どんな住まいを実現したのか見てみましょう。
【case1】猫も家族も大喜びのレイクビューの家
夫の両親に子育てを手伝ってもらえるという思いもあり、二世帯住宅を検討することにしたIさん夫妻。スーモカウンターを訪れ、譲れない条件をいくつか提示しました。それが、「窓からレイクビュー」、「自由な間取り設計」、「高気密・高断熱で漆喰(しっくい)素材を使って壁自身が呼吸するような家」という条件です。
レイクビューの土地は希少でしたが、妻がネットで奇跡的に見つけ、そこにスーモカウンターで紹介された会社に依頼して建物を建てました。新居にはキャットウォークも設置、自由に動き回れる環境に愛猫も大喜びです。もちろん、リゾートのような借景とくつろげる空間にIさん夫妻も大満足。子どもの成長とともに、住まいの成長も楽しみだと語ります。
この実例をもっと詳しく→
【case2】猫専用ルームにキャットウォーク、猫も喜ぶ“ガウディっぽい”家
家づくりを決心してスーモカウンターを訪れた0さん夫妻は、そろってガウディ建築のファンだったこともあり、紹介された建築会社に「ガウディっぽい家」をリクエスト。その他に、「猫専用の部屋」「夫婦の書斎」「広い土間収納」「2つのトイレ」などの希望も伝えました。完成した住まいには、希望どおりの猫専用ルームに加え、リビングにはキャットウォークも設け、4匹の猫たちも嬉しそう。ガウディ作の集合住宅『カサ・バトリョ』との共通点もあって、「ガウディっぽい」住まいに満足しています。
この実例をもっと詳しく→
キャットウォークのある家を実現するためのポイント
最後にあらためて石川さんにキャットウォークのある家を実現するためのポイントを聞きました。
「強度や素材などの基本は押さえつつ、じっくり猫を観察して、猫の気持ちになってつくるのがいいと思います。また、新築時にキャットウォークを計画すれば、家のデザインの一部として魅力的なものが仕上がりますし、後付けでは難しいレイアウトも可能になります」
スーモカウンターに相談してみよう
「どうやって進めたらいいのかわからない」「建築会社はどうやって選べばいいの?」
住まいづくりにあたって、このような思いを抱いているなら、ぜひスーモカウンターに相談を。スーモカウンターでは、お客さまのご要望をお聞きして、そのご要望をかなえてくれそうな依頼先を提案、紹介します。
無料の個別相談のほか、「はじめての注文住宅講座」や「ハウスメーカー・工務店 選び方講座」など、家づくりのダンドリや、会社選びのポイントなどが学べる無料の家づくり講座も利用できます。ぜひお問い合せください。
イラスト/青山京子
取材・執筆/福富大介(りんかく)、SUUMO編集部(総合的に満足度の高いキャットウォークを設置できる、人の動線上を避けて設置できる)