注文住宅を建てたいと考えているけれど、全体ではどれくらいの費用が実際にかかるのかわからないという方も多いのではないでしょうか?
注文住宅は土地代が含まれる場合や、すでに土地を所有している場合など、状況によって最終的な建築費用が異なるため、具体的な把握が難しいかもしれません。
そこで今回は、地域別の統計データをもとに、注文住宅を建てる際の土地代や建築費の費用相場について解説します。
さらに、費用相場別に間取りの実例も紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
目次
注文住宅の建築にかかる費用の相場とは?土地取得、本体工事、付帯工事、諸費用
注文住宅を建てる際には、本体工事や付帯工事、諸費用などの建築費用に加えて、土地を購入する場合はその土地代も含めて考える必要があります。
では、これらの費用は具体的にどれくらいかかるのでしょうか?
ここでは、最新の統計データをもとに、それぞれの費用の相場について解説します。
土地取得の費用相場
注文住宅を建てる際には、まず土地を確保する必要があります。もし土地をすでに所有している場合は問題ありませんが、そうでない場合は、土地の購入費用も予算に含めて計算しなければなりません。
令和4年度住宅市場動向調査報告書によると、注文住宅を建てる際の土地取得費用の相場は以下のとおりです。
全国平均 |
1,819万円 |
---|---|
三大都市圏平均 |
2,626万円 |
参考:国土交通省 住宅局「令和4年度 住宅市場動向調査報告書」
地域によって土地取得費用には大きな差があり、とくに三大都市圏の相場は他の地域と比べて高い傾向があります。
注文住宅を建てる際には、この土地代が建築費用に大きく影響するため、購入予定エリアの相場を事前に確認することが重要です。
本体工事の費用相場
令和4年度の住宅市場動向調査報告書によると、注文住宅の建築費用(土地代を除く)の全国平均は3,935万円、三大都市圏では4,504万円でした。
この費用の大部分を占めるのが本体工事(基礎、骨組み、外装、内装工事など)で、建築費総額の約70~80%がこの本体工事に充てられます。
仮に70%として注文住宅の建築費用から逆算すると、本体工事の費用相場は以下のとおりです。
全国平均 |
約2,755万円 |
---|---|
三大都市圏平均 |
約3,153万円 |
参考:国土交通省 住宅局「令和4年度 住宅市場動向調査報告書」
もちろん、住宅の広さや構造、ハウスメーカーによって費用は変動しますので、これらの金額はあくまで目安として参考にしてください。
付帯工事の費用相場
注文住宅を建てる際には、建物そのものの工事費用だけでなく、地盤改良工事などの付帯工事費用も考慮する必要があります。
一般的に、付帯工事の費用は建築費用の約15~25%が目安とされています。仮に20%として注文住宅の建築費用から逆算すると、具体的な費用相場は以下のとおりです。
全国平均 |
約787 万円 |
---|---|
三大都市圏平均 |
約901万円 |
参考:国土交通省 住宅局「令和4年度 住宅市場動向調査報告書」
これらの金額はあくまで平均的な目安であり、工事内容によって大きく異なることがあります。例えば、土地に古い建物がある場合は解体費用が追加されますし、車庫にカーポートを設置する場合はその分の費用がかかります。
とくに注意が必要なのは、これらの付帯工事の費用が最初の見積もりに含まれない場合がある点です。見積もりを比較する際には、必ず付帯工事の費用も含めて計算することをおすすめします。
諸費用の費用相場
諸費用とは、建築費以外に支払う必要がある費用のことです。具体的には以下のような費用が含まれます。建築費のうち約10%前後が目安となります。
- 登記費用
- ローン手数料
- 土地仲介手数料
- 火災保険料
- 不動産取得税
- 建築確認申請費用
注文住宅の建築費用の平均で、諸費用を10%と仮定した場合の費用相場は以下のとおりです。
全国平均 |
約394万円 |
---|---|
三大都市圏平均 |
約450万円 |
参考:国土交通省 住宅局「令和4年度 住宅市場動向調査報告書」
これらの費用は注文住宅だけでなく、分譲住宅や中古住宅、マンションなど、どの物件を購入する場合にも必ず発生します。そのため、予算を組む際には本体工事や付帯工事などの建築費用だけでなく、諸費用も忘れずに考慮するようにしましょう。
坪数別に見る注文住宅の費用相場
注文住宅の費用は、建物の大きさによっても変わります。ここでは、坪数別に注文住宅の費用相場を見ていきましょう。
令和4年度の住宅市場動向調査報告書によると、物件価格は3,935万円(付帯工事費や諸費用を含む)で、住宅の平均延床面積は123.5㎡です。これをもとに計算すると、1坪あたりの費用は約105万円(1坪は約3.3㎡)となります。
20坪の注文住宅の費用相場
20坪の住宅は、一人暮らしから3人家族までに適しています。あくまでも参考値ではありますが、机上で計算してみると、1坪あたりの平均費用(約105万円)×20坪で費用の目安は約2,100万円となります。
コンパクトながらも快適な住空間を実現するためには、効率的な間取り設計が重要で、設計段階でしっかりとシミュレーションを行うことが大切です。
敷地面積によっては、2階建てや3階建て、または平屋を選ぶことができます。敷地面積に余裕がある場合は平屋もおすすめですが、同じ延床面積で比較すると2階建てよりも平屋の方が、費用が高くなることがあります。平屋を希望される方は、この点に注意して検討しましょう。
30坪の注文住宅の費用相場
30坪の家は一般的に3LDKから4LDKの間取りとなり、家族3~4人で暮らすには十分な広さといえます。広い収納スペースを設けるのは難しいかもしれませんが、コンパクトな造りなのでコストパフォーマンスがよい点が魅力です。1坪あたりの平均費用から計算すると、30坪の注文住宅の費用相場は約3,150万円です。
また、家をコンパクトにすることで、庭を広く取ることができる場合もあります。ご自身のライフスタイルに合わせて、家の広さと庭の広さをバランスよく検討することもおすすめです。
35坪の注文住宅の費用相場
注文住宅を建てる際の一般的な住宅面積は約123㎡(37坪)で、35坪の住宅は平均的な広さです。先ほどの式で目安を計算すると、この35坪の注文住宅の費用相場は約3,675万円です。
国土交通省の「住生活基本計画における「水準」について」によれば、4人家族の推奨居住面積は125㎡(約38坪)とされています。30坪の住宅は3~4人家族向けですが、家族の人数が多い場合は35坪の広さがあると理想的です。
なお、35坪の住宅では4LDKから5LDKの間取りが可能です。各自がプライベートな部屋を持ちつつ、広々としたリビングスペースを確保できます。
40坪の注文住宅の費用相場
4~5人家族が快適に暮らせる広さの40坪の住宅の費用相場は、約4,200万円です。
この広さがあれば、各自の部屋だけでなく、スキップフロアやアイランドキッチンなど、さまざまな希望をかなえることが可能となります。また、二世帯住宅を希望する場合にも、このくらいの広さがあると理想的です。
ただし、広い建坪は建築コストが高くなるため注意が必要です。とくに土地を新たに購入する場合は、建築費用に加えて土地代も考慮しなければなりません。
さらに、将来的に家族の人数が変わると、40坪の広さが「広すぎる」と感じることもあるでしょう。そのため、ライフスタイルの変化に応じて部屋の使い方も考えておくことをおすすめします。
【費用相場別】注文住宅の間取りの実例を解説
これまで、坪数ごとの費用相場について見てきましたが、具体的なイメージがつかみにくい方もいるでしょう。
そこでここからは、費用相場ごとにどのような間取りになるのか、具体的な実例を紹介します
費用相場1,500万~2,000万円の注文住宅の間取り【3LDK+S】
長男が誕生して生活が不便になり、引っ越しを考え始めたTさん。自分たちらしさを出した家に住みたいと考え、注文住宅建築を決め、モデルハウスめぐりをスタート。「段差のある生活っておもしろい」と感じたことから、1階の和室はリビングのフローリングより一段下げて腰かけられるようにしたり、階段の途中には広めの踊り場をつくり子どもが遊べるスペースにしたりするなど、こだわりの間取りを実現しました。
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風通しがよく、段差や吹抜けを楽しむ家
費用相場2,000万~2,500万円の注文住宅の間取り【4LDK】
夫が30歳になったのを機に、住宅ローンの返済期間を考慮して、本格的なマイホーム計画に乗り出したHさん。共働きなので家事・育児をしやすい環境を整えることが重要と考え、玄関→LDKと玄関→洗面・脱衣所の2WAY動線を設け、玄関→洗面・脱衣所の間にファミリークロークを設置しました。また、高調湿塗り壁材や24時間換気システムを採用することで、利便性だけでなく、快適性も高い住まいを実現しています。
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忙しい毎日に2WAY動線とファミリークロークが大活躍!
費用相場2,500万~3,000万円の注文住宅の間取り【6LDK+書斎+4W.I.C】
Sさんが家を建てようと思ったきっかけは、それまで住んでいたマンションに収納が少なかったためです。そこで新居では収納プランにこだわり、リビング、ファミリーリビング、主寝室に大型のウォークインクロゼットを配置しました。さらに、シューズクロークや季節の家電品をまとめてしまえる収納も確保。憧れていたホームシアターや、浴室に青い照明をつけるなど、遊び心もある家を建築しています。
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「部屋ごと」と「集中」のたっぷり収納で、たくさんのモノとすっきり暮らす!
費用相場3,000万〜3,500万円の注文住宅の間取り【3LDK】
築40年を過ぎた家は耐震性や断熱性が低いことから、Fさんは建て替えを決心しました。法規上必要とされる耐力壁に加え、建物の外壁面すべてに構造用合板を張ることで強固な家を建てる建築会社と契約。耐震性・断熱性の確保、限られた敷地の中でもできるだけ広いリビング・ダイニングに、猫が好きなときに好きな場所でくつろげるスペースを、という希望を実現した住まいを手に入れた事例です。
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建て替えで手に入れた猫3匹と安心して快適に暮らせる耐震性・断熱性の高い住まい
費用相場4,000万台の注文住宅の間取り【2LLDDKK】
名古屋市に住むSさん夫妻は、築40年の夫の実家に同居しながら職場としても利用していました。しかし、2017年の台風被害をきっかけに、家の建て替えを決意。リフォームや耐震補強をするよりも、新たに二世帯住宅を建てる方が現実的だと判断した事例です。
夫は自作の間取図を持参し、それをプロの手でブラッシュアップしてもらうことにしました。地震対策として鉄骨構造を希望しつつ、コストパフォーマンスも重視しています。予算は3,000万~4,000万円で建築会社を探し、結果的に1階も2階も1LDKのシンプルな真四角の形にしました。玄関は2つあり、内階段で上下が分離された二世帯住宅が完成しています。
注文住宅ならではの自由度を活かし、壁紙や床材、天井にこだわり、夫妻の世界観を反映したシックな空間が広がっています。
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夫妻の世界観が詰まった、オフィス兼二世帯住宅
費用を抑えるためのポイント
注文住宅を建てる際に、理想どおりにすべての希望を実現するのは難しいものです。とくに最近では、地価の上昇や建築費の高騰により、予算が膨らみやすくなっています。
そこでここからは、予算を抑えるための5つのポイントをご紹介します。
ポイント1:建物や屋根の形をシンプルにする
材料費と工事人件費を減らすことは予算削減に直結します。したがって、建物や屋根の形をシンプルにするのは効果的な方法です。ただ、家や屋根の形は、採光・通風やデザインを考慮して決めるのが基本です。コスト削減ばかり気にすると快適性を損ねたり、見た目のバランスが悪くなったりするので注意しましょう。
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心おきなく音楽が楽しめる 趣味を極めた家
ポイント2:設備機器の数やグレードを見直す
設備機器の数を減らすこともコストダウンに直結します。例えば、採光用に設ける小窓の数を減らす、各階にトイレや洗面化粧台があるなら1階のみにするだけで、数十万円のコストダウンが可能になります。
また、システムバスやキッチンのグレードを見直すのも効果的な方法です。システムバスの壁パネルを普及品に変更すると、十数万円削減できるケースもあります。
ポイント3:造り付け家具をやめる
間取りや収納したいモノのサイズに合わせて設けられる造り付け家具。使用する材料にもよりますが、現場で加工するために人件費が高くなりがちです。間取りに合うように収納スペースをつくりたいなら、置き家具のサイズに合わせてプランニングをするという方法もあります。
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何かと気を遣う超都心のマンション暮らしから、自然に囲まれた子育てしやすい注文住宅へ
ポイント4:塗装や左官など湿式工事を避ける
湿式工事とは、モルタルや塗料などを刷毛やコテで仕上げる工事のことです。一般的に何回も塗って仕上げるため、時間や手間もかかり人件費が高くなります。予算を削減したいなら湿式工事はできるだけ避けて、乾式工事を積極的に取り入れることを検討してみてください。例えば、外壁なら普及品のサイディングを、室内壁なら量産タイプのビニールクロスを選択するとよいでしょう。
ポイント5:オープンな間取りにする
間取りを考えるとき、『〇LDKにしたい』と部屋数を重視してしまいがちです。しかし、間仕切りを減らしてオープンな間取りにすれば、壁やドアなどの材料費と、大工の人件費のコストダウンができます。さらに、部屋数を減らすことで照明やスイッチ、コンセントの数も減らせるので、その分の費用も削減することが可能です。
これら5つのポイント以外にも、自分たちでDIYをして予算を調整する方法もあります。壁に珪藻土を塗る、棚を取り付けるなどが多いですが、営業担当者や現場監督に事前に相談をして、どのタイミングで行えばよいかアドバイスをもらっておくとよいでしょう。大幅な予算削減にならないかもしれませんが、DIYで家づくりに参加することは、家族のよい思い出になるはずです。
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「平屋の家で二世帯住宅」をかなえるために、DIYを採り入れて上手にコストダウン
●監修
佐川 旭さん
佐川旭建築研究所代表。一級建築士、インテリアプランナー。間取り博士とよばれるベテラン建築家で、住宅だけでなく、国内外問わず公共建築や街づくりまで手がける
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・夫妻の年収からいくらの家が建てられるのかをアドバイザーに試算してもらいました。自分たちが注文住宅を建てられる価格帯がわかって、家づくりが一気に現実的になりました(三重県・Mさん)
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※記事中の建築費用は取材当時の価格です。情勢により価格の変動が生じる場合があります。価格は建築会社に確認して家づくりを検討してください
監修/SUUMO編集部(注文住宅の建築にかかる費用の相場とは?土地取得、本体工事、付帯工事、諸費用、坪数別に見る注文住宅の費用相場、費用相場4,000万台の注文住宅の間取り【2LLDDKK】)