明るく広々とした空間で暮らしたいけれど、敷地条件によっては十分に採光が取れない場合も。そんな時には、高窓(ハイサイドライト)を上手に取り入れることで、明るく快適な空間にすることが可能になります。そこで、高窓にはどんな効果があるのか、メリット・デメリットや取り入れる際のポイントについて、高窓を上手に取り入れた居心地のいい住宅を多数手掛ける設計事務所アーキプレイス代表・石井正博さんにお話を伺いました。
高窓(ハイサイドライト)とは? 壁面の高い位置に取り付けた窓のこと
壁面の高い位置に取り付けた窓のこと
高窓(ハイサイドライト)とは、壁面の高い位置に取り付けた窓のことで、高い角度から採光が取れることから、部屋の奥まで広範囲に効率的に光を取り込むことができます。
「特に、都市部の住宅ではどのように採光を取るかが快適な住まいをつくる上での最重要課題。吹抜けなどを取り入れて天井高を高くしても上部が暗いと開放感は出ません。高窓を設けることで明るく広々とした空間にすることができます」
上部から採光を取る手段としてはトップライト(天窓)も有効ですが、取り付けられる場所が最上階などに限られることや、費用面やメンテナンス面を考慮すると少しハードルが上がることから、通常の窓の付ける位置を工夫する高窓は、さまざまなプランにも対応しながら明るい空間をつくることができます。
トップライトの記事はこちらをご覧ください→
天窓(トップライト)のメリット・デメリット 高窓(ハイサイドライト)との違いは?
高窓(ハイサイドライト)の種類
高窓(ハイサイドライト)は、窓が開閉ができるかできないかで、大きくFIXタイプと開閉式の2つの種類に分けられます。
それぞれについて解説します。
FIX(はめごろし)タイプの高窓
FIXタイプとは、開け閉めができない窓です。窓枠にガラスが直接はめ込まれているため、「はめごろし窓」ともいわれます。
採光するだけでなく、サイズや形も開閉式と比較して自由にできるため、デザイン性を高める目的で活用されることもあります。また、横スリット窓のようにガラスを割っても人が侵入できない形にすれば、防犯性も高められます。
一方、窓を開けて換気はできません。空気の循環を目的とする場合は、開閉式の高窓にするのが良いでしょう。
開閉式の高窓
開閉式とは、窓の開け閉めができるものを指します。換気を必要とするスペースや、外の空気を感じたい場合に適しています。
窓の開閉には、垂れ下がるチェーンやループを引っ張るタイプやリモコン操作のタイプなどがあります。
季節や時間帯により、外から虫や木の葉などが入ってくる可能性もあるため、網戸をつけるのもおすすめです。
網戸には、視界を妨げないものや防虫性や通気性に優れたタイプのものなどがあるため、設置場所に合わせて選びましょう。
高窓(ハイサイドライト)のメリットとは?
高窓(ハイサイドライト)には、主に4つのメリットがあります。
高窓を設置したい場所の周辺環境や部屋の用途など実情に応じてメリットを活かしましょう。
採光性とプライバシーの確保を両立できる
高窓の最大のメリットは、プライバシーを守りつつ採光が取れるという点です。そして、高窓から視線が抜けることで空間に広がりが生まれ、外の空や緑などの景色を楽しむこともできます。
「通常の高さの窓は外から中が見えてしまうので、カーテンやブラインドをつける必要がありますが、高窓の場合カーテン不要でできることも多い。開放感のある暮らしを実現できます」
防犯面を強化できる
プライバシーを守りつつ開放感を楽しむことができる高窓は、防犯面におけるメリットも。1階の個室や洗面所などは道路から見えにくい場所にあることも多いので注意が必要です。高窓にすることで防犯面を強化することができます。
室内の換気が効率的になる
また、上にたまった暖かい空気が高窓から抜けることで、低い窓から空気が吹いて空気の流れが生まれるので、効率的に室内の換気が可能になります。
「最近は在宅勤務が増加する中で、リビングを中心に住まいの快適性が重視されてきています。その中で、自然の光や風をうまく室内に取り入れることで季節の変化を感じるだけでなく、気持ちが快活になったり癒やしてくれたりと、窓は機能面だけでなく、情緒面でも重要な役割を担っているのです」
壁面が広くなり活用しやすくなる
窓が多い部屋や大きな窓がある部屋では、家具やテレビなどの配置が難しくなります。しかし、高窓のある部屋だと、採光を取り入れつつ壁面を広く活用できます。広くなった壁面に家具や電化製品などをレイアウトできるため、インテリア配置のバリエーションが広がるでしょう。
部屋の空間をより自由に使えるため、ライフスタイルの変化にも対応しやすくなります。
高窓(ハイサイドライド)のデメリットとは?
メリットがある一方で、掃除がしづらいことやインテリアに影響するなどのデメリットもあります。また、最近では窓の断熱性能は改善されていますが、壁面との比較では性能が劣る点は留意しておきましょう。
掃除がしづらい
高窓のデメリットとしては、掃除がしづらいという点が挙げられます。
「窓の位置を決める際には、掃除の方法についても考えておきましょう。外から高窓を掃除できる柄の長い道具も市販されています。景色を見る目的がなければ、型板ガラス(すりガラス)などを選ぶとよいでしょう」
開閉式の場合、チェーンがインテリアに影響することも
通風・換気に使う場合は、開閉ハンドルに手が届く高さかどうか、手が届かない場合は開閉するためのチェーンが垂れ下がるため、インテリアにも影響が出ることも。また、窓の開閉方法を電動にする場合は、その分コストが通常の窓に比べて4万〜5万円程度高くなります。
【空間別】高窓(ハイサイドライト)の取り入れ方
高窓(ハイライドサイト)の具体的な取り入れ方についてご紹介します。LDKのある部屋、水まわりのある部屋、廊下・階段から北向きの部屋まで、間取り設計の参考にしてください。
LDKは主役級の窓と脇役の高窓を組み合わせる
LDKは家族が集いくつろぐための重要な場所。高窓を効果的に取り入れるためには、一方向は庭に面した大きな掃き出し窓を設け、反対側もしくは左右に高窓を設けると、二方向から採光が取れることで空間が立体的に感じられるだけでなく、異なる視線の抜け方が楽しめます。
「また、敷地条件からリビング側に大きな窓を設けられない場合も、部屋の一部を吹抜けにして高窓をつけると、縦空間の広がりが増して広々と感じられ、部屋も明るくなりますよ」
水まわりや個室は家具などの上に高窓を
「トイレや個室など比較的狭い空間の場合は、家具などを置く都合上窓が取れないケースが多い。上部に高窓を設ければ、暗くなりがちな空間も明るくすることができます」
トイレや洗面室などはプライバシーの観点からも、高窓にすると安心です。


階段や廊下など閉塞感が出る場所にも
スキップフロアや階段などの天井が高い場所に高窓を設けると、上から光が降り注ぐので閉塞感があるコンパクトな空間でも明るさを確保しやすくなります。
「廊下や玄関など暗くなりがちな場所にも、最高や通風を目的として高窓を設けるケースも多いです」


北向きの高窓は柔らかい光で落ち着いた空間に
「北向きの居室は直接光が入らない分、安定的に柔らかな心地よい光が取れるため、落ち着きのある空間に。「画家のアトリエの窓は北向き」といわれるように、北向きの高窓から光を取り込んで読書や趣味を楽しむ部屋にするのもオススメです。南向きの高窓からは活動的な光が入ってくるので、それぞれの空間のもつ雰囲気を楽しむことができます」
失敗・後悔しない!高窓(ハイサイドライト)を取り入れる際に注意すべきポイント
家が完成した後では、高窓(ハイサイドライト)の位置・大きさの変更は難しいため、設計段階で高窓の設置については十分な検討が必要です。失敗・後悔しないためにも注意すべきポイントを解説していきます。
壁と窓のバランスを考えながら光を取り込む場所を検討する
まずは、どこから光を採り入れるかを考えて高窓の位置を検討しましょう。下がり壁をなくし、天井側に設ければ見た目がスッキリとした印象になり、キレイな光が差し込むので気持ちのいい空間を演出することができます。
「広い壁面は室内を落ち着かせる要素なので、壁と窓のバランスが大事。空間を明るくすることばかりに気を取られてたくさん高窓をつけてしまうと、断熱性も落ちてしまいますし、デザイン面でもインテリアのアクセントとしての効果が薄れて落ち着きのない部屋になってしまうので注意しましょう」
また、家具の配置をする場合は、家具の大きさやレイアウトなどもイメージして高さを決めておくことが大切です。
方角や隣家・道路付けの状況などに注意して設置する
隣家や道路に接した部屋では高窓により、隣家と窓の干渉を防いだり、道路からの視線を遮断しながら採光を確保できます。しかし、西日が差し込むような方角に設置すると、まぶしいだけでなく夏場の室温上昇、家財の日焼けが発生する可能性もあり、注意が必要です。
一方、北側に高窓を設置すると、直射日光を避けると同時に日中は一定のやさしい明るさを確保できます。
また、テレビなどを置く場合、テレビの上に高窓を設置するとテレビが見えにくくなるおそれがあります。家具・家電の配置も考慮したうえで検討しましょう。
必要に応じてカーテンやロールスクリーンを設置する
隣家からプライバシーを確保したい場合や西日を遮りたい場合には、部屋の状況に応じて、カーテンやロールスクリーンの設置を検討してみましょう。
時間帯や季節に応じて日光を遮りたい場合はロールスクリーンがおすすめです。開閉は電動で行うものやチェーン式のものがあります。デザイン性の高いものから遮光など機能性に優れたものまで実情に合ったものが選べます。
ただし、竣工後に設置する場合は場所によっては足場を組み立てるなどの費用も発生するため、建設中に設置できるように設計時点でよく検討してください。
高窓の目的に合わせて窓のタイプや開閉方法を考える
景色を見るためなのか換気のためなのかによって、開閉方法やガラスの種類などの選び方は変わります。高窓の役割に合わせて選ぶようにしましょう。
「高窓全てを手動開閉にすると、ひもやチェーンが垂れていて見栄えが悪くなるだけでなく、開閉が億劫になり開けたままになってしまうことも。また、窓だけでなくカーテンやブラインドの開閉も考えておくことが大切です。電気配線の関係で後から電動にはできないので注意が必要です」
掃除の仕方や安全面にも配慮を
高窓は掃除しにくいことから、あらかじめどのように掃除する頻度はどのくらいか検討しておきましょう。目の高さから遠くなるため高窓の汚れは目立ちにくいですが、通風・採光面のみの役割であれば型板ガラスなどにすると、より汚れが目立ちにくくなります。
「近年は台風などの勢力が強まっているため、強風によってガラスが割れた場合、高い位置からガラスが飛び散るので危険です。場所によっては飛散防止性能のあるフィルムを貼っておくなどの対策をしておくと良いでしょう」
高窓(ハイサイドライト)を上手に取り入れた実例
実際に高窓(ハイサイドライト)を上手に取り入れた5つの例を紹介します。平屋住宅や吹抜け住宅のリビング、視界が広がる高台や、旗竿地(はたざおち)をはじめとした密集地などの活用例に加え、洗面所に高窓を取り入れた例もあるので参考にしてください。
平屋を活かして高窓か光が注ぐリビングに
旗竿状敷地に中庭付きの平屋を建てたKさん。平屋であることを活かし、高さのある勾配天井の上部に高窓を設けて明るいLDKに。生活動線にもこだわり、快適な暮らしを実現しています。
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吹抜け+高窓で明るい空間を実現
建築会社からの提案でハーフ吹抜けにした明るく開放的なリビングは、落ち着きのあるダイニングとのメリハリを演出しています。
LDKのうち約8畳のリビングの天井は、ダイニングより1mほど高い約3.4mに。テレビを置く東の壁面と南側の高い位置にFIX窓を設置して、プライバシーを確保しながら高い位置から光を招き入れました。
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明るくスタイリッシュな和モダンな洗面室
落ち着いた色合いの木目に黒とグレー、白を組み合わせ、思い描いていたとおりのシックな和モダン住宅を完成させたAさん。短い動線ですべての家事を済ませることができるようになっており、1階だけですべての家事が完結する間取りに。洗面所も高窓で明るい空間にしつらえました。
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いろいろな角度から光が差し込む「カーテンなしで過ごせる」家
視界が広がる土地を活かしたオープンなLDKに大きな窓を設け、「カーテンなしで過ごせる」開放的な家に。大きな窓以外の壁面に高窓を設けて、いろいろな角度から光が差し込みます。
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木々の緑を見下ろす高台に建てたこだわりデザインの開放的な家
大きなハイサイドライトで密集地でも明るいリビング
大きな窓のある吹抜けリビングにこだわりがあったKさんご夫妻。旗竿地に建てた家には高窓を設置して採光を最大限に取り入れました。また、外構フェンスには半透明のアクリル板を張り巡らせました。
この結果、リビングでは窓を開けても外からの目線が気になりません。密集地にもかかわらず、リビングに設置された高窓から日差しが得られるため、ソファでひなたぼっこをするのがKさんのお気に入りだそうです。
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周囲を家に囲まれた旗竿地で、最大限に開放感と光を手に入れた家
スーモカウンターでかなえよう!
このように、高窓(ハイサイドライト)を取り入れることで、プライバシーを守りながら明るく開放感のある空間にすることができます。しかし、高窓を取り入れながら自分たちの希望の暮らしをかなえてくれる建築会社はすぐには見つけられません。
そこで頼れるのがスーモカウンター。注文住宅の新築・建て替えをサポートしているスーモカウンターでは、家づくりの不安を解決できる無料講座や、アドバイザーに悩みを相談できる無料の個別相談などを実施しています。個別相談では住宅建築の予算や希望条件の整理、建築会社の紹介など、注文住宅を建てる際のあらゆる不安について、知識と経験のある専任アドバイザーに無料で何度でも相談できます。
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監修/SUUMO編集部(高窓(ハイサイドライト)の種類、壁面が広くなり活用しやすくなる、方角や隣家・道路付けの状況などに注意して設置する)
一級建築士、OZONE家design 登録建築家。石井さんが代表を務める設計事務所アーキプレイスは、「敷地の特性」を活かし「建て主のライフスタイル」を大切にして、デザインとともに温熱環境や安全性、品質、コストの“バランスのとれた家づくり”を心がけている。 設計事務所アーキプレイス(https://archiplace.com)