おしゃれで開放感抜群のアイランドキッチンですが、どのような魅力やメリットがあり、どこがデメリットなのでしょうか。一級建築士であり、大学でキッチンデザイン論を教えている井上恵子さんに話を聞くとともに、実例を紹介します。
アイランドキッチンとは?
「シンクやコンロが備わったキッチンが壁付けになっておらず、周囲(四方)に空間があって島状になっているキッチンをアイランドキッチンと呼んでいます。
島になっている部分に、
・シンクとコンロが備わっているもの(図版1-➀)
・シンクのみ(図版1-➁)、コンロのみ(画像1)
・パーティーシンクのみ(図版1-➂)
・調理台のみ(図版1-➃) など様々なバリエーションがあります。
パーティーシンクとは、主にグラスを洗ったりワインを冷やしたり、メインのシンクとは別にサブ的な使い方をする小さなシンクのことです。」(井上さん、以下同)
アイランドキッチンのタイプ(図版1)
アイランドキッチンのコンロのみ島になっているタイプ(画像1)
アイランドキッチンのメリットは?
アイランドキッチンは、開放感あふれる空間を演出し、複数人で調理や配膳などができるため、家族や友人とのコミュニケーションを促進します。
さらに、レイアウトの自由度が高く、ライフスタイルに合わせた使い方ができるのも魅力です。
開放感がある
「ほとんどのアイランドキッチンは、頭上に吊戸棚がないため、開放感は抜群です」
収納が足りない場合は、吊り戸棚の代わりに吊り下げシェルフを採用するケースもありますが、その場合でも向こうが透けて見えるため、開放感を損ないません。
複数人で調理がしやすい
「キッチンに行き止まりがないので、複数人で調理をしやすいというメリットがあります。左まわりからも右まわりからもアクセスできますし、ワークトップがフラットなタイプなら正面からもお手伝いができます」
おしゃれなイメージがある
「アイランドキッチンを選ぶ人は、こだわりのある人が多い印象があります。システムキッチン発祥の地であるドイツではキッチンは設備というよりは家具、インテリアの一部であり、いつもピカピカにしておくご家庭が多いようですが、それと同じような考えの人が積極的にアイランドキッチンを選ぶのでしょう。四方に空間があって目に触れる面積が多いことも影響していると思われます」
コミュニケーションが取りやすい
「キッチンの周りに壁がないため、調理中に人とのコミュニケーションが取りやすいというメリットがあります。大勢でキッチンの周りを囲んで、会話をしながら一緒に調理をすることも可能です」
レイアウトの自由度が比較的高い
アイランドキッチンは、レイアウトの自由度が比較的高いのが特徴です。壁から独立して配置されるため、部屋の形状に合わせて柔軟な設置が可能となります。その分スペースが必要になるため、コンパクトな住宅では導入が難しい点に注意が必要です。
十分な広さがある場合、アイランドキッチンとダイニングテーブルを一体化させたり、作業台を増設したりと、ライフスタイルに合わせたカスタマイズが可能です。また、動線の自由度も高く、料理や片付けを効率的に進めることができます。
導入を検討する際は、専門家のアドバイスを受けながら、自宅の条件に適したプランを慎重に検討しましょう。
アイランドキッチンのデメリットは?
メリットもたくさんある一方で、アイランドキッチンにもデメリットがあります。一定のスペースが必要である点、においや油・水ハネが周囲に広がりやすい傾向がある点などに注意が必要です。
また、子どもの安全面や整理整頓の必要性、比較的高額な設置費用なども考慮すべきでしょう。
スペースに余裕が必要
「アイランドキッチンを採用するには、キッチンの四方に動線のスペースを確保しなければならないため、ダイニング・キッチン(DK)であれば最低でも6畳程度のスペースが必要です。
リビング・ダイニング・キッチン(LDK)であれば12畳ほどは欲しいところですが、それでも大きなソファーセットは諦めないといけないかもしれません。ある程度の広さがないと、アイランドキッチンを採用するのは難しいと言えます」
においがリビング・ダイニングに広がる
「周りに壁がなく、リビング・ダイニングとつながっているため、においは広がります。対策としては、強力な換気扇を付けるという方法があります。
特にIHコンロの場合は上昇気流が起きにくいため、強力なものをおすすめします。また、運転時の音も気になるものなので静音タイプのものをおすすめします。」
周囲に油ハネや水ハネしてしまう
「アイランドキッチンは、四方に壁がないため、油ハネや水ハネ対策は必須です。油ハネは、コンロ前にオイルガードを付けることで対策できます。また周辺の床材、または床の塗装を油や水に強いものにするといった対策も考えられます」
小さい子どもが入ってきて危険
「アイランドキッチンは、市販のベビーガードが取り付けづらいため、小さい子どもが調理中に入ってきてしまう危険があります。市販のものが無理でも、アイランドキッチン用に造作するという方法がありますので、小さい子どもがいる家庭ではキッチンの検討と一緒に設計担当者に相談することをおすすめします」
ちらかっていると目立ちやすい
「アイランドキッチンを採用する際に気を付けたいことは、キッチンまわりがリビング・ダイニングからよく見えるため、ちらかっているのが目立ちやすいということです。対策としては、食器棚やパントリーなどの収納を充実させて、片付けやすくすること。手元を見せたくない人には、手元に立ち上がりのあるアイランドキッチンにする選択肢もあります」
設置費用が高い傾向にある
アイランドキッチンは、その構造のため一般的な壁付けキッチンと比べて設置費用が高くなる傾向があります。
四方が露出しているため、全面に化粧材が必要となり、材料費が増加します。また、アイランドキッチンはオープンな空間が魅力ですがその半面、収納スペースが限られるため、背面に収納棚やカウンター、パントリーなどのコストがかかるケースが多く、これらも費用増加の要因となります。
アイランドキッチンで後悔・失敗しないためのポイント【編集部解説】
アイランドキッチンで後悔・失敗しないためには、適切な設計が欠かせません。バランスを考慮し、キッチンのサイズと配置を慎重に決定しましょう。
十分な収納スペースの確保も重要です。また、水や油ハネへの対策を事前に検討し、快適な環境を整えることが大切です。ここからは編集部が解説します。
間取りなど全体のバランスを踏まえてキッチンのサイズや配置を決める
アイランドキッチンの魅力を最大限に引き出すには、リビングやダイニングなど他の空間とのバランスを考慮しつつ、適切なサイズと配置を決めることが重要です。
四方からアクセス可能な特性を活かすため、十分な通路スペースの確保が必須になり、他の空間とのバランスを慎重に検討する必要があります。
限られた住宅スペースを有効活用するには、キッチンの機能性と他の生活空間の快適性のバランスを取ることが大切です。
家族の生活スタイルや優先順位を考慮しながら、最適なレイアウトを検討しましょう。
収納スペースを確保する
収納スペースを最大限確保することも、後悔しないためのポイントです。
アイランドキッチン本体だけでは収納が足りなくなりそうな場合は、背面部分に追加の収納を設けるとよいでしょう。既製の家具や壁面固定型の収納ユニットを導入することで、大幅に収納力を向上させることができます。
キッチン全体の統一感を保つために、背面収納はキッチン本体と同じ素材や類似したデザインを選ぶとよいでしょう。
水や油ハネ対策を考える
アイランドキッチンの開放感を活かしつつ、水や油ハネによる汚れを最小限に抑えるには、適切な対策が不可欠です。
水ハネは、主にキッチンの手前部分に集中します。水ハネによる汚れの発生を抑えるためには、食洗機の活用、清掃が容易な床材選択の組み合わせが効果的です。
これらを取り入れることで、キッチンの衛生状態を維持しつつ、清掃の手間を最小限に抑えることができます。
油ハネ対策として、専用のガードパネルの高さは使用する調理器具に応じて選択しましょう。IHクッキングヒーターの場合は比較的低めのパネルで十分ですが、ガスコンロを使用する場合は、換気扇の高さまでカバーできる全面タイプが推奨されます。
併せて高性能な換気システムを導入することで、油煙の拡散を抑制し、キッチン周辺の清潔さを維持できます。
アイランドキッチンを選んで理想の住まいを実現した先輩たちの実例を紹介!
スーモカウンターで、アイランドキッチンを選んで理想の住まいを実現した先輩たちの実例を5つ紹介します。どんな点にこだわり、どんな住まいを実現したのか、実例を参考に学んでいきましょう。
【case1】作業しやすいアイランドキッチンは、デザインもモダンでスタイリッシュ
家を建てるなら注文住宅を、と考えていたIさん家族。スーモカウンターを訪れ、はじめに予算重視で希望を伝えたものの、紹介された5社は自分たちが求めるテイストではないと感じました。そこで、あらためてデザインの好みも伝えて、紹介された会社に依頼することに。
Iさんが求めたのは、普通に生活するよりちょっとだけセンス良く、快適に暮らしていける家。完成した新居のキッチンにもこだわりが詰まっています。動線にも配慮して選んだアイランドキッチンは、黒い天板やダイニング側の収納扉がモダンな雰囲気。背面収納の一番右側は下部をオープンにして、カウンターテーブルとしても使える造りになっています。
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予算と暮らしやすさ、こだわりデザインまで、新たな出会いで実現!
【case2】自慢のキッチンを移設して、アイランドキッチンへ
二世帯住宅で暮らしていたIさんは、「自分たちの思い通りの新居で生活したい!」という思いが膨らみ、実家近くの土地を購入しました。建物については、テレビCMで以前から知っていたスーモカウンターで相談することに。希望を伝えて紹介された2社の内、提案されたプランに魅力を感じた1社と家づくりをスタートしました。
妻の希望は、1年前に購入したばかりの、お気に入りのキッチンやレンジフードを移設して使うこと。しかもペニンシュラ型をアイランド型に変更するというものでした。新居では、この希望がしっかり叶った上に、キッチンとおそろいのカラーで収納家具を造作して、水まわりはいつもスッキリ、大満足です。
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キッチンと吹抜けが主役の間取り。臨機応変に対応してくれる会社に出会えた
【case3】広いLDKに設置された、油ハネ対策も万全のアイランドキッチン
子どもの小学校入学を機に家づくりに踏み切ったSさん。理想に合う建築会社との出会いを求めてスーモカウンターに相談することにしました。予算などの条件とともに、1階に大空間のLDKがつくれることを希望として伝え、紹介された依頼先候補は4社。その中から柱のない広いLDKをつくれる会社に依頼しました。
何回も打ち合わせを重ね、思いどおりのプランに仕上げていったSさん。こだわりの広いLDKには、アイランドキッチンを置きました。天井から降りた換気扇のレンジフードからコンロまでは、透明のオイルガードを設置して、油ハネ対策も万全です。回遊できる生活動線も快適で、大満足の新居が完成しました。
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広くて天井が高く開放的なLDKと 便利な水まわり動線をかなえた家
【case4】デザイン・設備に妥協せずつくり上げた、アイランドキッチンのある広いLDK
住宅会社のモデルハウス見学会に参加したことでマイホーム購入を検討し始めたSさん夫妻。注文住宅を建てた友人から勧められ、スーモカウンターに相談。「自由設計の家でいろいろな会社を見たい」などの希望を伝え、紹介された3社の内、1社目の会社との面談で担当者との相性の良さを感じ、ほぼ気持ちが固まったそうです。デザイン・設備に妥協することなく、どこからでも家族の様子を見守れるアイランドキッチンのあるLDKが完成しました。
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将来をイメージしてつくり上げた、仕切りのない28畳のLDKが魅力の家
【case5】家事動線も良く便利なアイランドキッチン
夫妻の実家に近い九州に居を構えることにした当時大阪在住だったYさんファミリー。ネット検索する中で知ったスーモカウンターに相談し、希望エリアの住宅事情に詳しい希望エリアのスーモカウンターから土地探しと家づくりのサポートを受けることになりました。紹介された4社のうち、希望を満たす立地にある分譲地を紹介してくれた会社に家づくりをお願いすることに。「スタンダードな家」というテーマを掲げ、家事動線も良く便利で開放感のあるキッチンに仕上がりました。
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大阪にいながら九州に家を建てる。相談開始~入居を11カ月で実現
アイランドキッチンを採用するときのポイント
最後にあらためて井上さんに、アイランドキッチンを採用するときのポイントを聞きました。
「換気扇も含めてお掃除しやすいタイプを選ぶこと。収納を充実させて、ちらからないようにすることも重要です。アイランドキッチンは、暮らしの中心にあるキッチンと言えます。日頃からキッチンの整理整頓された状態を維持できる人におすすめです。日々の掃除が苦にならないか、改めて考えてみましょう。インテリアとしても楽しめるので、素材やデザインにこだわって選ぶのもいいでしょう」
スーモカウンターに相談してみよう
「どうやって進めたらいいのかわからない」「建築会社はどうやって選べばいいの?」住まいづくりにあたって、このような思いを抱いているなら、ぜひスーモカウンターに相談を。スーモカウンターでは、お客さまのご要望をお聞きして、そのご要望をかなえてくれそうな依頼先を提案、紹介します。
無料の個別相談のほか、「はじめての注文住宅講座」や「ハウスメーカー・工務店 選び方講座」など、家づくりのダンドリや、会社選びのポイントなどが学べる無料の家づくり講座も利用できます。ぜひお問い合せください。
イラスト/ノダマキコ
取材・執筆/福富大介(りんかく)、SUUMO編集部(レイアウトの自由度が比較的高い、設置費用が高い傾向にある、【編集部解説】アイランドキッチンで後悔・失敗しないためのポイント)
住まいのアトリエ 井上一級建築士事務所 所長。一級建築士、インテリアプランナー。 大学非常勤講師として「住宅リフォーム計画」「キッチンデザイン論」を担当