ジャパンディ(Japandi)という言葉を聞いたことがありますか?
これは、最近海外で話題になっている和と北欧が融合したインテリアスタイルのことです。日本ではまだ馴染みがないかもしれませんが、今後さらなる流行が期待されています。
そこで今回は、カラーリストでインテリアコーディネーター経験のある、とおみねきよみさんに話を聞きました。注文住宅にジャパンディスタイルを取り入れるときのポイントについて見ていきましょう。
- ジャパンディとは?
- ジャパンディを取り入れやすい部分
- ジャパンディスタイルを住宅に取り入れるときのポイント
- ジャパンディスタイルにおすすめのアイテム
- おしゃれなジャパンディのインテリア例5つを紹介
- ジャパンディな空間づくりのコツ
- スーモカウンターに相談してみよう
ジャパンディとは?
ジャパンディの特徴
2020年頃から海外で流行し始めた「ジャパンディ」とは、和風と北欧風が融合したインテリアスタイルのことをいいます。海外では「Japandi」と表記され、「Japanese」と「Scandinavian」が交ざった造語です。
「日本と北欧の住宅文化は相性が良いのです。両者とも自然素材を使用したシンプルなデザインの家具や建築素材などが、古くから文化の中に根付いているため、組み合わせやすいともいえます。
日本には侘び寂びの美意識があり、素朴で質素、繊細なものが好まれます。そして和風建築の庭園などを見れば分かるとおり、自然物もインテリアの一部であると考えられてきました。
一方で北欧の人々は、日照時間が短いことから家の中で過ごす時間をとても大切にしています。外で過ごす時間が少ない分、家の中に自然物を取り入れたり、インテリアにも上質な素材を使用してより快適な暮らしを求めてきました」
日本と北欧の住宅文化が調和したシンプルでスタイリッシュなデザイン、そして自然素材を使っているということがジャパンディの大きな特徴です。
日本家屋のインテリアの特徴
日本家屋のインテリアの特徴は、シンプルさと、自然との調和を大切にする点にあります。日本家屋はいわゆる「侘び寂び」の概念が重視されており、余計な装飾を使わず、必要最小限の家具だけでデザインされています。伝統的な素材である木、麻、和紙などを用いることで、温かみのある空間が作られており、さらに「素朴さ」が際立つ点も特徴の1つです。
また、畳や襖、障子といった伝統的な建具は、部屋の使い方を柔軟に変えられる便利さと、美しさを兼ね備えています。このように、シンプルでありながら深い味わいがある点が、日本家屋のインテリアの特徴です。
北欧のインテリアの特徴
北欧とは、デンマーク・スウェーデン・ノルウェー・フィンランド・アイスランドの5カ国を指します。これら北欧の国々はいずれも緯度が高いため、冬の期間が長く、年間の平均日照時間が短いことから、家で過ごす時間が長くなります。そのため、北欧のインテリアは、室内で長時間快適に過ごせるように設計されている点が特徴なのです。
具体的には、明るい室内を作り出すため明るい色調を基調とし、自然光を最大限に取り入れるために大きな窓が設けられています。また、チークやローズウッド、オークといった木材が多く使われ、温かみのある居心地の良い空間を作り出す点も北欧インテリアの特徴の1つです。
ジャパンディを取り入れやすい部分
ジャパンディを取り入れやすい部分として、次の3つが挙げられます。
- リビング
- キッチン
- 玄関
それぞれの点について、以下で見ていきましょう。
リビング
ジャパンディスタイルをリビングに取り入れるなら、シンプルさと温かみのあるデザインを意識すると良いでしょう。北欧の機能的でスッキリしたデザインに、日本の伝統的な要素を少し足すのがポイントです。
例えば、木製の家具や和紙を使ったランプを置くだけで、ぐっと落ち着いた空間になります。色は、白やベージュ、グレーといった柔らかい色合いをベースにしつつ、木の温もりや観葉植物など自然の要素をプラスすると、居心地の良い雰囲気が完成します。あまり物を置かず、すっきりさせておくことも、ジャパンディらしいスタイルに仕上げるコツです。
キッチン
ジャパンディスタイルのキッチンは、シンプルさと機能性を両立させた空間が理想です。木のカウンターや棚を使うことで、自然な温かみを感じさせます。また、収納は見せないスタイルを意識し、すっきりした見た目をキープするのもポイントです。白やベージュをベースにしつつ、木のまな板や陶器の食器など、シンプルなアイテムを揃えることで、温もりを感じるキッチンになります。
さらに、シンプルなデザインの蛇口やシンクを選べば、見た目にもすっきりとした印象に仕上がります。余計な物を置かず、使いやすさと美しさを両立させたデザインにより、ジャパンディらしい空間を作り出せるでしょう。
玄関
ジャパンディスタイルの玄関は、シンプルで落ち着いた空間作りがポイントです。木製の下駄箱や収納を使って、ナチュラルな温かみをプラスしつつ、必要なものだけをすっきり収納するのがコツです。靴やコートなどもきちんと片付けておくことで、玄関全体が広々と見える効果があります。
さらに、観葉植物や和のアートなど、小さなアクセントを加えると、シンプルさの中にちょっとした個性が光ります。色合いは、白やベージュをベースに、自然の要素を取り入れて、柔らかで居心地の良い玄関を目指しましょう。
ジャパンディスタイルを住宅に取り入れるときのポイント
ジャパンディスタイルを住宅に取り入れるときのポイントとして、次の6つが挙げられます。
- ニュートラルカラーや自然界にある色を使う
- 自然素材を取り入れる
- シンプルでスタイリッシュな空間にする
- 畳の上に北欧風の家具を取り入れる
- インテリアのバランスは和:北欧=3:7が理想
- 繊細な見た目の植物を選ぶ
それぞれのポイントについて、見ていきましょう。
ニュートラルカラーや自然界にある色を使う
「アイボリー、ベージュ、グレーなどのニュートラルカラー(無彩色、または無彩色に近いくすみのある色)を部屋の中の広い面積に使います。アクセントカラーを入れるときは緑やブラウンなど自然界にある落ち着いた色にしましょう」
赤やピンク、オレンジ、ゴールドなど華やかな色はジャパンディのイメージを壊してしまうため避けたほうが無難です。
「北欧文化では明るめのインテリアが主流なので、フローリングの色を選ぶ際は、比較的明度が高く、彩度の低い暖色系の色がおすすめです。例えば、無垢材、複合フローリングではオーク、タモ、バーチ、メープル、ヒノキなどです。また、畳も同様に濃い色よりは淡い色のほうがジャパンディらしい雰囲気になります」
自然素材を取り入れる
「色と同じくらい、使用する素材も重要なポイントになります。ジャパンディの空間では人工的に作られた素材よりも無垢材や珪藻土、畳など自然素材を中心に使います」
壁や床以外にも、家具に自然素材を使ったり観葉植物で緑を取り入れる方法もあります。麻や籐(ラタン)、和紙、竹、石などでもジャパンディな雰囲気を演出できます。
シンプルでスタイリッシュな空間にする
「シンプルかつスタイリッシュな雰囲気もジャパンディの特色です。部屋の中にたくさんのものを置くのはNG。見せるタイプの収納ではなく扉のついた収納を用意し、使っていないものは隠すようにしましょう。必要最低限のものだけを置くようにするライフスタイルは、SDGsの考え方とも相性が良いです」
畳の上に北欧風の家具を取り入れる
「畳敷きの和室をジャパンディスタイルにレイアウトする場合は、畳の上にラグマットを敷いたりソファやダイニングセットを置くなど、家具や小物で北欧の要素をプラスすることができます。家具はできるだけ背の低いものを揃えると和の雰囲気とうまく調和します」
インテリアのバランスは和:北欧=3:7が理想
「ジャパンディスタイルのインテリアは、和風の要素が3割、北欧風の要素が7割の3:7の比率が理想的です。例えば小物などを和風に、家具など大きなものを北欧風にするとちょうど良いバランスになります。和の要素が多くなるとジャパンディではなく和モダンテイストに変わってしまうので注意しましょう」
繊細な見た目の植物を選ぶ
「観葉植物と一口に言ってもさまざまな種類があります。ジャパンディの空間に適しているのは、幹や枝が細く繊細な見た目の植物です。
幹や枝が太かったり大きな葉が茂っている観葉植物はジャパンディのテイストとミスマッチなのでおすすめしません。
また、花を置く場合は種類と色にも気を付けましょう。真紅の薔薇のように華やかな雰囲気のものは避けたほうがよく、色味を抑えたものや柔らかいイメージの花のほうがジャパンディらしさが出ます」
ジャパンディスタイルにおすすめのアイテム
ここでは、ジャパンディスタイルにおすすめのアイテムを6つ紹介します。
それぞれのアイテムの特徴を知って、住まいを建てる際に取り入れてみたいアイテムを見つけてみてください。
CH24(Yチェア)
CH24(Yチェア)とは、デンマークのデザイナーであるハンス J. ウェグナーによってデザインされた北欧の名作椅子です。どの角度から見ても美しく、自然素材の温かみを感じることができるところも人気の理由。日本の住宅とも相性が良く、ジャパンディスタイルの空間にもぴったりです。
和紙の照明器具
柔らかな光が特徴的な和紙の照明器具は、ジャパンディのスタイリッシュな空間に温かみをプラスしてくれます。天井に取り付ける提灯型のペンダントライトや床置きの間接照明なども空間をおしゃれに演出するアイテムとして人気です。
一枚板のテーブル
見た目が美しい一枚板のテーブルは、ジャパンディな空間をより上質な雰囲気にしてくれます。天然木材の温かい素材感や天板の繊細な木目などが魅力で、長く使っても飽きの来ない、一生もののインテリアといえます。
ニュートラルカラーのラグマット
おしゃれなラグマットを敷いて空間のアクセントにしましょう。畳の上に北欧風のラグマットを敷くと、ジャパンディな雰囲気になります。色はグレーや紺、ベージュ、茶などニュートラルカラーを選びましょう。
ドライフラワー
ドライフラワーもジャパンディな空間によく馴染みます。無彩色、もしくは淡い色味のドライフラワーを選びましょう。和風の花瓶に生けるのもおすすめです。
アートポスター
アートポスターを壁に飾っておしゃれな空間に。できるだけ落ち着いたデザインで、色味を抑えたポスターを選びましょう。
おしゃれなジャパンディのインテリア例5つを紹介
ジャパンディを取り入れた実際のインテリアを見ることで、自身がジャパンディを取り入れる際の参考にできるため、ぜひ5つ全ての例に目を通してみてください。
ソファを置いたおしゃれな和室
こちらは和室をベースにしたジャパンディ空間。シンプルな円卓とアイボリーのソファを置いて、和風と北欧風の両方の特徴を取り入れています。テーブル上の生け花がアクセントとなって目を引きます。
畳敷きの空間に北欧テイストのインテリアを
畳の上にガラステーブルやクッションなど北欧テイストのインテリアを置いたコーディネート例です。天井の無垢材が北欧らしさを出しています。部屋の隅には大きめの観葉植物を置いて緑を取り入れ、すっきりとした明るい印象の空間になりました。
盆栽をアクセントにしたスタイリッシュなリビング
盆栽や花瓶、格子などで和のテイストを取り入れたジャパンディなリビング。ローソファやローテーブルなど背の低い家具でまとめて空間を広く見せているところもポイントです。無彩色のインテリアに、植物のグリーンがよく映えます。
一枚板のテーブルがあるダイニングスペース
キッチンの隣のダイニングスペースに一枚板のテーブルを大胆に設置したジャパンディ空間のコーディネート例。格子状の仕切りで和のテイストを取り入れています。必要最低限のインテリアだけを設置したシンプルかつスタイリッシュなダイニングです。
リビングと間続きの畳コーナーがある家
リビングの一角に、畳コーナーを設置したレイアウトの例になります。木の格子の間仕切りによって、北欧風の室内に和のテイストが加わっています。一枚板のダイニングテーブルと脚の細いダイニングチェアは北欧家具の中でも人気のアイテムです。
ジャパンディな空間づくりのコツ
最後に改めて、とおみねさんにジャパンディな空間づくりのコツについて聞きました。
「ジャパンディな空間を作るときのコツは、部屋に余白を持たせることと、美しい家具を置くことです。
できるだけものは増やさずにシンプルな空間を心掛け、その中に美しいデザインの家具を置くことでジャパンディな空間のベースが完成します」
日本と北欧、双方の文化の魅力的な部分を取り入れながら、ライフスタイルに合ったジャパンディな空間を作り上げていきましょう。
スーモカウンターに相談してみよう
ジャパンディな空間を取り入れたマイホームを建てたいと考えている人は、ぜひスーモカウンターで相談してみませんか。家づくりの基本からお金のことまで専門知識を持ったスタッフがアドバイスします。注文住宅に関する知識を深めるための無料の講座も開催中です。トレンドを取り入れたおしゃれで理想の家にするため、一緒に考えていきましょう。
イラスト/別府麻衣
取材・執筆/佐藤愛美(りんかく)、SUUMO編集部(日本家屋のインテリアの特徴、北欧のインテリアの特徴、ジャパンディを取り入れやすい部分)
一般社団法人国際カラープロフェッショナル協会理事