写真提供/明野設計室一級建築士事務所
部屋を明るく照らすことが目的ではなく、床や壁に光を当てて部屋の雰囲気をつくる間接照明にはさまざまな魅力があります。効果的に取り入れることで、ホテルやカフェのようなおしゃれな雰囲気になるはずです。
そこで今回は、一級建築士として活躍している明野岳司さんと明野美佐子さん、インテリアコーディネーターや照明に関する高度な知識を持つ照明士として活躍する大西哉子さんにお話を聞き、間接照明の種類や選び方、取り入れ方などを解説していきます。設置するメリットなども紹介していくので、間接照明を住まいに取り入れようと考えている方は、ぜひ参考にしてみてください。
間接照明の特徴は?
まずはじめに「間接照明」の特徴について確認しましょう。
「間接照明とは空間を直接照らす照明ではなく、天井や床、壁などに光を当ててその反射で空間を明るくする手法のことをいいます。建築の世界では発散する光束の割合によって『間接照明』や『半間接照明』『半直接照明』『直接照明』といったように分類されています」(岳司さん)
「間接照明は演出性が高く、リラックスしたりおしゃれな空間にしたいという目的で取り入れる人が多いですね。間接照明には、建築段階で計画して設置するタイプと、家が出来上がってから自分で買い足せるタイプがあります」(美佐子さん)
リラックスしたおしゃれな空間をつくることができる理由には、間接照明の「色」も深く関係しています。
「一般的に間接照明で使われるのは夕日の色に近い電球色です。人間には本来、朝日が昇ると活動し、日が落ちたら休むという体内サイクルが備わっています。そのため夜間も日中と同じように明るい光の下で生活をしていると、なかなか体が休息モードに入りません。間接照明に使われるのは夕日やろうそくなど自然な夜の色なので、部屋の一角に取り入れるだけでも心身がリラックスするのです」(大西さん)
プロオススメの間接照明に適した器具の種類
それでは、間接照明に適した照明器具にはどのようなものがあるのでしょうか? プロの視点で選んだオススメの器具を紹介します。
スタンドライト
「スタンドライトには、床置きの背が高いものやテーブル、ベッドサイドに置くことができる小ぶりなものまで多様な種類があります。家が完成した後に購入し、コンセントに繋ぐだけで使うことができるフレキシブルな点もスタンドライトの長所。デザイン性が高いものが多く、電気をつけていないときでも器具自体がインテリアオブジェとなり部屋の雰囲気づくりに役立ちます」(大西さん)
スポットライト
「スポットライトは間接照明としてだけでなく直接照明としても使うことができる照明器具です。例えば、テーブルを直接照らせば直接照明、壁に光を当てて反射させると間接照明になります」(岳司さん)
「スポットライトを自由につけ外しできるようにするにはスライドレール(配線ダクト)が必要になるため、建築段階で計画しておく必要があります。絵画やオブジェを照らしたり、部屋の見せ所にしたい場所に光を当てて際立たせることができますし、光の角度を調整することもできます」(大西さん)
ダウンライト
「ダウンライトは建築段階で埋め込むタイプの照明で後付けが難しいため、プロと相談しながら配置を決めることをオススメします。ライトの方向や角度を調整できる『ユニバーサル』や、壁を照らすことを目的とした『ウォールウォッシャー』というタイプのダウンライトもあります」(大西さん)
ブラケットライト
「器具自体のデザイン性が高く、光の出方が工夫されているものが多いです。空間を格上げしたい、もっとおしゃれに見せたいと考えている人にオススメのライトで、壁面の装飾性が高まります」(大西さん)
フットライト
「寝室や廊下に設置し足元を照らすライトです。隣で眠っている人を起こさず明かりを点けることができるというメリットがあります」(美佐子さん)
「安全性や特に機能性が求められる照明器具です。コンセントに差し込むタイプと、建築段階で壁面に埋め込むタイプがあります」(大西さん)
【SUUMO編集部】間接照明を設置するメリットは?
間接照明を部屋に設置することでおしゃれな空間を演出できます。考えられるメリットを紹介していきましょう。
光の陰影が生まれ部屋がおしゃれになる
シーリングライトやペンダントライトといった天井照明は、明るさがあり部屋全体を照らしてくれるので便利な照明です。しかし、上から下への一方向のみの光なので、単調な印象になりがちです。 一方、間接照明は上や横方向への光を取り入れることができます。そのため、天井照明の光と合わさり部屋に光の陰影が生まれるのです。おしゃれな印象を引き出し、落ち着いた空間へと導いてくれます。
照明器具がインテリアオブジェとしても活用できる
部屋やインテリアの雰囲気を演出したいときに、間接照明は大いに活用できます。前述したように、間接照明にはスタンドライトやスポットライト、ブラケットライトなど、さまざまなタイプがあります。タイプによってガラス製やスチール製、ヴィンテージ感のあるデザインやポップなデザインなど、デザイン性に優れたアイテムも多いため、ライトが必要ない昼間はインテリアとして部屋全体をおしゃれな雰囲気に彩ってくれる特徴があります。
設置するだけでおしゃれなインテリアになるので、部屋の雰囲気を変えたいときにもオススメのアイテムです。しかし、デザインが一般的なものでは理想の空間は目指せません。部屋のイメージに合わせたデザインやカラーのものをチョイスして設置することが大切です。
調光機能でシーンに応じた光環境にできる
間接照明の中には、調光機能が付いているものもあります。明るさを自分で調整できるので、その日の気分やシーンに合わせて、照明の明るさを選ぶことが可能です。例えば、家族みんなでにぎやかな雰囲気の中で食事を楽しみたいときなどは、明るさを強くするとよいでしょう。特に子どもや高齢者が過ごすときは暗いと足元が見えにくくけがをする恐れがあるため、間接照明は最大で明るさを出した方が安全です。
また、落ち着いた雰囲気の中で食事を楽しみたいときや映画を観るときなどは、間接照明の明るさを抑えると、穏やかな空間を演出してくれます。睡眠時には間接照明のみをともし、さらに調光を抑えれば眠りやすい状態へと導いてくれます。過ごすシーンに応じた光環境にできる点は間接照明の大きな魅力となっています。
【SUUMO編集部】間接照明選びのポイントは?
間接照明を選ぶ際に押さえるべきポイントは以下の通りです。
- 間接照明のタイプで選ぶ
- 光源の種類で選ぶ
- 部屋の広さで選ぶ
- 間接照明を設置する目的で選ぶ
それぞれを詳しく解説していきましょう。
間接照明のタイプで選ぶ
間接照明にはさまざまなタイプがあります。例えばテーブルランプは机の上や棚に設置できるコンパクトなタイプの間接照明です。ベッドの横に設置すれば、手元の明かりとなるため寝る前の読書の時間やテレビ鑑賞時にもオススメです。コードレスタイプのものを選べば持ち運びもできるので利便性が高くなります。
床に設置するスタンドライトは、おしゃれなデザインのものを選べば部屋のアクセントになります。雰囲気を変えたいときにオススメです。また、高さによって照らし方が変わる点に特徴があります。部屋全体を照らしたい場合は高さのあるタイプ、ワンポイントのみを照らしたい場合には背の低いタイプを選ぶようにしてみてください。
調色をして部屋の雰囲気を変えたいのなら、テープライトがオススメです。ひものように長細い基盤にライトが設置されたタイプで、狭い場所にも設置しやすいです。自分の好きな長さに切れるアイテムもあるので、テーブル下や棚の上、棚の中やベッドの下など、あらゆる場所に設置できます。棚の中につければコレクションを照らすための照明にもなるので自分好みに設置できる照明です。
光源の種類で選ぶ
間接照明選びでは光源の種類にもこだわってみましょう。間接照明では主に以下の2種類が多く使用されています。
・白熱タイプ
電流を流すとフィラメントが高温になり発光するタイプの電球です。自然光に近い色の見え方で、価格が安いものも多いため、取り入れやすい点が魅力です。ただし、消費電力が比較的大きいので、電気代がかかる点に注意が必要です。点灯の際は高温になりやすいので、子どもの手の届かない位置に設置する必要があります。
・LEDタイプ
電圧を加えることで発光する半導体素子を使用したライトです。白熱タイプと比較すると、消費電力が低いので省エネ性が高いといえます。また、寿命も長いので交換の頻度を抑えやすい点も魅力です。電球の周囲が熱くなりにくいので、触れた際でもやけどの心配が少ないです。手の届く範囲に照明を設置したい場合には、LEDタイプのものを選択した方が安全です。
部屋の広さで選ぶ
間接照明を選ぶ際には、部屋の広さにも注目してみてください。広い部屋全体を照らしたいのであれば、数種類の間接照明を取り入れれば直接照明と組み合わせることで部屋全体を明るくできます。
また、光源の明るさは「lm(ルーメン)」という単位で表記され、単位の数字が高いほど明るさが生まれる仕組みです。部屋の大きさに合わせて選んでみましょう。
間接照明を設置する目的で選ぶ
使う目的で間接照明を選ぶ方法もあります。その際には、前述した「lm」が役立ちます。例えば、読書をするときに間接照明を使いたいのであれば、300lm~400lm程度の明るさで十分です。
間接照明によっては自分で調光できるタイプもあるので、光の加減を調整したいのであれば調光機能が搭載された照明を選びましょう。近年では、スマートフォンで操作できるものやスマートスピーカーと接続して音声で操作できるタイプもあります。操作のしやすさで選ぶ場合にオススメです。
「建築の段階から壁や天井に照明器具を埋め込んで間接照明として使用する場合は、明るいところと影になる部分のバランスを考えて取り入れることが大切です。一つの空間にたくさんの間接照明を入れすぎると空間が映えなくなってしまう場合もあります」(岳司さん)
「ライフスタイルに合わせて間接照明を配置することがポイントです。まずは、その空間で何をしたいのかを考えてみましょう。『趣味を楽しむくつろぎの空間』といっても、照明を落としたリビングで音楽を聴いてゆっくりしたいのか、明るい部屋で釣り具の手入れを楽しみたいのかによっても適切なライトは変わってきますよね。具体的な生活をイメージし、どのライトを配置するのが良いか考えていきましょう」(大西さん)
シーンにあった間接照明の取り入れ方とは?
具体的にはどのようなシーンで間接照明を取り入れたら良いのかがわからない、という人もいるのでしょう。プロの3人に聞いた、シーンの例と適切な間接照明選びについて紹介します。
ホテルのような寝室で落ち着いて眠りたい
「ベッドの横にサイドテーブルを置き、デザイン性の高いスタンドライトを置くことでホテルのような寝室の雰囲気を演出できます。ゆっくりと眠りに就きたい人には調光機能のついたライトがオススメです」(大西さん)
ソファーで寝転がりながら本を読みたい
「本を読むためにはある程度の明るさが必要です。アームの角度や高さが調節できるスタンドライトをソファーの横に設置すれば、本を読むときに光が当たる位置を調整できます」(大西さん)
玄関をおしゃれに演出してお客様を迎えたい
「オブジェのようにインパクトのあるスタンドライトやブラケットライトを設置すると、それだけで玄関の雰囲気が変わります。また、シューズボックスの下に間接照明を埋め込むといった手法もあります。人感センサーのついたライトにすれば、わざわざスイッチを押しにいく手間も省けるのでスマートにお客様を迎えることができると思います」(大西さん)
間接照明を使ったおしゃれな空間づくりのアイデア
間接照明を上手に使っておしゃれな空間演出をしている住宅を覗いてみましょう。照明器具の種類や設置の仕方など、理想の住まいづくりの参考にしてみてくださいね。
【case1】スポットライトでお気に入りの絵をライトアップ
楽器や本など、好きなものに囲まれて趣味を楽しめる家づくりを実現したBさん。リビングに設置したピクチャーレールで絵を飾り、夜はスポットライトの光でライトアップしています。家にいながらカフェのようなくつろぎ感を味わえる特別な空間です。ライトのオンオフによって空間の雰囲気を変えることができるのもポイント。
この実例をもっと詳しく→
音楽、猫、本、色……好きなものを13坪にぎゅっと詰めこんだ家
【case2】間接照明を埋め込んだモダンでおしゃれなトイレ
子どもの小学校入学を機にマイホームを持つことに決めたSさん。SNSで見た素敵な家を参考にして、デザイン性の高い家づくりを目指しました。特にこだわったのは水まわり。ライフスタイルに合った生活動線を取り入れ、実用性が高く快適に暮らせる空間になっています。トイレの壁面には間接照明を埋め込んで、モダンでホテルライクな雰囲気を演出しました。
この実例をもっと詳しく→
広くて天井が高く開放的なLDKと 便利な水まわり動線をかなえた家
【case3】寝室の壁に設置した間接照明がくつろいだ雰囲気を演出
共働きのMさんは、夫妻でくつろげる家づくりを希望しました。仕事が終わって帰宅した後はリラックスタイム。落ち着いた色合いのインテリアや照明にもこだわっています。1階の寝室の壁には建築段階で間接照明を設置。壁と天井を優しく照らす光が、心地よい眠りに誘います。
この実例をもっと詳しく→
防音室に実績ある会社とタッグ、趣味のドラムを楽しむマイホームを実現
【case4】モザイクタイルを照らす光がホテルのような寝室を実現
プライベート空間に遊び心を取り入れたSさんファミリーの住まい。空間のデザインにこだわり、ホテルに滞在しているような気分を味わうことができます。主寝室は夫妻が好きなドラマからヒントを得て、落ち着いたグレーの壁と間接照明を取り入れました。モザイクタイルが柔らかい光に照らされ、寝室全体がラグジュアリーな雰囲気に仕上がっています。
この実例をもっと詳しく→
家事動線◎!収納たっぷりでスッキリと片付き、居心地のいい空間
【case5】間接照明を取り入れて落ち着きのあるトイレ空間を演出
元々は賃貸アパートに住んでいたSさん夫妻。「理想を盛り込んだ家を建てたい」と思い、家づくりを考えるようになりました。お酒が好きなことからキッチンにはバーカウンターを設置。高めのカウンターにハイチェア、背面の壁にはオープン棚、そしてペンダントライトが設置され、おしゃれな雰囲気となっています。
また、1階にあるトイレには壁の一面にアクセントクロスを使用し、天井には間接照明を設置。天井からの優しい光で落ち着いた雰囲気となっています。機能面だけではなく、デザイン性にもこだわった家づくりに大満足しています。
この実例をもっと詳しく→
お酒が好きな夫婦が建てたバーカウンター風のキッチンがある家
【case6】寝室に間接照明を取り入れてゆっくり落ち着ける空間に
愛犬との暮らしをもっと快適にしたいと考えたEさん夫妻。家づくりに踏み切り、スーモカウンターに相談に行きました。勾配天井が印象的な2階リビングは、天井に木目調のクロスを採用してナチュラルで落ち着いた雰囲気に。フローリングには床が滑りにくいようにコーティングがされているので、愛犬も過ごしやすくなっています。
そして、寝室はゆっくりと休めるスペースになるよう間接照明を取り入れています。リビングと同様に床にコーティングもしてあるので、愛犬の安全性にも配慮された住宅です。
この実例をもっと詳しく→
愛犬との暮らしを楽しく快適に。明るく広い2階LDKが中心の家
間接照明を使いこなして理想の空間をつくろう
最後に明野さん夫妻と大西さんに間接照明を活用して理想の空間をつくるためのポイントについて聞きました。
「間接照明は部屋をすみずみまで照らすものではなく、うっすらと明かりがついているだけで十分な演出効果があります。廊下や玄関、寝室、リビング等に取り入れることで空間の雰囲気が良くなります。建築段階であらかじめ取り付けるタイプの照明とスタンドライトなど後付けの照明を組み合わせて使うことができるので、ライフスタイルに合わせて空間演出を楽しんでください」(美佐子さん)
「間接照明を空間に取り入れるときは、自分がその空間でどう過ごしたいのか、その空間を人にどう見せたいのかを考えてみてください。どうして間接照明を取り入れようと思ったのかを紐解くと、どんな間接照明を使ったら良いかが自ずと見えてくると思います。迷ったときはぜひ建築やインテリアのプロにご相談ください。具体的なイメージを共有してもらうことでより適切な提案ができるはずです」(大西さん)
スーモカウンターに相談しよう
おしゃれな家づくりを実現するためには建築の段階からしっかりと照明計画をしていくことが大切です。効果的に間接照明を取り入れたおしゃれな住まいづくりに向けて、ぜひスーモカウンターに相談してみませんか。
スーモカウンターではアドバイザーがお客様の家づくりを全面サポートします。適切な予算から家づくりの段取りなど、注文住宅の新築・建て替えに関するさまざまな疑問や不安に寄り添ってアドバイスを行っています。その他にも家づくりの疑問を解消する講座などをも無料で開催していますので「まずは何から始めたらいい?」と思っている人はぜひご利用ください。
おしゃれな間接照明を取り入れた家づくりを提案できる会社を一緒に探していきましょう。
取材・執筆/佐藤愛美(りんかく)、SUUMO編集部
2020年 川崎市優良設計者表彰
小田急線新百合ケ丘駅にある自宅のアトリエで、住宅を中心に手掛けている。
・明野岳司さん
一級建築士、専攻建築士(統括設計)、神奈川県応急危険度判定士、川崎市木造耐震診断士
・明野美佐子さん
一級建築士、専攻建築士(統括設計)、神奈川県応急危険度判定士、福祉住環境コーディネーター2級
インテリアコーディネーター、照明士。2020年、「JERCOリフォームコンテスト近畿支部大会」ベストリフォーム賞受賞。2021年、「Best of Houzz 2021」 サービス賞受賞。