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狭小住宅の間取り実例とアイデア!専門家が語る設計のポイントとは

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限られた敷地に建てる狭小住宅は、駅チカや利便性の高いエリアでも戸建てを実現しやすい一方で、「狭そう」「住みにくそう」といったマイナスイメージを持たれることもあります。しかし、一般的な住宅に比べてコンパクトでも、工夫次第で快適な住環境をつくることは十分可能です。

今回は、建築士・杉浦充さんに狭小住宅の間取り実例を紹介してもらいました。さらに、狭小住宅のメリット・デメリットや、空間を有効活用できるアイデアもお伝えします。住まいを検討中の方は、ぜひ参考にしてみてください。

狭小住宅とは「限られた空間を有意義に活用する家」

狭小住宅とは、一般的には狭い土地に建てられる住宅のことを指します。また、変形地や旗竿地などの住居面積を確保しづらい土地に建てられる住宅も結果的に狭小住宅になることがあり、実は明確な定義はありません。建築士の杉浦さんは、狭小住宅の定義についての感覚が、以前に比べてだんだん小さくなっている、と言います。

「今70〜80歳代の建築業界の方は『昔は40坪以下でも狭小住宅と呼んだよ』とおっしゃいます。一昔前は30坪以下と言われていました。今では20坪以下くらいからが狭小住宅の目安でしょう。私は18坪以下を狭小住宅と呼んでいます」(杉浦さん)

東京や大阪のような都市部では、広い土地が確保できないために狭小住宅にならざるを得ないという実情です。

約10坪の土地の写真

約10坪の狭小地。都市部では狭小地で一戸建てを建築するケースも少なくない(画像/PIXTA)

ところが、近年「ミニマムに住まう」あり方が見直されています。狭小住宅は必ずしも住みづらいわけではなく、限られた空間にさまざまな工夫をほどこし、快適に暮らせるように設計されている住宅がたくさんあります。むしろ制約を逆手にとって、住みやすく・便利で・おしゃれなデザインの家がつくられているのです。

「日本だけでなく狭小住宅は世界的にも注目されています。欧米では「タイニーハウス・ムーブメント(tiny house movement)」として自作のログハウスや車輪付きのトレーラーハウスを中心に小さな家に住まう動きがありますが、その火付け役は日本の狭小住宅だそうです。 今の日本の家は断熱性に優れ、収納も工夫されていて、コンパクトに住みやすいと評価されています」(杉浦さん)

小さなログハウスの写真

アメリカのタイニーハウス・ムーブメントの一役を担っているログハウス(画像/PIXTA)

建築士の水越さんは「最近はコンビニエンスストアやネットショッピングで簡単にものが買えます。ベビーベッドなどを必要なときにだけ借りられるサービスも増えました。昔のように家の中にたくさんのものをストックしておく必要はないかもしれません」と言います。狭小住宅のさまざまな工夫には、収納の確保のほかにも、最低限のものを使ったシンプルな暮らし方を推進する側面もあるのです。

狭小住宅のメリットは?【SUUMO編集部】

狭小住宅は、一般的な住宅と比べて土地も建物もコンパクトなため、デメリットが目立ちやすいかもしれません。しかし、実際には狭小住宅ならではの魅力や利点も多くあります。ここでは、そのメリットを紹介するので、ぜひ参考にしてください。

土地相場が高い立地でも建てられる

狭小住宅の大きなメリットは、土地相場が高いエリアでも家を建てやすいことです。一般的に、駅や繁華街に近いほど土地の価格は高くなり、広い土地を確保するのは難しくなります。

例えば、坪単価100万円のエリアで30坪の土地を購入する場合、土地代だけで3000万円かかります。そこに建築費用や付帯工事、諸費用などが加わるため、希望の立地でのマイホームを諦めるケースも少なくありません。

しかし、15坪の土地を選べば、土地代は1500万円に抑えられます。付帯工事や諸費用がかかるとしても、土地費用を削減できる分、全体のコストを抑えやすくなります。そのため、狭小住宅なら、土地相場が高いエリアでもマイホームを実現できる可能性が高まります。

建物面積が小さいため、建築費が比較的安く抑えられる

狭小住宅は土地が狭い分、建物面積もコンパクトになります。土地の条件によっては、重機が入りにくい、建築資材の搬入に手間がかかるなどの理由で、坪単価が一般的な住宅より高くなる傾向があります。

しかし、そもそも建物が小さいため、必要な建築資材の量も少なくなり、総額の建築費は比較的抑えられるケースが多いです。土地と建物を合わせた総コストで見れば、一般的な2階建て住宅よりも費用を安く済ませられる可能性があります。特に都心など利便性の高いエリアで、コストを抑えて住めるのは狭小住宅ならではの大きなメリットといえるでしょう。

メンテナンスやリフォーム費用等のコストを抑えられる

住宅は、建築時の費用(イニシャルコスト)だけでなく、維持費(ランニングコスト)や修繕費(メンテナンスコスト)も重要です。住宅の建築、維持、修繕などにかかるコストをライフサイクルコストとも呼びます。具体的には、日々の掃除やメンテナンス、修繕、設備機器の交換やリフォーム費用などが含まれます。

狭小住宅は一般的な住宅に比べて面積が小さいため、掃除にかかる手間を軽減できます。さらに、冷暖房の効率が良く、必要な設備の数も少ないことから、維持やメンテナンスにかかるコストも抑えやすいでしょう。

また、都市部や駅に近い立地を選べば、車を持たずに生活できる可能性が高まり、駐車場代や維持費などのコストも削減できます。こうした要素を総合すると、一般的な住宅よりもライフサイクルコストを抑えやすいのが狭小住宅の大きなメリットといえます。

気積(体積)が少ないため、暖房や冷房のコストが安く抑えられる

狭小住宅は、光熱費を抑えられる点も大きなメリットです。建物自体がコンパクトなため、冷暖房の設置台数を減らせるほか、限られた空間でも効率よく暖めたり冷やしたりできるため、エネルギー消費を抑えやすくなります。

電気代やガス代の高騰が続くなか、光熱費を削減できるのは大きな魅力です。さらに、冷暖房設備の購入費用やメンテナンス費用も抑えられるため、生活コストの軽減につながります。

固定資産税や都市計画税などの税金の軽減対象になる

固定資産税や都市計画税が抑えられるのも、狭小住宅ならではのメリットです。固定資産税と都市計画税はどちらも地方税の一種で、固定資産税はすべての土地や建物に課税され、都市計画税は市街化区域内の土地や家屋が対象となります。

これらの税額は土地や建物の面積によって決まるため、狭小住宅のようにコンパクトな住宅であれば、その分税負担を軽減できる可能性があります。

さらに、固定資産税には特例措置があり、住宅用地の面積が200㎡以下であれば軽減の対象となります。狭小住宅であればこの条件を満たしやすく、税負担を抑えられる点も大きな魅力です。

狭小住宅のデメリットは?【SUUMO編集部】

狭小住宅には多くのメリットがある一方で、デメリットも存在します。住まいを検討する際は、メリットだけでなくデメリットもしっかり把握し、それらを許容できるかどうかを考えることが大切です。

ここでは、狭小住宅ならではのデメリットについて詳しく紹介します。

設計上の制約条件が多くなる

狭小住宅は土地が限られているため、隣接する建物の影響を受けやすく、採光や通風の確保が難しくなることがあります。また、防火対策や騒音対策など、一般的な住宅よりも考慮すべき点が多くなります。

さらに、建築基準法に基づく斜線制限や高さ制限といった規制もあるため、間取りの自由度が制限されやすいのが現実です。限られた延床面積のなかで、住みやすい空間を確保しながら、こうした制約をクリアするのは簡単ではありません。

そのため、設計の工夫が求められるだけでなく、場合によっては当初の希望とは異なる間取りに変更せざるを得ないケースもあります。狭小住宅を建てる際は、設計の自由度が低くなる可能性を考慮し、専門家としっかり相談しながら進めることが重要です。

階段の上り下りが増えるケースがある

狭小住宅は土地の面積が限られているため、縦に空間を活用する必要があります。その結果、間取りによっては階段の上り下りが増えることを理解しておかなければなりません。

例えば、3階建てにした場合、2階建てよりも移動の負担が増えます。さらに、リビングや寝室を2階以上に配置すると、日常的な階段の上り下りがさらに多くなるでしょう。

年齢を重ねるにつれて階段の移動は負担になりやすくなります。また、階段を設置することで居住スペースが削られ、間取りの自由度も低くなる点にも注意が必要です。狭小住宅を検討する際は、将来的な生活スタイルも考慮しながら間取りを決めることが大切です。

隣家とのプライバシー確保に工夫が必要になる

狭小住宅は、限られた土地を最大限活用するために、隣家との境界線ギリギリまで建てられることが多いです。特に、都市部や駅チカなど土地の価格が高いエリアでは、建物が密集しやすく、隣家との距離が非常に近くなる傾向があります。

建物自体はアパートのように隣とつながっていないものの、壁同士の距離が近いため、生活音が気になる場合があります。そのため、防音性や遮音性の高い建材を使用したり、排水管やエアコンの室外機の設置位置を工夫したりするなど、音に関する対策が必要です。

また、隣家がすでに立っている場所に新築する場合は、窓の配置をずらすなど、視線が直接合わないように設計することでプライバシーを確保できます。狭小住宅を建てる際は、こうした配慮を取り入れることで、快適な住環境を実現しやすくなります。

家族が増えた場合に手狭になることもある

狭小住宅は、家族構成やライフスタイルの変化に柔軟に対応しにくいという課題があります。特に、家族が増えた場合、一つひとつの空間が限られているため、室内が窮屈に感じる可能性があります。

物理的に広さを増やすことは難しいため、内装の工夫や家具の配置を見直し、視覚的に広く感じられるようにする必要があります。また、部屋数が限られているため、家族が増えるとそれぞれのプライベート空間を確保しにくくなる点もデメリットの一つです。

さらに、狭小住宅では居住スペースを優先するため、収納が不足しがちです。収納スペースが足りなくなると、生活空間が圧迫され、ストレスを感じることもあります。快適に暮らすためには、不要なものを減らしたり、収納グッズを活用したりするなど、限られたスペースを有効に使う工夫が必要です。

狭小住宅を活かす設計のポイントは?

狭小住宅の場合、スペースをできるだけ居室として割当てたいため、廊下などのスペースを極力減らす間取りにするのが合理的です。ここでは、設計をする際に快適に住まうための工夫や意識したいポイントについて紹介します。

●収納量の多い造作家具を設ける

「家族が暮らす家では部屋が複数必要になりますから、廊下が全くない家にするのは難しいもの。そのときに廊下をただの空間にせず、有意義に活かす発想が必要だと思います。私の設計した家では、廊下の壁には造作家具として棚や本棚などの収納を設置するようにしています。収納は奥行き20〜30㎝程度の浅いもので構いません。棚を多く設けることで、収納の空間稼働率を上げる工夫が必要です」(水越さん)

 

廊下の棚から本を取り出す女性のイラスト

廊下に棚を造作すれば空間をうまく利用できる

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●採光や風通しを意識する

狭小住宅の多くは都市部に立地しています。自然と周囲にも狭い土地に建てられた住宅が立ち並んでいることが多くあるでしょう。民法では家屋と家屋の間に50cmの間隔を持たせることが定められていますが、この間隔が狭ければ狭いほど隣家との距離が気になります。

「家の隣地面に開閉式の窓をつけたい場合、お隣の家とお見合いにならないように注意が必要です。お隣からの視線を意識したうえで、光が必要なら高いところから採光し、空気の流れや風の出入りが必要であれば、足元の近いところに窓を設置する、というように、高窓や地窓を活用するようにします」(水越さん)

窓は通常、目の高さを基点に換気に便利な「腰高窓」や屋外に出入りするための「掃き出し窓」などが採用されるケースが多いものですが、水越さんは狭小住宅の場合は別の視点が必要だと言います。

「住宅密集地では家全体に光が当たらない場合が多いので、窓の位置には工夫を凝らし、高窓(ハイサイドライト)や天窓(トップライト)を有効に配置するように意識しています。例えば、天窓の下に吹抜けをつくると家のなか全体が明るくなります。採光はもっぱら天井からで外壁の窓は期待しない、と割り切るのも一つです」(水越さん)

●2階にリビングを配置する

狭小住宅の場合、限られた土地を活かすために、往々にして3階建てになります。リビングやダイニング、水まわりを何階に配置するとよいのか、気になるところです。

「私は家族のコミュニケーションの点から2階をリビングにすることをオススメしています。狭小住宅は大空間ではないので、家族が別々の階で過ごすことも多いと思います。リビングダイニングは家族が毎日集まる場所ですから、それが各部屋から最もアクセスしやすい場所にあるのは大事なことです」

また、構造上、どうしても家のある程度の面積を階段に取られることになります。日々の生活でいつも上下に移動を繰り返すことを念頭に置く必要がありますが、リビングを2階に置くことで少しでも移動を減らすことができます。家族が主に過ごすスペースを中央階である2階にし、そこから上下に移動するほうが効率的なのだそうです。

●コミュニケーションのために間仕切りをなくす

「私の場合、部屋のつながりにあえて段差を設け収納に使う棚などの家具を置き、そこで腰掛けて話せるようにします。音などプライバシーの問題がなければ、壁や間仕切りをなくし、かつ、各々のスペースで目線の高さを変えることで間仕切りがなくても各室が適度に分節されつつも空間のつながりがあるために狭さを感じさせません」(杉浦さん)

とはいえ、子どもが思春期を迎える年ごろだとここまで思い切るのは難しいかもしれません。なので、将来は個室へのリフォームを前提に、それまでは家具で仕切っておく方法や、逆に将来撤去しやすいように間仕切りを施工しておく方法をとることも多いです、と杉浦さんは言います。

●間取りの検討は「動線」を意識して

お風呂や洗面所などの水まわりをどこに置くかは十分な検討が必要です。効率の良い家事動線にするためにはリビングダイニングとキッチンの隣にスペースを確保できればいいのですが、狭小住宅の場合は難しいことも多いでしょう。

「その場合は、主寝室に近いところにお風呂を設けることをオススメします。1階に主寝室があるならお風呂も同じフロアにしたほうが使い勝手がいいですし、洗面所も1階になるので、帰ってきてすぐに手を洗う習慣づけにもなります」(水越さん)

棚を使って空間をうまく区切った寝室とランドリースペースの写真

寝室のすぐ側にお風呂やランドリースペースを設けると使い勝手がUPする(画像提供/水越さん)

また、洗濯物を干す場所の確保も狭小住宅では課題になることが多いでしょう。

「3階にバルコニーを設けたり、屋上を物干し場にしたりすることも可能ですが、その場合、洗濯機も3階にした方がいいかどうかはよく検討すべきです」(水越さん)

●「割り切り」の発想で家具や家電の力を有効活用

上で述べたように、間取りをうまく配置することが難しい場合もあります。例えば、洗濯機置き場を1階に設けるほかにない場合、洗濯物を3階まで持って上がるのも結構な重労働です。

「このような場合には、割り切って乾燥機を利用することをオススメします。ユニットバスの乾燥機や洗濯機の乾燥機、ガス乾燥機などさまざまなタイプがあります。狭小住宅では、家の機能を割り切って家電で賄う、という発想も大事です」(水越さん)

また、家具や便利なインテリアグッズの活用も欠かせません。

「例えば、子ども部屋を4畳程度の個室にした場合、ロフトベッドやシステムベッドといった省スペースの複合家具を使うのがオススメです。例えば、二段ベッド式になっており、上部はベッドして使え、下に勉強机と洋服掛けやタンスが一緒に格納・接続されているようなタイプの家具もありますよね。最近はこういった便利な家具がいろいろありますので、家を建てる際に、並行してどのような家具を選ぶかを考えておくといいでしょう」(水越さん)

ロフトベッドの下に収納スペースがある子ども部屋のイラスト

ベッド下の空間を収納などに活用して狭い部屋を広く使えるロフトベッド

●視覚効果を意識する

さらに狭小住宅では「視覚」を意識することが重要だと言います。

「物理的空間は広がりませんが、視線や視覚を意識することで、狭さを感じさせない工夫ができます。

例えば、設置する家具を低くすること。部屋の間仕切りも上まで閉じるのでなく、家具で間取りを仕切って視覚的な広がりを持たせる、などです」(水越さん)

リビング・ダイニングの空間にダイニングセットとソファーの両方を置けない場合、低めのダイニングテーブルだけを置いてダイニングの椅子をソファー感覚で座れるような座面が広く低いものにすることで、ソファーがなくてもくつろぐことができます。

また、視覚的には黒っぽいより白っぽいほうが空間を広く感じることができます。白い色は反射率が高く、明るく感じて圧迫感がなくなるのです。

●全体の空間を意識する

よく、限られた「平面」のなかで無駄なスペースをどれだけなくすか、と考えがちですが、狭小住宅ではむしろ「空間構成」が大事です。杉浦さんは、狭小住宅では一般的な常識をいったん捨てて、立体的な「空間」をトータルに意識することが重要だと言います。

「一つのフロアー内で高低差を設けることで、視線が変わり、部屋が広く感じられます。逆に、平面のすべてを間取り切り取ったスペースだと、すぐに境界が把握できてしまうため狭く感じるんです。

あるいは、リビングを座卓にして視線を低くしたり、視線の先に段差をつけたり、動線の先に窓を設けることで視線の広がりや、開放感が生まれます。ダイニングエリアは高めの天井高としてリビングエリアの天井高をあえて低く抑えることで、空間にメリハリを持たせつつも、上階の寝室など個室階の天井を確保する場合もあります。

ほかにも、6畳のひと部屋と廊下、という空間を、部屋を5畳にしてその分、廊下のスペースを増やし物干スペースと兼ねたり、そこに勉強コーナーを設けるなど、自由な発想での設計が求められます。個室よりも生活動線にゆとりがある方が実際に住んでいると広く感じるものなのです」(杉浦さん)

水越さんも杉浦さんも、これら狭小住宅を活かす設計のポイントをよくわかった建築士や施工会社にまかせることをオススメしています。「15坪、20坪といった狭小住宅は施工会社も経験がないと対応が難しく、その分、金額が跳ね上がることもあります。狭小住宅のノウハウを持った建築事務所を事前に調べておかれてはいいのではないでしょうか」(杉浦さん)

狭小住宅の間取りで活用できるアイデアを紹介!【SUUMO編集部】

狭小住宅でも、工夫次第で快適で暮らしやすい住まいを実現できます。限られた空間を最大限に活用するための工夫がポイントです。

ここでは、狭小住宅の間取りに取り入れられるアイデアを3つ紹介します。ぜひ参考にしてみてください。

部屋を細かく仕切らないようにする

狭小住宅では、空間を少しでも広く感じさせる工夫が重要です。そのため、部屋を細かく仕切らず、大きな空間を確保することがポイントになります。壁を減らして視線の抜けをつくることで、奥行きを感じやすくなり、圧迫感のない開放的な間取りになります。空間を仕切りたい場合は、可動式の引き戸やパーテーションを活用すると、必要に応じて空間を区切ることができます。

また、収納は壁際にまとめて配置し、水まわりを一箇所に集約することでデッドスペースを減らせます。こうした工夫により、生活空間を最大限に広げることが可能です。

さらに、蹴込み板のないオープン階段を採用すると、視界が抜けて圧迫感を軽減できます。デザイン性の高い階段を選べば、空間を広く見せるだけでなく、インテリアのアクセントとしても活用できるでしょう。

廊下をできるだけなくす

限られた空間を最大限に活用するためには、廊下をできるだけ減らすことが大切です。廊下をなくすことで、その分居住スペースを広く確保できます。

もし間取りの都合上、廊下を完全になくせない場合は、壁に収納を設置したり、本棚を置いて書斎スペースとして活用したりするなど、移動だけのスペースにせず、多目的に使える工夫をするとよいでしょう。

また、造作家具を取り入れることで、空間に合わせた収納が可能になり、より効率的にスペースを活用できます。無駄のない機能的な収納を設けることで、快適で使い勝手の良い住まいを実現できるでしょう。

なお、造作家具とはオーダーメイドでつくられる家具のことで、工務店やデザイン事務所が設計し、壁に直接取り付けるものを指します。設置場所に合わせてサイズやデザインを自由に決められるため、狭小住宅の限られたスペースを有効に活用しやすいのが特徴です。

スキップフロアやロフトを取り入れる

スキップフロアとは、同じ空間内に高さの異なるフロアを設けた間取りのことです。例えば、床を一段上げた「小上がり」、一段下げた「ダウンフロア」、1階と2階の間に設ける「中二階」などがあります。スキップフロアのメリットは、壁をつくらずに空間を区切れる点です。開放感を保ちながら、異なる用途のスペースをつくることができます。

一方、ロフトは天井を高くすることで生まれる空間を活用し、部屋の一部に新たなスペースをつくるアイデアです。ロフトは収納スペースとして使うほか、書斎や子どもの遊び場としても活用できます。

狭小住宅では、縦の空間を意識することが重要です。限られた面積でも、スキップフロアやロフトを取り入れることで、圧迫感を抑えつつ、機能的な住空間を実現できます。

おしゃれな工夫を凝らした狭小住宅の間取りを紹介

長年、狭小住宅を手掛けてきた杉浦充さんに、これまで設計した狭小住宅の間取りを紹介してもらいました。

実例1:変形狭小地に立つ実質12坪の土地に立つ扇型の家

扇形のLDKの写真

敷地の形状や高低差というウィークポイントを居室に活かし豊かな空間を実現(写真/桧川泰治)

「条例による壁面後退が必要な地区のため実質12坪余りが建築可能範囲だったお宅。景観を楽しめる環境に配慮した2階建て木造住宅です」

変形狭小地に建つ実質12坪の土地に建つ扇型の家の間取り図

実例2:14坪の敷地に計画した明るい住まい(施主紹介:ザ・ハウス)

勾配天井に設けられた窓から明るい光が差し込む

通風と採光を得ながらもプライバシーが保てる建物の形状と開口部の位置を十分検討して明るく開放的な住まいに(写真/桧川泰治)

「主寝室周りにふんだんな収納スペースを備えた、雨天時でも明るい住まい。多様な構成で、約32坪の生活空間のなかにいろいろな居場所をちりばめています」

14坪の敷地に計画した明るい住まいの間取り図

14坪の敷地に計画した明るい住まいの間取り図

実例3:吹抜けを設け開放感がある敷地面積15坪の家(施主紹介:ザ・ハウス)

吹抜けと天窓で明るいリビング

厳しい斜線制限の敷地条件のなか、天窓のある高い吹抜け天井と低いリビングの天井が同じ空間でつながり、狭さをまったく感じさせない(写真/桧川泰治)

「3階建ての家は、2階と3階にかけて吹抜けを設置することで、開放感が感じられる家になっています」

吹抜けを設け開放感がある敷地面積15坪の家の間取り図

吹抜けを設け開放感がある敷地面積15坪の家の間取り図

実例4:住宅隣接地でも自然採光の明るさにこだわった敷地面積18坪の家(施主紹介/ザ・ハウス)

1階の主寝室から玄関まで見通せる

奥行きのある内部構成によって、狭小地を感じさせない居心地の良さを実現(写真/桧川泰治)

「限られた敷地のなかで密接する近隣との関係を考慮したうえで、床や天井高の変化、小さいながらも庭や屋上を持った多様な内部構造の住宅。狭小地を感じさせないいろいろな居場所がある住まいです」

住宅隣接地でも自然採光の明るさにこだわった敷地面積18坪の家の間取り図

住宅隣接地でも自然採光の明るさにこだわった敷地面積18坪の家の間取り図

実例5:造形的特徴を持つ敷地面積19坪の都市型二世帯住宅(施主紹介:ザ・ハウス)

白い壁と木を基調としたリビング

東京都の安全条例を逆手にとって、外観のデザイン性を高めつつ2階、3階の面積も獲得。プライバシーも重視したつくりが特徴(写真/桧川泰治)

「土地面積19坪の敷地に建てた都市型二世帯住宅です。内部を壁で分離するような形で二世帯がストレスなく暮らせるように意図しました」

造形的特徴を持つ敷地面積19坪の都市型二世帯住宅の間取り図

実例6:2階建て敷地面積19.8坪の二世帯住宅

無垢材の床や造作の家具で統一感のあるリビング

高低差を活かすことで地下階への通風と採光、2世帯の居住面積が得られるように工夫(写真/桧川泰治)

「2階建てですが、半地下室のガレージとロフトつき、土間や車1台分の駐車スペースも備えています。1階部分を2世帯が共有する間取りにしました」

2階建て敷地面積19.8坪の二世帯住宅の間取り図

実例7:間取りの自由度を求めた26坪の狭小住宅

キッチンからすべて見渡せる配置

キッチンからすべて見渡せる配置にすることで子育てしやすい間取りに(写真/杉浦幹雄)

26坪の狭小住宅の間取り図

Yさん夫妻は、第一子の妊娠をきっかけに家づくりを考え始めました。しかし、家づくりの知識がまったくなかったため、相談しながら進められるスーモカウンターを利用することに。スーモカウンターでは、家づくりの基本情報を学びながら、注文住宅を専門とする会社を含む4社を紹介してもらいました。

それぞれの建築会社と打ち合わせを重ねた結果、自分たちの理想をより実現できる注文住宅を選択。希望していた利便性の高いエリアでは広い土地を確保するのが難しかったものの、納得のいく土地を見つけることができました。

間取りの都合上、諦めた仕様もありましたが、何度も修正を重ねたことで、空調効率の良い快適な室内環境を実現。現在は、理想の住まいで安心して子育てができているそうです。

この実例についてもっと詳しく→
間取りの自由度を求めた注文住宅。家事動線やインナーテラスなど、子育て世帯の暮らしやすさを実現

スーモカウンターに相談してみよう

予算を始めとして、さまざまな制約のなかで選ばれている狭小住宅ですが、これまで見てきたように多くのメリットもあります。間取りや収納、家具などを工夫して限られた空間を有意義に使えば、快適な暮らしを営むことができるでしょう。

注文住宅の新築・建て替えをサポートしているスーモカウンターでは、家づくりはもちろん、土地探しや収納・家具などについてもアドバイザーに悩みを相談できる無料の個別相談を実施しています。個別相談では土地選び、予算、希望条件の整理、建築会社の紹介など、注文住宅を建てる際のあらゆる不安について、知識と経験のある専任アドバイザーに無料で何度でも相談できます。また、注文住宅にかかわるさまざまな悩みや不安を解決できる無料講座も実施しています。

狭小住宅を建てる際、家族のスタイルに合う家にするためにはどんな間取りにして、どのような家具を設置すればいいのか相談したい人は、スーモカウンターを活用して、家づくりの第一歩を踏み出してはみてはいかがでしょうか。

取材・執筆/櫻井とおる(りんかく)、SUUMO編集部
イラスト/青山京子

取材協力/水越美枝子(みずこし・みえこ)さん
一級建築士。日本女子大非常勤講師。大手建設会社に入社後、独立し、新築・リフォームの住宅設計からインテリアコーディネート、収納計画まで、トータルでの住まいづくりを提案。著書に『40代からの住まいリセット術――人生が変わる家、3つの法則』(NHK出版協会)。『人生が変わるリフォームの教科書』(講談社)。『いつまでも美しく暮らす住まいのルール――動線・インテリア・収納』。『美しく暮らす住まいの条件~間取り・動線・サイズを考える~』(エクスナレッジ)など多数。
取材協力/杉浦充さん
充総合計画一級建築士事務所代表。多摩美術大学美術学部建築科卒業後、ゼネコンに就職。その後同大学院を卒業し、同建設会社で勤めた後、2002年に充総合計画一級建築士事務所を開設。その後、京都造形芸術大学で非常勤講師を勤めるほか、NPO家づくりの会副代表理事、一般社団法人建築家住宅の会の監事などを歴任、今日に至る。2006年第4回NiSSCイソバンドデザインコンテスト特別賞。2019年屋根のある建築作品コンテスト(タニタ)優秀賞ほか。著書・共著『新しい住宅デザイン図鑑』『しあわせ間取り図鑑』(エクスナレッジ)ほか多数。