木造住宅は、日本の気候や文化に適した住宅として古くから親しまれています。その魅力は、コストの安さや断熱性の高さにとどまらず、木の持つ温もりや調湿効果にもあります。従来は耐震性や耐火性といった課題が指摘されましたが、近年ではそれらを克服するための技術も進化しています。
今回は、木造住宅の種類や特徴、メリット・デメリットの解決策、さらに他の工法との違いについて、僕らの家で設計を担当する中鉢裕行さんに話を伺いました。
木造住宅とは?
日本で広く支持されている木造住宅ですが、木造住宅というのはどのような住宅なのでしょうか? また多くの人に好まれている背景にはどのようなことがあるのでしょうか?
「簡単に言うと木でつくられた住宅が木造住宅です。日本では大昔から木で建造物が建てられてきました。縄文時代の高床式倉庫、中世の寝殿造り、数ある神社仏閣も木造です。長い歴史の中で木造の建築技術が磨かれてきたこと、さらに木材が身近にあり、高温多湿な気候との相性も良いことなどから、日本では木造住宅が普及してきたといえます」(中鉢さん、以下同)
一口に木造住宅と言っても、いくつかの種類があります。代表的な木造住宅は、在来工法ともいわれる木造軸組工法と、ツーバイフォーなどの木造枠組壁工法の2つです。
木造軸組工法
木造軸組工法は基礎に土台を乗せた上に柱と梁を組み合わせ、筋交いを入れて揺れに対抗する工法です。
木造枠組壁(ツーバイフォー(2×4))工法
木造枠組壁工法は海外からきた工法で、2×4インチなどの角材の枠をつくってパネルにして組み立て、4面の耐力壁と床、天井の6面体構造で揺れに対抗する工法です。
木造ラーメン工法
木造ラーメン工法は、基礎の上に柱を立て、その上に水平に梁(はり)をかけることで建物を支える工法です。「ラーメン」とはドイツ語で「フレーム」や「額縁」を意味し、柱と梁の剛接合によって強度の高い住宅が完成します。もともと鉄骨造・鉄筋コンクリート造などに採用されていた工法になりますが、木造にも応用しています。
木造ラーメン工法は柱や耐力壁を極力少なくでき、さらに筋交いなどの補強材を入れる必要もないため、開放的な空間の間取りを実現しやすいメリットがあります。一方で、他の木造工法に比べると自由度が高い分、建築コストがかかりやすい傾向にあります。
木造以外の代表的な工法の種類
木造の代表的な工法を紹介しましたが、木造以外にもさまざまな建築工法があります。特に代表的なのは鉄骨造(S造)と鉄筋コンクリート造(RC造)です。それぞれの特徴について紹介しましょう。
鉄骨造(S造)
鉄骨造は、鉄骨を柱や梁などの構造材に用いた工法です。鉄(Steel)の頭文字から「S造」と呼ばれています。鉄骨はフレームの強度が高く、マンションやビルなど大型建築に用いられることが多い工法です。しかし、近年は戸建て住宅にも採用されるようになりました。耐震性に優れており、柔軟に設計を変更することも可能です。
ただし、鉄骨造は木造に比べて耐火性が低く、耐火被覆や防錆(ぼうせい)対策が必要となってくることから、建築コスト・メンテナンスコストが高くなりやすい傾向にあります。
鉄骨造についてもっと詳しく→
軽量鉄骨住宅は、木造やRC造に比べて何が違う?特徴や実例から解説!
鉄筋コンクリート造(RC造)
鉄筋コンクリート造は、鉄筋とコンクリートを組み合わせることで強度を高めた工法です。Reinforced Concrete(強化されたコンクリート)の頭文字を取って「RC造」と呼ばれています。鉄筋を組み、周りに型枠をつくってコンクリートを流し入れることで、鉄筋の引張強度とコンクリートの圧縮強度が組み合わさることで、高い耐久性を実現できます。
鉄筋コンクリート造も鉄骨造と同様に、マンションや大型商業施設、公共の建築物などに採用されていますが、自由度の高い設計が可能なことと耐火性・遮音性が高いことから、住宅にも採用されています。ただし、木造や鉄骨造に比べるとコストがさらに高くつきやすいため、注意が必要です。
鉄筋コンクリート造についてもっと詳しく→
RC住宅の特徴とは?耐震性やデザインの自由度をご紹介
木造住宅のメリットとは?
中鉢さんによると、木造住宅には、さまざまないいところがあると言います。どのような点がいいのか、具体的に見ていきましょう。
建築コストが抑えられる
木造住宅は建築コストが抑えられるというのが大きなメリットの一つです。
「RC造や鉄骨造に比べると、木は建築資材として安いので、木造住宅は材料費を抑えられます。そのため、全体の建築コストも抑えることができます」
※世界的に木材が不足しており、供給への影響が考えられます。工事の期間や住宅価格については建築会社にお問い合わせください
断熱性や調湿性が高い
断熱性や調湿性が高いという点も、木造住宅の魅力の一つです。
「木はコンクリートの約10倍、鉄の約500倍も断熱性が高いといわれています。木材には細かい空隙(くうげき)が無数にあり、その中に含まれている空気が熱を遮るのです。また、細胞壁と空隙は湿気を吸収・放出する役割も担っており、湿度を自然に調節することができます」
建物を軽くできる
木造住宅は、RC造や鉄骨造に比べて建物を軽くできる点もメリットの一つです。
「建物が軽いと、地盤へかかる負荷が少なく、傾きも発生しにくくなります。また、構造計算的にも重い建物の場合は建物下部の強度を高くしなければならず、その分の材料費や建築費などコストが高くなってしまいますが、軽い建物の場合は耐久性を担保するために構造にかけるコストが比較的少なくて済みます」
自然の木材を用いた落ち着きのある空間を演出できる
木造住宅はその名の通り建材に木材を使用しています。構造材以外に柱や床など目に見える箇所に木材を使用することで、リラックスできる空間を演出できます。
また、木材には調湿効果も期待でき、室内を適度な湿度に保ちやすくなります。特に冬場は乾燥しやすいため、調湿効果による恩恵を受けやすいでしょう。
リフォームがしやすい
木造住宅、特に木造軸組工法でつくられた住宅は鉄骨造や鉄筋コンクリート造構造と比べてリフォームが比較的容易です。
新築は基本的に今の暮らしや将来のことも考えて家づくりを行うものですが、実際にその通りになるとは限りません。ライフスタイルの変化に合わせて住みやすいわが家にするためのリフォームを行うことも考えると、木造住宅の方が向いているといえます。
木造住宅のデメリットは? 解消法はあるの?
木造住宅にはメリットが多い一方、RC造や鉄骨造の住宅に比べた場合のデメリットもあるようです。それらのデメリットに、解消法はあるのでしょうか。
木造住宅は地震に弱い?
木造住宅の中でも木造軸組工法の住宅は、他の工法の住宅に比べて耐震性で劣るといわれていました。しかし、それも昔の話だと中鉢さんは言います。
「木造軸組工法では、柱と梁を『仕口(しぐち)』という切り欠きをつくってつないでいます。最近はこの『仕口』などを最低限に抑え、ドリフトピンなどの専用金物を使い、接合する『ピン工法』が普及してきました。この工法だと木材断面の欠損が少ないため、高い強度を担保でき、耐震性の向上が見込めます」
木造住宅は燃えやすい?
木造は燃えやすいというイメージを持っている人もいると思いますが、実は「木造は燃えにくい」と言います。
「木材の表面が燃えてから中心へ燃え進むスピードは、1分間でわずか0.6mm~0.8mmです。これは表面が炭化することで酸素の供給が絶たれるからで、木造だから燃えやすいというのは間違っています。むしろ鉄の方が木よりも高温の熱に弱いといわれています」
木造住宅は品質にバラつきがある?
木造は大工さんの腕に左右されるため、品質にバラつきがあるという声も聞きますが本当なのでしょうか?
「特に木造軸組工法でそのようなことを心配される人もいますが、今は工場でプレカットしたものを現場で組み立てる方式が普及してきたため、その場合の品質は均一化してきています」
木造住宅はデザインの自由度が低い?
木造住宅は間取りなどデザインの自由度が高いという人もいれば、逆に自由度が低いという人もいます。どちらが本当なのでしょうか?
「一般的に、木造枠組壁工法よりも木造軸組工法の方が設計の自由度は高いのですが、木造軸組工法も、耐震性を担保するために柱が多くなり、大空間をつくれないといったデメリットがあります。そのため、RC造などと比べるとデザインの自由度は低いといわれています。しかし、柱や梁はデザインの一部に組み込むこともできますし、最近ではコストは高めですが、大空間が可能な木造の工法(木造ラーメン工法)を取り入れる場合もあります」
木造住宅は防音性や気密性が低い?
従来の木造住宅は壁の内側に空洞があることから、防音性・気密性が低いといわれていました。しかし、近年は建築技術の向上や工夫を加えることで、防音性・気密性が改善しています。例えば防音性に関しては床や壁を二重にしたり、壁に遮音材を導入することで木造住宅でも防音性をアップさせることができます。
また、ドアや窓・サッシに気密性・断熱性の高いものを選ぶことも重要です。気密性が高まれば室温も一定に保ちやすくなり、年間を通して快適に過ごしやすくなるでしょう。
木造住宅は耐用年数が短い?
木造住宅と鉄骨造住宅の法定耐用年数を比較すると、鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)は47年、鉄骨造(骨格材の厚さが3mm以上4mm以下)で27年、木造が22年に設定されています。法定耐用年数はあくまで資産価値を求める際に活用する税務上の基準で、家の寿命や耐久性とは関係ありません。ただし、天然素材の木材が多く使われているだけに、環境や使い方などによって鉄骨鉄筋コンクリート造や鉄骨造に比べて耐久性が劣ってしまうこともあります。
定期点検やメンテナンスを行うことが長く住み続けるポイントです。
木造住宅はシロアリ対策が大変?
木造住宅の天敵ともいわれるシロアリは、住宅の基礎部分から柱などの建材を食べてしまいます。いくら耐震性を高くしてもシロアリの被害によって耐震性が弱まってしまう恐れもあります。このような被害に遭わないためにも、木造住宅を建てる際には防蟻対策が必須です。
建築基準法には、必要な防蟻と防腐への対応が明記されており、新築を建てる際にはこの基準を満たす必要があります。が、新居の立地が湿気のある場所、風通しの悪い場所などシロアリに好まれそうな条件で不安であれば、建築会社に対策を相談してみましょう。
木造住宅に使われる木材の種類と特徴を知ろう!
これまで見てきたように、木造住宅の特徴の一部は、木材の特徴であるとも言えます。そこで、木造住宅にはどんな木材が使われるのか見ていきましょう。
木造軸組工法に使われる木材
木造軸組工法の土台では、ヒノキやヒバなどが使われます。特にヒノキは耐久性が高く、水に強い上、狂い(変形)も少ないため、土台にはヒノキを使うケースが多いと言います。柱や梁には、アカマツやベイマツ、スギなどが使われます。
「フローリングなどの内装材で木を使う場合は、木目や色がインテリアと合うかどうかなどで選びますが、構造材は耐久性を重視して選びます」
木造枠組壁工法に使われる木材
木造枠組壁工法は、使われる角材のサイズによって、2×4(ツーバイフォー)工法や、2×6(ツーバイシックス工法)などと呼ばれます。
木材の種類としては、「SPF」と呼ばれる木材が多く用いられています。SPFのSは米トウヒ(スプルース)、Pはマツ類(パイン)、Fはモミ類(ファー)を指しており、SPFは常緑針葉樹の総称です。2×4工法で使われる木材は「ツーバイフォー材」などとも呼ばれ、加工しやすいためDIYでも多く用いられています。
木の持つ魅力や効果にはどんなものがある?
木造住宅の魅力の一つに、素材である木が本来持っている魅力があります。木にはどのような魅力があるのでしょうか?
癒やし効果
「木目などを見て、視覚的に癒やされることも多いでしょう。また、木からは『フィトンチッド』という香りの成分が発散されており、この成分に人をリラックスさせる効果があることが、さまざまな実験によってわかっています」
衝撃の緩和効果
「前述の通り、木には無数の細胞があって空気の層を内包しているため、それがクッションとなって衝撃を緩和します。木の床を歩いたときと、コンクリートの床を歩いたときを比べて、木の床の方が疲れにくいのは、この衝撃の緩和効果によるものです」
理想の木造住宅を実現した先輩たちの実例を紹介!
木造住宅にはさまざまな魅力があることがわかりました。そこで、スーモカウンターで理想の木造住宅を建てた先輩たちが、どんな点にこだわり、どんな住まいを実現したのか、実例を参考に学んでいきましょう。
【case1】木造建築に強い地元の会社と一緒に建てた自慢の平屋
「建てるなら平屋がいい」と考えていたFさん夫妻。いろいろな平屋を見たいと、スーモカウンターを訪れました。紹介された建築会社のうちの1社、木造建築に強い地元の会社に惹かれ、建築を依頼することに。
間取りなどのプランはFさん夫妻が考え、建築士さんにアドバイスをもらいながら進めました。「天井に梁を出したい」というのも、夫のアイデア。「リビングから見上げても、ロフトから見下ろしても、ヒノキの白木の見せ梁を眺めることができます」と、完成した住まいにご満悦です。
この実例をもっと詳しく→
ヒノキの梁が清々しい、ロフト付きの平屋
【case2】自然素材をふんだんに取り入れた冬でも床が冷たくない家
祖父から購入した土地に家を建てることにしたSさん夫妻。住宅展示場を回ってもピンとこなかったため、スーモカウンターを訪れました。希望したのは見た目はシンプルでも、質の良い素材を使った家。紹介された会社の中から、木造建築で、構造材にもヒノキのむく材を使うという1社に惹かれて一緒に家づくりを進めることにしました。
完成した住まいの壁は漆喰仕上げ、床はむく材。体調管理の面でも安心でき、冬でも床が冷たく感じすぎない自然素材の家に大満足です。
この実例をもっと詳しく→
むく床と漆喰仕上げの、自然素材が心地いい家
【case3】格段に暖かく、家じゅう素足で走り回れる木造の家
最初は、どの建築会社にすれば、自分たちの予算と希望のバランスがとれた家を建てられるのかわからなかったというUさんは、雑誌で知ったスーモカウンターに相談してみることにしました。希望は、断熱性が高く、温かみのある木造の家。紹介された建築会社中から1社を選び、設計の段階で建築士と半年以上の時間をかけて打ち合わせを行いました。
その結果、格段に暖かく、素足で過ごせるむく材の床が気持ちいい、こだわりの住まいが完成。家族みんなで喜んでいます。
この実例をもっと詳しく→
家族が伸びやかに暮らせる、つながりのある住まい
【case4】屋上の設置を実現した木造住宅
Aさんは子どものころから自分のイメージ通りの家を建てることが夢でした。約30年住んだ家からの建て替えを考えるようになり、スーモカウンターへ相談に訪れました。その際に「木造住宅でも屋上をつくりたい」というコンセプトが浮かび、そのことを伝えたところ、屋上づくりが得意な建築会社を提案してくれました。
そんなAさんのご自宅の屋上は三方の景色をパノラマのように眺められるようになっていて、友達を呼んでパーティーができるほど開放的な空間に仕上がっています。また、2階から階段で上がる小屋裏収納もつくりました。さらに、将来のことを考えて1階だけで生活が完結する間取りを実現し、快適かつ住み心地の良い住宅が完成しています。
この実例をもっと詳しく→
女性一人で建てた築30年の家を建て替え、将来を見据え自分好みに
【case5】3000万円で耐震性、断熱性の高い木造住宅を実現
実家近くの土地を活用して注文住宅を建てようと考えたOさん夫妻。住宅展示場に足を運んだものの条件と予算が合わず難しいと感じていました。そんな中、スーモカウンターの広告を見て、家づくりの相談をすることにしました。夫妻の譲れない耐震性・断熱性などの条件と予算が3000万円であることを伝えると、アドバイザーは建築会社2社を提案し、その2社で見積もりを依頼することになりました。性能と予算のバランスが良かった1社を選び、もう1社へのお断りの連絡はスーモカウンターが行いました。
Oさん夫妻は吹抜けを希望していましたが、吹抜けは冬になると暖房費がかさみやすいというデメリットがあったため、建築会社がハーフ吹抜けを提案します。その結果、リビングは開放感があり、ダイニングは落ち着きが生まれたことで空間にメリハリがつきました。
この実例をもっと詳しく→
「のびのびと子育てができる家」完成とともに第一子誕生の幸せ
木造住宅の魅力
最後にあらためて中鉢さんに、木造住宅の魅力を聞きました。
「やはりコストを抑えながら、高い断熱性と調湿性が得られ快適に過ごせる点は木造住宅の魅力です。木の素材としての断熱効果が高いので、RC造や鉄骨造で同じ断熱効果を得ようとしたときよりもコストを抑えることができます。施工技術も日々進歩していますし、今はデザイン的な自由度も高くなっていることからも木造住宅は魅力的です」
スーモカウンターに相談してみよう
「どうやって進めたらいいのかわからない」「建築会社はどうやって選べばいいの?」住まいづくりにあたって、このような思いを抱いているなら、ぜひスーモカウンターに相談を。スーモカウンターでは、お客さまのご要望をお聞きして、そのご要望をかなえてくれそうな依頼先を提案、紹介します。
無料の個別相談のほか、「はじめての注文住宅講座」や「ハウスメーカー・工務店 選び方講座」など、家づくりのダンドリや、会社選びのポイントなどが学べる無料の家づくり講座も利用できます。ぜひお問い合わせください。
取材・執筆/福富大介(りんかく)、SUUMO編集部
イラスト/長岡伸行、小林敦子