塗り壁を外壁や内壁に取り入れた、おしゃれな家を見かけるようになりました。注文住宅を塗り壁で仕上げることにはどのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか? 仕上げ材別の塗り壁の種類や特徴、費用の目安、メンテナンス方法などを、四国化成建材 広告・宣伝課に聞きました。
塗り壁とは?
「塗り壁とは、もともとは竹小舞(たけこまい)という竹を組んだ下地に、何層も土を塗りつけて仕上げる土壁のことを指していました。しかし最近では、漆喰(しっくい)や珪藻土(けいそうど)などの自然素材でできた仕上げ材を、外装ではモルタルや軽量な発泡スチロール系下地、内装では石膏ボードなどに塗りつけて仕上げた壁を意味することが多くなりました」(Mさん/以下同)
外壁や内壁を塗り壁にするメリットとは?
オンリーワンの壁にできる
「塗り壁は左官職人がコテを使って仕上げるため、仕上がりが壁ごとに異なります。力の入れ具合で強弱をつけ模様を描いたり、クシのような道具で筋目を付けたり。わざと荒々しくランダムなデザインにするなど、世界で唯一の仕上がりにすることが可能です。
また昔はさまざまな土を混ぜ合わせることで色の違いを楽しんでいましたが、近年は顔料を使って好みの色を出せるようになりました。そういった形で自分の好みのデザインに仕上げられるのも、塗り壁の魅力だと思います」
環境にやさしい
「塗り壁は、天然素材である土や砂、わらや麻などの繊維を使用しているため、環境に有害な化学物質が含まれていません。また、解体した後は土に還るため、産業廃棄物を排出しないことも、環境にやさしい理由とされています」
調湿効果が期待できる
「塗り壁は高い調湿効果が期待できるのもメリットです。例えば土壁は1㎡あたり35g程度の水分を吸収できるといわれています。湿度の高い夏は湿気を吸い、湿度が下がる冬には水分を放出することで、室内の湿度を一定に保つ役割を果たします。
とくに珪藻土のように、目に見えない小さな穴がたくさん空いた多孔質の素材は調湿効果が高いことが特徴です。私たちの製品でもっとも調湿効果が高いタイプは、1㎡あたり約200gの水分の吸放出が可能です。これだけ効果が高いと、全面ではなく一部だけを塗り壁にしても、十分に調湿効果を得られます」
リフォームしやすい
「塗り壁は、下地がしっかりとしていればボロボロ剥がれ落ちることもなく、経年で汚れが目立つようになったときには上からそのまま塗り直せます。クロスのように一度剥がして下地からやり直す必要がないので、リフォームしやすいのがメリットです。
最近は既存の塗り壁の上からローラーで手軽に塗り直せるような塗材もあるので、DIYで塗り直すことも可能です」
継ぎ目ができない
「クロスを張るとどうしても継ぎ目ができてしまうので、経年によりそこから剥がれてきてしまうことがあります。その点塗り壁は継ぎ目ができないので、その心配がありません。
外壁の場合も、サイディングであればシーリングの継ぎ目ができてしまいますが、塗り壁は壁一面継ぎ目のない高級感のある仕上がりになります」
防火性が高い
「塗り壁の素材である土や砂はそもそも燃えにくい素材なので、防火性が高いことも特徴です。実際、私たちが扱っている漆喰や珪藻土、その他塗り壁の材料のほとんどは、建築基準法上の不燃材料に認定されています。
昔から日本の家屋は、骨組みは木、ふすまや障子は紙、畳はい草といったように、燃えやすい素材が使われてきました。そんななか、塗り壁にすることで、防火性が高められていたのだと思います」
外壁や内壁を塗り壁にするデメリットとは?
施工費が高くなりがち
「塗り壁は、内壁も外壁も施工費が高くなる傾向があります。その理由は、職人が手作業で仕上げるため時間がかかり、塗り重ねるために乾燥させる時間が必要で、施工日数が長くなるからです。
ただ塗り壁は、先で紹介したようにメンテナンスの際に重ね塗りが可能です。例えば塗り壁風クロスを張り替えた場合と比較すると、私たちのシミュレーションでは、2回のリフォームを経た段階でコストが逆転する結果となりました。そのため長期的な視野で見れば、決して高くはないと思います」
職人の技術の差が出やすい
「塗り壁はクロスやサイディングのような工業製品を張り付けるのではなく、左官職人が手仕事で仕上げるため、職人の技術の差が出やすいのは事実です。とくに最近は左官職人のなり手も少なく、長く経験を積んだ人は少なくなりました。
ただ塗り壁は、仕上がりが人それぞれ違うからこそ味が出るものです。とくに近年人気のランダムな仕上げは、かえって若い職人さんのほうがおもしろい仕上がりになることも少なくありません。平滑に仕上げたいのでなければ、人によって仕上がりが異なることは、必ずしもデメリットとはいえないと思います」
汚れを落としにくい
「塗り壁のうち内壁は、ビニールクロスと違って水洗いができないので、何かで汚してしまうと落とすのが困難です。また平滑な塗り方ではなく模様を付けた場合にはホコリがたまりやすくなるので、きちんとしたメンテナンスが必要になるでしょう。
なお、塗り壁の経年の汚れというのは全体的に色がくすんでいく感じで、それ自体を塗り壁のよさととらえる人もいます」
ひび割れしやすい
「塗り壁は伸縮性がないため、下地に追従できずにひび割れしやすいのが特徴です。ただ最近は、主に外装用ですが、下地に追従するような弾力のある塗り壁も出てきました。
弾力を持たせようとすると樹脂を混ぜる必要があり調湿機能などが失われてしまうため、内壁に使用することはあまりありません。けれども外装であれば、ひび割れを防ぎつつ、塗り壁の意匠性を損なわない仕上げが可能です」
【仕上げ材別】塗り壁の種類と特徴、費用の目安は?
塗り壁材には多くの種類があり、それぞれ特徴が異なります。ここでは主な塗り壁の仕上げ材と、費用の目安を紹介します。※費用目安は2023年5月時点の税抜材工共(材料費+施工費)
漆喰(しっくい)壁:3680円/㎡〜
「漆喰壁は消石灰を主原料に糊とスサを混ぜたもので、昔からお城にも使用されてきた白い塗り壁です。コテで押さえて平滑にすると、ツルツルした仕上がりになります。防火性に優れ、調湿性もあるので結露を防ぎ、カビやダニの発生を防ぎやすいのも特徴です」
珪藻土(けいそうど)壁::3900円/㎡〜
「珪藻土は珪藻と呼ばれる藻(も)が沈殿し、化石になった土のことです。目に見えない細かな穴がたくさん空いた多孔質(たこうしつ)素材で、調湿性だけでなく防音性や吸臭性にも優れています。また、ホルムアルデヒドを吸着・分解することもできます。基本的にザラッとした仕上がりになり、肌合いや色の違いなどにより、珪藻土を使った聚楽(じゅらく、京都市内で産出される褐色で渋みのある色土で京壁のなかでも最高級の材料)調のもの、荒々しい土壁風のものなどバリエーションも豊富です」
土壁:2590円/㎡〜
「土壁は塗り壁全般を指す言葉ですが、上塗りに使われる土の種類を指すこともあります。例えば聚楽壁は、豊臣秀吉が建てた聚楽第の近くで取れる聚楽土を使う壁を指します。それが関東に行くと京都の壁という意味で京壁と呼ばれるようになりました。土壁は、土の種類や砂の混ぜ方によっていろいろな色や質感を楽しめるのが魅力です」
砂壁:3570円/㎡〜
「砂壁は、川砂を主原料としています。土壁のザラザラした仕上がりとは違い、ツブツブした砂が整然と並んだなめらかで美しい仕上がりになるのが特徴です。茶室や旅館の客間に使われるなど、土壁よりも高級な位置づけです。ただし砂壁には調湿効果はほとんどありません」
プラスター壁:5400円/㎡〜
石膏(プラスター)を主原料とした塗り壁は、乾燥による収縮が少ないのでひび割れしにくいのが特徴です。漆喰壁に比べて、マットで落ち着きのある仕上がりとなります。
(費用目安の出典:吉野石膏株式会社 セラミック営業部)
ジョリパット壁:3200円/㎡〜
アクリル樹脂を主成分に、砂や砂利などを混ぜた塗り壁材で、マットな仕上がりになります。カラーバリエーションが豊富で、コテ塗り以外に吹き付けやローラー仕上げができるのも特徴です。
(費用目安の出典:アイカ工業ホームページ)
その他の塗り壁
「近年は焼石膏や天然石を混ぜたもの、モルタル調のもの、磨き上げることで反射するものなど、意匠性を重視したさまざまな塗り壁材も人気です。内壁用でも耐水性があるタイプもあり、調湿性は失われてしまうものの水拭きができるようになります」
塗り壁のメンテナンス方法は?
【外壁】を塗り壁にした場合
「外壁は、普段のメンテナンスでは硬めのホウキで壁をなでるようにしてホコリを落とします。外壁用の塗り壁は防水仕様となっているので、汚れが目立つ場合はホースなどで水をかけて流したり、中性洗剤を付けたブラシでやさしくこすったりしていただいて大丈夫です。
高圧洗浄機を使うと、圧力が高すぎた場合に欠けてしまったり骨材が落ちてしまう場合があるので注意が必要です。
なお最近の外壁用の塗り壁材は、雨水で自然に汚れが落ちるように親水性を高めてあるので、汚れには強くなっています」
【内壁】を塗り壁にした場合
「内壁は、毛が柔らかめのホウキでやさしくホコリを落とすようにします。部分的に汚れた場合は、消しゴムを使うのがおすすめです。こするのではなくトントンと押し当てるようにして、汚れを消しゴムに移すイメージです。耐水性のない塗り壁は、水は使わないようにしてください。
部分的に割れたり欠けたりした場合は、タッチアップ材(部分的な修正塗りをするための材料)もあるので穴埋めしておくと、そこからボロボロと欠けてくるようなことはありません」
塗り壁で理想の家をかなえた先輩たちの実例を紹介!
ここからは、塗り壁で理想の家をかなえた先輩たちの実例を紹介します。塗り壁で仕上げるとどんな家になるのか、参考にしてみてくださいね。
【Case1】玄関や洗面所、トイレまで漆喰仕上げ!場所によって塗り方が違う家
見た目はシンプルでも質のよい素材を使った家づくりにこだわったSさん夫妻。壁は漆喰、床材や建具には無垢材を使う会社に建築を依頼しました。リビングや居室はもちろん、玄関や洗面所、トイレなどもすべて塗り壁で仕上げられていますが、場所によって塗り方が違うので目でも楽しめます。さらにシックハウス症候群やハウスダストの心配も軽減でき、体調管理の面でも安心です。
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【Case2】壁には漆喰、床には無垢材を採用!ウイルス不活性化の工夫がされた家
アトピーと喘息、アレルギーがあるKさんは、スーモカウンターを訪問して家づくりを相談。自然素材を使った会社を紹介され、壁に漆喰、床は無垢材を使用し、ウイルス不活性化の工夫が施された健康配慮住宅を建てました。リビングには漆喰壁の白に映えるダークブラウンの飾り梁が設えられ、とてもおしゃれな仕上がりです。Kさんは「住んでいて気持ちがいい」と満足しているそうです。
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【Case3】120点の住み心地のカギは高調湿塗り壁材と24時間換気システム
「かっこよく機能的な家」を目指して家づくりをおこなったHさん夫妻。もともとアレルギー体質であったこと、子どもも気管支が弱かったことから、有害物質の分解除去やカビ・ダニの発生防止効果があるとされる高調湿塗り壁材で内装を仕上げました。24時間換気システムをあわせて導入したことで、安心・安全・快適な空間づくりに成功し、「120点」の住み心地となりました。
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【Case4】外壁にサイディングと塗り壁を併用!白とグレーのコントラストが美しい家
Tさん夫妻は、スーモカウンターで紹介されたなかから、かっこよく個性を大事にしていると感じた建築会社を選んで家づくりをスタート。Tさん夫妻が選んだ会社は建材の選択肢も豊富で、外観はサイディングと塗り壁の組合わせを提案してくれました。片流れとボックスの組合わせが目を引くスタイリッシュな外観は、グレーのサイディングと真っ白な塗り壁のコントラストが美しく、青空によく映えます。
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注文住宅の外壁や内壁を塗り壁で仕上げるポイントは?
最後にあらためて四国化成建材 広告・宣伝課に、外壁や内壁を塗り壁にするときのポイントを伺いました。
「近年は塗り壁材の種類が増えました。そのためとくに内壁を塗り壁で仕上げたいときには、塗り壁に何を求めるのかを明確にしておくことが大切です。調湿性や吸臭性などの機能性を求めるのか、塗り壁の質感や意匠性を求めるのかによって、塗り壁材を選び分けるとよいでしょう。
また塗り壁はいろいろな仕上げ方があるので、塗り壁の質感などをサンプルで確かめたうえで、施工業者さんとよく話し合って共通の仕上がりイメージを持つことも大切です。塗り壁をきっかけに、木や紙、い草、そして土といった自然素材を使った日本の家の魅力を、ぜひ見つめ直していただきたいと思います」
スーモカウンターに相談してみよう
「塗り壁仕上げの家を実現してくれる工務店を知りたい」など、住まいづくりについて疑問や悩みがある人は、ぜひスーモカウンターに相談を。スーモカウンターでは、お客さまのご希望を伺ったうえで、かなえてくれそうな依頼先を提案、紹介いたします。
無料の個別相談のほか、「はじめての注文住宅講座」や「ハウスメーカー・工務店 選び方講座」など、家づくりの段取りや会社選びのポイントなどを学べる無料の家づくり講座も利用できます。ぜひお問い合わせください。
イラスト/上坂じゅりこ