天井の一部が高くなっている「折り上げ天井」とは一体どのようなものでしょうか。そして、どのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか。折り上げ天井について、パームスハウスの大慈禎之輔(だいじ・ていのすけ)さんに詳しく話を聞きました。
目次
折り上げ天井とは?
折り上げ天井とは、天井の中央部分を周りよりも一段高く仕上げた形状の天井のことです。部屋を開放的に見せたり、採光性や通気性に優れていたりと多くのメリットがあります。間接照明との相性も良く、スタイリッシュな雰囲気を醸し出します。
折り上げ天井の特徴
折り上げ天井は、部屋を広く見せることができるため、開放感を出したいというニーズにマッチしています。また、折り上げ部分の平均的な高さは20cm〜30cmほどで、中央が凹んでいることで空間のアクセントにもなり、間接照明との相性も抜群で、主にリビングや玄関、和室の天井として採用されています。
「折り上げ天井は実用性だけでなくデザイン性にも優れ、特にリビングの天井として取り入れられる場合が多いです。限られた面積の中で、リビングだけは開放感を持たせたいというニーズにもマッチしているからです。折り上げ天井にすることで上質な空間に仕上がります」(大慈さん、以下同)
梁を見せる構造
天井を一段高く上げているため、通常は隠れている梁(はり)を見せることができるのも折り上げ天井の特徴です。ダイナミックで存在感のある梁を見せることで空間の中にアクセントが生まれます。仕上げとして梁に塗装をしたり、クロスを巻いたりします。
折り下げ天井との違い
折り下げ天井とは、一部を意図的に低くした天井のことです。折り上げ天井も折り下げ天井も、天井の一部の高さを変えることにより、空間にアクセントをつけるところは共通しています。
折り上げ天井が天井の一部を高くすることにより、空間に解放感と上質感を与えるのに対して、折り下げ天井は、天井の一部を低くすることにより、空間を引き締めて落ち着いた雰囲気を演出できます。
折り下げ天井について詳しくは→
下がり天井とは? メリット・デメリットと、上手な取り入れ方を紹介!
和風建築の折り上げ天井
折り上げ天井はおしゃれでモダンな雰囲気を演出する一方、古くから和風建築でも用いられてきました。格天井の一部を高くした「折上格天井(おりあげごうてんじょう)」は寺院や城、武家屋敷などの天井として取り入れられ、和の空間をより格式高いものにしています。
折り上げ天井にして後悔する人が多い?折り上げ天井のデメリットとは?
折り上げ天井にはデメリットもあります。家が完成してから後悔しないために、マイナスポイントについてもしっかりと理解しておくことが大切です。
冷暖房効率が悪い
「天井が一段高くなっている分、通常の天井と比べて冷暖房効率が悪いというデメリットがあります。折り上げた部分が高く広くなるほど室温調整のコストがかかるのです」
設置費用は安く済ますことができても、入居後のランニングコストが膨らむ可能性があります。折り上げ天井を設置する空間には、断熱効果の高い窓ガラスを取り入れたり、シーリングファンを設置して対策するのが良さそうですね。
掃除やメンテナンスがしにくい
折り上げの部分に埃が付着することがありますが、高い天井を自分で掃除するのは容易なことではありません。また、電球交換などのしにくさも折り上げ天井のデメリットと言えるでしょう。
「天井の掃除をこまめに行いたい人には折り上げ天井は不向きかもしれません。高い天井となると作業するための足場が必要です。専門業者に依頼したほうが良いでしょう。また、照明は電球ではなくLEDにするのが原則です。LEDであれば電球とは違って短期的に交換する必要がありません」
建物の高さ制限によっては上階の天井が低くなる
新築住宅の天井の高さは2m40cmが一般的ですが、北隣の住宅の日当たりを考慮し、日照確保のために住宅の高さを規制する「北側斜線制限」が適用される場合は建物の高さに制限が生まれます。
北側斜線制限とは北側に立つ建物への日当たりを確保するために、住宅の多い第1種及び第2種低層住居専用地域、第1種及び第2種中高層住居専用地域に適用される法律のことです。
北の隣地境界から、第1種、第2種低層住居専用地域は5m、第1種、第2種中高層住居専用地域は10mの高さを取り、そこから勾配1:1.25で線を引いた内側に建物を建てる決まりがあります。
北側斜線制限が適用される地域で1階部分に折り上げ天井を設置すると上階の床が上がることになるため、設計によっては上階の天井の高さを2m40cmよりも低くしなくてはいけません。たとえば、1階が2m50cm、2階が2m30cmとなります。
「1階も2階も天井高を保つために、2階建ての注文住宅で2階部分に折り上げ天井付きのリビングを作る人も多いです」
折り上げ天井をどこに設置するかが鍵となるため、天井の高さについて計画段階でよく打ち合わせをする必要があります。
折り上げ部分が薄くなることで音が響く
折り上げ天井は、中央部分を30㎝ほど高くするため、どうしてもその部分の天井と上階の床が薄くなってしまいます。その結果、上の階の足音や物音が下の階に響くことがあります。
折り上げ天井にした上の部屋を子ども部屋にすると、子どもの騒ぐ音と振動が下の階に響く恐れがあるのでおすすめできません。
防音対策として、折り上げ天井の上の階の部屋に、厚めのカーペットと防音マットを敷くと、下の階に伝わる騒音と振動を軽減できることもあります。
折り上げ天井のメリットは?
一方で折り上げ天井には数多くのメリットがあります。ただおしゃれなだけではなく、暮らしが快適になる理由も紹介しましょう。
空間が広く見える
せっかくマイホームを建てるのだから、開放感のある空間で生活したいと考える人は多いでしょう。折り上げ天井を選ぶ理由の大半が「部屋を広く見せたい」というものです。
「天井が一段高いため空間が広く見えることが大きなメリットです。家族が過ごすリビングに折り上げ天井を取り入れて開放感を持たせることで、心地よく生活できます」
照明などと組み合わせることで、おしゃれな空間になる
デザイン性の高さも折り上げ天井のメリットの一つです。天井がおしゃれだと家の中に少しだけ非日常感が生まれます。
「折り上げ天井は通常の天井と比べて立体感があるため、空間全体をスタイリッシュに見せる効果があります。照明との組み合わせによってはカフェのような雰囲気を出すこともできるんです」
シーリングライトやダウンライトなどの照明と組み合わせれば、おしゃれな空間を演出することができそうですね。
光と風を通しやすい
折り上げ天井の位置によっては近くに天窓や高窓を設置することも可能です。そのため光や風を部屋の中に取り入れやすいというメリットがあり、採光、換気のニーズも満たすことができます。
「高い位置に窓を設置するため、自動開閉式にしたりチェーンを付ける必要があります。また、直射日光が入り夏場は暑くなりすぎてしまうおそれがあるので、できれば曇りガラスにするのが良いでしょう」
デザイン性が高いにも関わらず少ないコストで設置可能
上質な空間を作ることができる反面、少ないコストで設置できるのが折り上げ天井の魅力です。面積や設計によって変わってくるものの、追加費用10万円前後で施工できるため、比較的コストをかけずにおしゃれな空間に仕上げたい時にぴったりです。
折り上げ天井を設置する時のポイントを紹介!
折り上げ天井を設置して上質な空間を作るために押さえておきたいポイントは? 照明やクロスの選び方などを解説します。
家全体の間取りを踏まえて設置する
折り上げ天井を設置する際には、家全体の間取りを踏まえて導入する必要があります。折り上げ天井を設置すると、天井と上階の床との間の空間が薄くなり、上階へ音が伝わりやすくなるためです。したがって、寝室や書斎など、静かに過ごしたい部屋を折り上げ天井がある部屋の上に配置しないことをおすすめします。
逆に上階の足音なども下の部屋に響きやすくなるので、折り上げ天井の上の部屋を子ども部屋にするのも避けた方がいいかもしれません。
折り上げ天井のある部屋の上は、廊下や収納など音が気にならないものを配置するのもいいでしょう。
間接照明やダウンライトを付けて雰囲気のある空間にする
壁に光を反射させる間接照明や天井に埋め込むシンプルなダウンライトは折り上げ天井と相性が良く、空間の雰囲気の決め手にもなります。
「間接照明を折り上げ部分に取り付けると部屋全体に柔らかな光が広がります。カフェやホテルのような特別感を出したい時にも間接照明は効果的です。また、折り上げ部分が30cmほどあれば照明の光が綺麗に反射します」
白いクロスでより明るく開放的に
「折り上げ天井に白いクロスを使うことで、より明るく開放的な空間になります。シンプルな白いクロスは光を反射して空間全体を明るく、天井を高く見せる効果があるのです」
一方、高くなった部分にだけ木目調のアクセントクロスを張るなど、おしゃれなデザインを楽しむこともできます。開放感では白いクロスに勝るものはありませんが、天井に個性を出したい場合はアクセントクロスを選ぶのも良いかもしれませんね。
シーリングファンでデザイン性も冷暖房効率もアップ
シーリングファンを折り上げ天井に設置すると、室内のデザイン性が高まると同時に冷暖房効率も上がり一石二鳥です。
「シーリングファンを取り付けると部屋の中に空気の流れが生まれます。折り上げ天井のデメリットに熱暖房効率の悪さが挙げられますが、シーリングファンはそういったマイナスポイントを解消してくれるのです」
シーリングファンを取り付ける時は、メンテナンスのしにくさも視野に入れてから決定しましょう。羽の部分にたまった埃を掃除する場合、柄の長いハタキを使用するなど工夫が必要です。
スピーカー付きの照明を使ってリビングをシアターに
「折り上げ天井にスピーカー付きの照明を設置する人もいます。高い天井にスピーカーを取り付けることで、部屋のどこにいても同じように音が聞こえるという良さがあります。テレビやDVDデッキなどと接続して、リビングをシアターのように使用できるんです」
スピーカー付き照明には電球タイプやシーリングタイプがあるため、どの形状が一番使いやすいかよく検討してから購入すると良いでしょう。
化粧梁を取り入れる
化粧梁(見せ梁)とは、本来天井裏に隠れている梁を、あえて見せるデザインを指します。化粧梁には、構造上必要な梁を見せる場合と、デザインとして設置するものがあり、折り上げ天井とも相性の良いデザインです。
化粧梁には、以下の効果があります。
- 天井に変化をつけ、天井を高く感じさせたりや部屋の奥行きを演出する
- 素材や色にこだわることにより、天井や部屋をスタイリッシュに見せる
- 空間のアクセントになり、立体感や奥行きを感じさせる
折り上げ天井の高くなっている部分に化粧梁を用いることで、天井部分に奥行きや立体感が生まれます。
化粧梁について詳しくは→
化粧梁・あらわし梁とは?メリット・デメリットや費用、おしゃれに見せるポイントを解説
場所によっては施工できないケースもある
バルコニーの下や浴室の下など、天井裏に機械、24時間吸排気ダクト、給排水管などが入る場合、折り上げ天井を採用できないケースもあります。
また、上述したように、北側斜線制限のある地域に住宅を建築する場合は、天井を低くしなければならない場合もあり、折り上げ天井を設置できないこともあります。
さらに、ハウスメーカーによっては折り上げられる天井の高さなど、制限を設けているところもあります。設計の際にきちんと確認しましょう。
折り上げ天井にして理想の住まいを実現した先輩たちの実例を紹介!
ここから折り上げ天井の実例を紹介します。おしゃれな折り上げ天井を設置した先輩たちのマイホームをぜひ家作りのヒントにしてください。
【case1】23畳のリビングに設計された折り上げ天井
賃貸アパートの契約更新のタイミングで子どもを授か り、家づくりを決めたMさん夫妻。広々とした23畳のリビングは家族みんなでゆったりと使うことができる団らん スペースになりました。
計画当初は天井高をもっと上げたいと希望しましたが、予算オーバーだったため、折り上げ天井を取り入れて空間に開放感を持たせました。梁が見えないデザインのスッキリとした折り上げ天井には間接照明が埋め込まれています。壁に貼ったタイル調のアクセントクロスとも調和し、おしゃれな空間に仕上がりました。
この実例をもっと詳しく→
車好きの夫が妻を説得!洗車ができる憧れの庭付き一戸建て
【case2】和モダンな空間に馴染む折り上げ天井
すまい給付金や住宅ローン控除などの制度が拡充されたタイミングで家づくりに踏み切ったAさん。家族の暮らしやすさとデザイン性を兼ね備えた和モダンなマイホームを手に入れました。リビングには折り上げ天井を採用し、標準の天井高ながらも開放感のある空間に仕上がりました。シンプルなデザインの天井は和モダンな家とも相性が良く、空間のアクセントである格子扉とよく馴染んでいます。夫婦も子どもものびのびと過ごすことができる、自慢の家が完成しました。
この実例をもっと詳しく→
暮らしやすいアイデアが満載!家事ラクがテーマの和モダン住宅
【case3】華やかな空間を演出する折り上げ天井
引越しを検討していた際に理想的な土地を見つけ、思い切って購入したことから家づくりを決意したNさん夫妻。職場の先輩に話を聞く中で「スーモカウンターへ行ってみたら」とアドバイスを受けてスーモカウンターに相談。大好きなテーマパークのオフィシャルホテルをイメージして、折り上げ天井とモールディングを組み合わせた寝室が一番のこだわり。華やかな雰囲気に仕上がりました。
この実例をもっと詳しく→
あこがれの空間をローコストで実現。家事ラク間取りもうれしい住まい
折り上げ天井にする時のポイントは?
最後に、折り上げ天井にする時のポイントをまとめました。
・空間に開放感を持たせたい時にぴったり
・天井の高さや梁が見える場所など施工会社とよく相談して決めよう
・間接照明やシーリングファンと組み合わせると機能性もデザイン性もアップ
天井を高く、空間を広く見せることができる折り上げ天井。少ないコストで設置できるので、ゆとりのある空間を作りたい場合には検討すると良さそうです。何階に設置するか、梁を見せるかどうかなど、構造に関することは施工会社とあらかじめよく相談して決めましょう。
スーモカウンターに相談してみよう
天井のデザインについてもっと詳しく知りたい人は、ぜひスーモカウンターに相談してみてください。アドバイザーがお客様の家づくりを全面サポートします。注文住宅を建てたいけど何から始めたらいいの? という方も大歓迎。家づくりのヒントからお金のことまで親身になって相談に乗ります。
イラスト/タイマタカシ
取材・執筆/佐藤愛美(りんかく)、SUUMO編集部(折り下げ天井との違い、折り上げ部分が薄くなることで音が響く、家全体の間取りを踏まえて設置する、化粧梁を取り入れる、場所によっては施工できないケースもある)