家事が楽しくなる工夫のひとつとして、パントリーの活用があります。パントリーにはどんな役割があるのか、またどんな配置にすると使いやすいのか、一級建築士のYuuさんにお話を伺いました。
目次
パントリーとは?用途や種類について
最近はキッチンまわりの工夫としてパントリーを設ける家が増えています。住宅関係のカタログやパンフレットを見ても、パントリー専用のページがあるほどです。
それほど注目されているパントリーですが、あらためて、パントリーとはどのようなものなのでしょうか?
「パントリーは、キッチンの近くにつくる収納用の小さな部屋のことです。主に食品をストックする食品庫として活用されています。今は、調味料やレトルト食品、缶詰などの種類が昔に比べて豊富になっている上、生活スタイルが変化したため、まとめ買いをしてまとめて家事をする家庭が増えました。そのような背景もあり、パントリーへのニーズが高まっています」(Yuuさん、以下同)
昔は毎日買い物へ行き、買ってきた食材で料理をするものでしたが、今は共働き家庭も増え、週末にまとめて買い物をして保管しておき、日々の料理はそれらを必要な分だけ使うというスタイルが多くなりました。その結果、食品庫としてのパントリーが注目されるようになったのです。
「パントリーは通常、常温で腐らないものを保管するのに用いられます。今は冷蔵庫の収納力が上がっているので、腐りやすいものは冷蔵庫で保管し、腐らないものはパントリーで保管するというように、上手に併用するとよいでしょう。その際、家事のしやすさという点では、パントリーと冷蔵庫の位置関係が重要になってきます」
調理中にパントリーで保管した食材をすぐに取り出せるよう、キッチンの近くの場所に配置するのがオススメです。
さらにパントリーは、大きくは「小部屋タイプ」と「壁面収納タイプ」の2つのタイプに分けられます。
小部屋タイプには、ウォークインのものと、通り抜けができるウォークスルーのものがあります。ウォークインタイプのパントリーは、収納スペース自体が独立した部屋のようになっており、人が中に入って収納物を取り出せるのが特徴です。一方、ウォークスルータイプのパントリーは、廊下からキッチンへ抜けられるようになっていたり、キッチンとダイニングやリビングなどの別の部屋をつないだりなど、通路の役割を持つ収納スペースです。
ウォークインタイプは、通路としても機能するため、動線がスムーズで、配置によっては家事効率の向上にも寄与します。
また、壁面収納タイプには食器棚のような形状のものに加え、部屋の隅をうまく使ったコーナーパントリーや、棚にキャスターが付いているスライドキャビネットタイプなどがあります。
パントリーを設けるメリット
パントリーを設けるメリットとして、以下の3つが挙げられます。
- 食品の管理がしやすくなる
- 多くの食品をストックできる
- 掃除や整理がしやすい
- 収納が増えることでキッチンがスッキリする
それぞれのメリットを見ていきましょう。
食品の管理がしやすくなる
パントリーの最大のメリットは、食品の管理がしやすくなることだと、Yuuさんは言います。
「パントリーがない家庭では、調味料や食品のストックをキッチン周辺のいろいろなところにしまっているケースが多く見られます。しかし、そのような状態では食品の管理が上手にできず、同じものがいくつもあったり、賞味期限切れの食品がいつまでも奥に眠っていたりと、食品ロスが生じてしまいます。しかし、上手に管理されていると目的のものをすぐに取り出せるので余計なストレスが溜まりませんし、食品ロスも防げます。その上、家にある食品の把握が容易にできるので、目の前の食品を使ってどんな料理をつくろうかと、献立を考える際にも便利です」
また、食材を適切に収納することで、ストック状況を常に把握できるため、買い過ぎや無駄遣いを減らす効果も期待できるでしょう。
多くの食品をストックできる
パントリーの大きなメリットは、食品の大量ストックが可能な点です。日々の買い物で購入した乾物、缶詰、調味料などを余裕を持って収納でき、買い置きしたい非常食や大型の食品も整理しやすくなります。
特にウォークインタイプのパントリーは広い収納スペースを確保できるため、パスタや米、瓶詰食品など、かさばるものもきれいに収納可能です。
掃除や整理がしやすい
パントリーがあると、掃除や整理が格段にしやすくなります。専用の収納スペースが確保されているため、キッチンの他の部分にものが散らかりにくく、常に清潔で整った状態を維持できます。
棚や引き出しを使い、食品や調理器具をカテゴリごとに整理すれば、必要なものを見つけやすくなり、調理や片付けの時間を短縮できるでしょう。
また、汚れやすいキッチンまわりと違い、パントリーは食材や調理器具を汚れから守る役割も果たします。
収納が増えることでキッチンがスッキリする
パントリーを設けることで、キッチンの収納力が飛躍的に向上し、作業スペースがスッキリ片付きます。
また、頻繁に使用しない調理器具や食器などをパントリーに保管することで、キッチンまわりに余裕を持たせ、動線も確保しやすくなります。
パントリーを設置する上での注意点
それでは、どのようなパントリーだと使いやすいものになるのでしょうか?
「中のものを一目で全て見渡せるようなパントリーが理想です。奥行きの深いところに食品を詰め込むと手前の食品の陰になって奥の食品が見えなくなり、奥の方から賞味期限が切れてしまいます。例えば半畳くらいのスペースがあれば、ウォークインタイプにして両側に奥行きの浅い棚を設け、そこに食品を一列に並べるとか。頭上の棚はワイヤー状になっていると、下から見えるので、そこに何があるかが一目でわかります。スペースがない場合でも、引き出し式のものならばコンパクトに納まる上、中の物を一目で見渡せる使いやすい食品庫になります。このような工夫をすることが大事です」
パントリーがあると助かるのはこんな家庭
いくら便利だとはいえ、パントリーが全ての家庭に必要だとはいえないでしょう。暮らし方によっては、限られたスペースを他の用途に使う方が有効な場合もあるかもしれません。
それでは、パントリーが有効な家庭とは、どのような家庭なのでしょうか?
「共働きの家庭はもちろん、今はそれぞれが自分の時間を大切にするようになったので、共働きではなくても家事はできるだけまとめて手早くこなしたいという家庭が増えました。そのような『まとめ家事』をする家庭では、パントリーが活躍します」
他にも、パントリーは日々の料理に使う食品以外に、災害用の備蓄品を置いておく場所としても活用できます。特に最近は備蓄しながら食べる『ローリングストック』が話題となっています。これは、備蓄した食品を賞味期限が切れる前に食べ、食べた分をすぐに補充しておくという備蓄方法です。パントリーを使うとこの方法がスムーズに行えるため、防災意識の高い家庭にもオススメできるでしょう。
パントリーが生きる間取りとは?
パントリーは、玄関やキッチンと合わせて動線を計画すれば、より便利で使いやすいものになります。ここでは、間取り例を基にポイントとなる点を教えてもらいました。
「上の例のように買い物から帰ってキッチンへ向かう途中にパントリーがあると便利です。加えて冷蔵庫とパントリーが近くにあると、冷蔵庫に入れるものと、パントリーに入れるものをその場で仕分けできます。玄関、パントリー、冷蔵庫、キッチンがスムーズにつながるような間取りが理想ですね。さらに、パントリーから勝手口へ抜けられるとゴミ出しも便利です」
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先輩たちのパントリー活用例
それでは、スーモカウンターで注文住宅を建てた方の中で、実際にパントリーを設置した先輩たちの実例を見てみましょう。
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6人家族が快適に過ごせる二世帯住宅を目指したFさん夫妻。家族が多いだけに家事動線がスムーズな間取りが希望でした。
「ウォークインクロゼットとパントリーは、家事をラクにするため必須でした!」と妻は語ります。仕事をしながら、母と共に家事を担当する妻は、テキパキと家事が進められる間取りが大のお気に入りだそうです。
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築45年の戸建ての建て替えを検討したMさん家族。雑誌で知ったスーモカウンターに相談し、紹介された中からイメージ通りのデザインテイストの会社に依頼。料理好きでキッチンにもこだわりたいと考えたMさんは、キッチン横に冷蔵庫も収納できるほどの大容量のパントリーを設置しました。リビングから死角になるため、あえて扉を付けず、ものを出し入れしやすいようになっています。
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次男の誕生を機に家づくりを検討し始めたKさん。まずはプロの話を聞いてみようとスーモカウンターを訪れ、営業担当の対応が良いと感じた会社に依頼することに。物であふれやすいキッチンをスッキリさせたいという思いから冷蔵庫の横にパントリーを設置。広々とした空間では、白ベースの北欧テイストにまとめられた空間にタイルが映える、おしゃれなキッチンになりました。
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夫のリモートワークをきっかけに、部屋数が足りなくなり家づくりをスタートしたHさんファミリー。友人に教えてもらってスーモカウンターに相談し、紹介された中から営業担当者の対応が良かった会社に依頼。家づくりのはじめから、料理を頻繁にするため食材をストックするためのパントリーの設置を希望。入口は扉ではなくカーテンで目隠しすることで、ルンバがパントリー内につくった基地に戻れるようにし、希望通りのルンバブルな家を実現しました。
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パントリーを設ける際のポイント
パントリーを設ける際のポイントとして、以下の4つが挙げられます。
- 一定の面積と予算が必要になることに留意する
- 換気がしやすいよう配慮する
- 可動式の棚にする
- 動線を考えて配置を決めないと使いづらい
各ポイントについて解説します。
一定の面積と予算が必要になることに留意する
パントリーを設ける場合、収納力を高めるためには広めのスペースが必要です。特に、ウォークインタイプやウォークスルータイプのパントリーでは、ある程度の面積を確保しなければならず、その分、他の部屋やスペースの面積にも影響が出る可能性があります。
また、棚や引き出し、換気設備なども必要になるため、予算も余裕を持って考慮しておく必要があるでしょう。計画段階で、どれくらいの収納が必要かを見極め、スペースや予算に合わせた設計をすることが重要です。
換気がしやすいよう配慮する
パントリーは、食品や調理器具を保管する場所であるため、換気が重要です。特に食品の長期保存をする場合、湿気やカビを防ぐために空気の流れが良い環境を整える必要があります。部屋内だけでなくパントリー内もしっかりと換気ができるよう、家全体の換気計画を立てましょう。
可動式の棚にする
パントリー内の収納棚を可動式にすることで、使いやすさが向上します。可動式の棚を採用すれば、収納するものの大きさや形に合わせて高さを調整でき、スペースを無駄なく活用することが可能です。
季節ごとに使う食品や調理器具の種類が変わる場合でも、棚の高さを変更できるため、収納力を最大限に引き出せます。
また、取り外し可能な棚は掃除や整理もしやすく、常に清潔で整理された空間を保てます。パントリーを効率的に使いたい場合、可動式の棚はオススメの選択肢です。
動線を考えて配置を決めないと使いづらい
パントリーを設ける際、間取りや動線をよく考えないと使いづらくなってしまうことがあります。特に、ウォークインタイプやウォークスルータイプのパントリーの場合、キッチンから食材や調理器具を取り出す際に時間や手間がかかる場合があります。
パントリーはキッチンに近い位置に計画し、頻繁に使うものはできるだけキッチンの近くに配置するなど、使用頻度に応じた配置が重要です。
また、キッチンの近くに配置することを意識しすぎて、玄関から遠い場所になってしまうと、重いものを買って帰った際に運ぶのが大変になってしまいます。家事動線だけでなく、帰宅動線にも配慮して配置を検討しましょう。動線をしっかり考慮することで、効率的な動線を確保し、無駄な動きを減らすことができます。
パントリーを計画する際はまず食品の量を把握することが大切
最後にまとめとして、Yuuさんにパントリーを設ける際のポイントをお聞きしました。
「パントリーを計画するにあたり、まずは冷蔵庫や冷蔵庫以外の場所にしまってある食品を全てテーブルの上に出して、家の中の食品の量を把握することをオススメしています。全て棚卸しすることによって、それらをすっきり見やすく収納するためには、どの程度の棚が必要かがわかります。その上で、見やすく取り出しやすいものをつくるようにしましょう」
スーモカウンターでできること
各家庭で必要となるパントリーの収納力や設置スペースの広さは異なります。また、キッチンや玄関との配置も、全体プランの中で家事が無理なくスムーズに行えるようプランニングしなければ、ストレスが溜まり楽しく家事をすることはできないでしょう。
家事動線やキッチンまわりのプランニングで悩んだら、ぜひスーモカウンターに相談を。スーモカウンターでは、家事やキッチンなどへの要望を聞いたうえで、それらを実現してくれそうな依頼先を紹介しています。
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イラスト/あべさん
一級建築士。長年、リフォームの現場で培った経験から、住宅リフォームコンサルタントとして幸せなリフォームを実現するためのノウハウを発信。セミナー講演や執筆活動、人材育成研修などを通し、消費者と事業者の間をつなぐかけ橋となるべく奔走している。毎日新聞での連載やwebサイト「リフォームのホント・裏話」で最新情報を発信中