リビングやダイニングの一角に子どもが使えるスタディスペースを設けたいと希望する人が増えています。スタディスペースを設ける魅力とは? 三昭堂のハウスプランナーである田中大士さんにお話を伺い、スタディスペースを注文住宅に取り入れる際のポイントのほか、収納や照明などの設備選びのコツを紹介します。
スタディスペースとは?
スタディスペースの定義や特徴
「スタディスペースとは、その名の通り勉強のために用意されたスペースのことです。建築上の明確な定義はありませんが、宿題や調べ物など、机を使う作業をする場所というとイメージしやすいかもしれません。LDKの一角やスキップフロアなど、家の中のオープンな場所にカウンター等の作業台を設置して家族で共用するというのが最もポピュラーな活用のされ方です」(田中さん、以下同)
スタディスペースは家族のライフスタイルによってレイアウトや広さも多種多様です。
子ども部屋やワークスペースとの違い
「スタディスペースと似た言葉に『ワークスペース』があります。基本的に両者は同じつくりのものですが、ワークスペースは大人が仕事のために使う場所というイメージが強い一方、スタディスペースは子どもも宿題や読書をする場所として使う場所というイメージがあります。また、個室の子ども部屋とは異なり家族の目が届くオープンな場所に設けることが多いのが特徴です」
スタディスペースの広さの目安や間取りは?
広さやカウンターのサイズの目安
「スタディスペースの広さの目安は約2〜3畳です。コンパクトなものであれば1畳の面積でもつくることができます。カウンターや机を設置する場合、幅は120cm、奥行きは50cmほどあれば教科書やパソコンをゆとりを持って置くことができるでしょう」
2人で使用する場合は、広さは2畳以上、カウンターの幅は200cm以上が目安となります。
スタディスペースのある家の間取り例
スキップフロアにスタディスペースを設けた間取り
こちらは、1階と2階の中間のスキップフロアにスタディスペースを設けた間取りになります。1階の対面式キッチンとスキップフロアが向き合っているため、キッチンから勉強をする子どもたちの様子を見られるように設計を工夫しています。
LDKの隣にスタディスペースを設けた間取り
スタディスペースは家の中のどこにつくる?
リビング・ダイニング
リビングやダイニングは家族が最も多くの時間を過ごす場所。その一角にスタディスペースを設けることで、キッチンで家事をしながら子どもの宿題を見守ったり、コミュニケーションを取ったりすることができます。また、大人が家事や仕事をする場所として使うことも可能です。
スキップフロア
オープンな空間でありながら、個室感も味わえるのがスキップフロアの魅力。家族の存在を感じる場所で勉強に集中できるという2つのよさがあります。間取りによっては子どもたちがスキップフロアで過ごす姿を、キッチンから見ることも可能です。
階段の踊り場
階段の踊り場をスタディスペースにすることもできます。コンパクトなスタディスペースであれば1畳ほどの広さでも設計可能。限られた空間を有効活用したい人におすすめの手法です。
階段ホール
階段ホールを活用してスタディスペースをつくることもできます。階段や吹抜けを通して家族の気配を感じたり会話をすることもできます。その一方、リビングからは少し離れているので集中して勉強に取り組みやすい環境です。
スタディスペースを設置するメリットは?
家族の存在を感じる場所で勉強ができる
「リビングやダイニング、スキップフロアなどオープンな場所に設けることが多いスタディスペースには、家族の存在を感じながら勉強ができるというよさがあります。また、親も子どもの宿題を見守りながら家事などをして過ごすことができます」
勉強以外の用途でも使用可能
「スタディスペースは子どもが勉強をすることを想定してつくる空間ですが、テレワークや家事、趣味を楽しむ場所としても活用可能です。家族全員が幅広い用途で使うことができる便利なスペースと考えてよいでしょう」
狭いスペース、低コストで設置できる
「子ども部屋や書斎とは違い、スタディスペースは少ない設備でつくることができます。個室でないため建具も必要なく、建築コストはそれほど高くありません。また、建築コストを抑えるためにシンプルに設計し、後から使いやすい収納家具などを買い足すことも可能です」
スタディスペースを設置するデメリットと建築時の注意点は?
集中しにくい場合は個室で勉強を
「間仕切りのないオープンスペースにあり家族とコミュニケーションを取りやすいことは、メリットと感じる人もいればデメリットと感じる人もいます。集中したい場合は、スタディスペースではなく個室で勉強したほうがよいでしょう」
生活音対策はスタディスペースの位置決めが重要
「リビングの一角や吹抜けリビングのある階段ホールなど、仕切られていないスペースに設けられたスタディスペースは家族の声や生活音が聞こえやすいという特徴があります。テレビからなるべく離れた場所など、できるだけ音が気にならない位置にスタディスペースを設けることが大切です。また、オンライン授業やテレワークで会議をする場合など、できるだけ静かな環境が必要な場合はスタディスペース以外の空間を使ったほうがよいでしょう」
デッドスペース化を避けるため、将来の使い道を考慮する
「現在は子どもたちの勉強スペースやテレワークスペースとして使っていたとしても、将来的には使わなくなる可能性があります。子どもが巣立った後にデッドスペースにならないよう、将来的な活用方法までよく考えてから家の中にスタディスペースを取り入れることが大切です。せっかくつくった空間がデッドスペースになってはもったいないので、間取りを決める際に将来の暮らし方までイメージできるとよいでしょう」
デザインの邪魔にならないよう配置や統一感に注意
「例えばリビングに開放感を出したい場合や、シンプルなデザインにこだわっている場合、スタディスペースをつくってしまうと邪魔になってしまう可能性があります。そのため開放感やデザインに影響しない場所を選んでスタディスペースをつくることをおすすめします。または、インテリアや建具の色など空間全体のデザインを統一することによって、空間に馴染むおしゃれなスタディスペースになります。」
開放感やデザインの邪魔になってしまうことが心配な場合は、設計時に建築会社とよく相談しましょう。その際は採光の確保の仕方も検討してみましょう。スキップフロアや階段ホールの場合は、吹抜けの窓を利用した採光の確保が可能です。自然光が入る明るくおしゃれなスタディスペースになります。
スタディスペースに必要な設備のポイントは?
可変性の高い収納を設ける
「参考書やランドセルなど収納したいアイテムに合わせて棚を設けるとよいと思います。可動式の棚など可変性の高い収納にすると使用していく中で調整できるため便利です」
ワークスペースとして使用する場合は、パソコンやプリンター等の周辺機器の収納も検討するとよいでしょう。また、スタディスペースの壁にニッチを設けて本を収納したり、飾り棚のようにおしゃれに使うという選択肢もあります。
子どもが使いやすい机の高さにする
子どもが無理のない姿勢で使える机の高さにすることが大切です。カウンターを固定せず、成長や用途に合わせて高さを変えられるつくりにすることもできます。
手元を照らす照明を用意する
スタディスペースはリビングやスキップフロアに設けられることが多いです。空間の主照明だけでは明るさが足りないため、手元を照らすことができるライトを用意するとよいでしょう。
コンセントとインターネット環境を用意する
オンライン授業などパソコンを使用する学習方法も増えているため、コンセントとインターネット環境は必須です。また、設備を整えることで大人のワークスペースとしても使用しやすくなります。
注文住宅を建てた先輩たちのこだわりのスタディスペースを紹介
ここからは、スーモカウンターを通じてスタディスペースのある家を建てた先輩たちの実例を紹介します。ぜひ家づくりのヒントにしてください。
【case1】黒板壁紙のスタディスペース
子どもたちがのびのび暮らせる温かみのある家を希望して注文住宅を建てたUさん。子どもたちが走り回りたくなるような回遊性のある間取りを採用した家が完成しました。キッチンの横にはスタディスペースを設置。黒板壁紙を採用し、お絵描きをできるようにしました。小さな頃は遊びに、大きくなったら勉強に使うことができる空間です。
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家族が伸びやかに暮らせる、つながりのある住まい
【case2】きょうだいが一緒に使える広々としたスタディスペース
東日本大震災で建物が傷んだことをきっかけに、建て替えを決めたHさん。3人の子どもがいるHさんは、家族が心地よく暮らせる断熱性の高い家を希望しました。家族の会話が弾み、子どもたちが宿題をする場所にもなっています。また、2階ホールにもカウンターを設けてスタディスペースをつくりました。きょうだいが並んで勉強できる広いカウンターで、宿題を教え合う姿も見られるそうです。
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最短距離でゴールできた後悔のない家づくり
【case3】キッチンとダイニングの近くに設けたスタディスペース
震災をきっかけに都市部から住宅地への住み替えを決意し、家づくりを始めたTさんファミリー。家事動線にこだわった、子育てがしやすいマイホームが完成しました。ダイニングの近くにはスタディスペースを設置。子どもたちが大きくなったときにここで宿題ができれば、という思いから計画しました。
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平屋のように暮らしやすく、家族に一体感がうまれる家
【case4】家族みんなで使えるスタディスペース
妻の実家の近くに家を建てることを決めたHさん。暮らしやすさを重視し、水まわりの動線を工夫したり、雨の日でも洗濯物を干せるスペースを設けたりしました。ダイニング・キッチンの隣にはカウンターテーブルを設置してスタディスペースとして活用。子どもの勉強だけでなく、大人が仕事をする場所としても使うことができます。
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使いやすいスタディスペースをつくるときのポイント
最後にまとめとして、使いやすいスタディスペースをつくるときのポイントを田中さんに伺いました。
「スタディスペースは、いつ・誰が・何のために使うのかをよく考えた上で家に取り入れることが大切です。限られた面積の中に本当にスタディスペースが必要なのか、どれくらい使うのかなども含め、家族と相談をしてみましょう。その上で、使いやすい設備や配置を考えていくとよいと思います」
スーモカウンターに相談してみよう
注文住宅にスタディスペースを取り入れたいと検討している人は、ぜひスーモカウンターに相談してみてください。アドバイザーがお客様の家づくりを全面サポートします。注文住宅を建てたいけど何から始めたらいいの?という方も大歓迎。家づくりのヒントからお金のことまで親身になって相談に乗ります。
イラスト/アカネ