天候を気にせず洗濯物を干せる利便性の高さから、ガラスの天井や窓で囲まれたサンルームを新築住宅に取り入れたいと考える方も多いのではないでしょうか。
この記事では、「住むほどに愛着が湧く家づくり」をテーマに、地域環境にも配慮した家づくりを手がける「梶谷建設」の梶谷祥寛さんと多田由香さんが、注文住宅にサンルームを取り入れる際のポイントを解説します。
サンルームの広さや費用、メリット・デメリットなどを検討する際の参考にしてみてください。
サンルームとは?
サンルームとは、屋外から日光を取り込みやすい設計にした空間のことをいいます。洗濯物を干したり植物を育てたり、設計によっては子どもやペットの遊び場にするなど多目的に活用することができます。
「サンルーム」には、外付けタイプと住宅の部屋の一つとして設計された室内タイプの2種類があります。家を建てる土地の気候条件により適切なサンルームの構造は異なるので建築前によく検討したほうがよいでしょう。
サンルームには固定資産税がかかる?
建物の一部とみなされる空間には固定資産税がかかります。そのため、室内タイプのサンルームはもちろん、屋根や柱があり家屋の一部とみなされる外付けのサンルームも固定資産税の課税対象に含まれ、税金の支払いが必要になります。ただし、自治体によっては例外もあるため、建築前に一度確認してみるとよいでしょう。
また、リフォームで外付けのサンルームを後付けする場合は床面積が増えることになるので、自治体で定められた建蔽(ぺい)率や容積率を超えてしまわないか注意が必要です。
【タイプ別】サンルームの特徴と費用相場
サンルームにはさまざまなタイプがあり、それぞれに特徴や費用相場が異なります。ここでは、代表的なサンルームの種類とその価格帯について詳しく解説します。
外付けタイプの特徴
建物の外に突出し、屋根も壁も全面がガラスで覆われているため、太陽光をたくさん取り入れることができるのが特徴です。建物と同様に基礎づくりから行い、家具を置いて過ごすことも可能。リビングと間続きに設計すれば、アウトサイドリビングのように活用できます。
外付けタイプの費用の相場
外付けタイプを新築の注文住宅に設ける場合の建築費用の相場についても見ていきましょう。
外付けタイプのサンルーム単体の設置費用は一般的なもので50万〜80万円ほどといわれています。しかし、サンルームのデザインやガラスの種類などをグレードアップすると、その分だけコストがかかります。建築会社のプランや、どのメーカーの製品を選ぶかによっても金額に幅があります。
室内タイプの特徴
豪雪地帯や海辺の多湿地域に多いのが、室内タイプのサンルームです。外付けタイプのサンルームとは異なり、完全に建物の中に組み込まれ、ほかの居室と同様に施工されます。
「特に北陸地方など、雪が多く湿度が高い地域では屋外や屋外に面した場所に洗濯物を干してもなかなか乾かないという問題があり、サンルームを建物の中に設けることが通例です。また、ガラス張りタイプのサンルームは雪の重さに設備が耐えられない可能性が高く、豪雪地帯の家に設けるのはリスクがあります」(多田さん)
このタイプのサンルームの主な用途は洗濯物を干すことなので、「ランドリールーム」という名前で呼ばれることもあります。
室内タイプの費用の相場
室内タイプを新築の注文住宅に設ける場合の建築費用の相場についても見ていきましょう。
室内タイプのサンルームの場合は坪単価が設置費用の目安となります。例えば、坪単価が70万〜80万円の場合、3畳(約1.6坪)のサンルームをつくるとおよそ100万〜120万円の費用が発生することが想定されます。しかしこちらもガラス張りタイプと同様、建築会社のプランや設備のグレードにより金額幅があります。
テラス囲いやインナーテラスはサンルームと何が違う?
サンルームと似た位置づけに、テラス囲いやインナーテラスなどもあります。これらはサンルームとどのような違いがあるのでしょうか?
サンルームとテラス囲いの違い
また、外付けタイプのサンルームと似ているものに「テラス囲い」があります。テラス囲いとは、既存のテラスやベランダ、バルコニーに囲いを付けたもの。側面をガラス等で囲い、ポリカーボネート素材などの屋根を付けるのが一般的なつくりです。基礎部分から設計するサンルームと比較すると簡易なつくりですが、低コスト・短期間で設置できることがメリットです。
また、建築会社や施工会社によっては、テラス囲いも「サンルーム」と総称される場合があります。
サンルームとインナーテラスの違い
なお、混同されやすい設備の一つに「インナーテラス」がありますが、こちらは天井や壁で囲まれたテラス空間のため、採光確保に特化したサンルームとは性質が異なるものといえます。
サンルームをつくるのに必要な広さは?
サンルームをつくるには、どれくらいの広さが必要なのでしょうか。
「平均的な広さは約3畳ほどです。3畳あれば、3〜4人家族の洗濯物やシーツなど大きなものを干すことができます。2畳ほどのコンパクトなサンルームもありますが、シーツや布団カバーなどを広げて干すにはやや狭いかもしれません」(多田さん)
サンルームの適切な広さは用途によって変わります。洗濯物を干すだけでなく、子どもの遊び場や家族のリフレッシュスペースにしたい場合や、家具やインテリアを置きたい場合、それに見合うだけの面積が必要になります。
また、家事動線を考えて、洗濯機置き場や洗面スペース、クローゼットをサンルームと併設する場合もあります。どのような目的でサンルームを使いたいかを明確にし、建築会社との打ち合わせに臨みましょう。
サンルームのメリットは?
サンルームを住まいに設けるメリットについて、サンルームのタイプ別に解説します。
サンルームのメリット
まず、サンルームのメリットは以下のとおりです。
天気や花粉を気にせず洗濯物を干せる
サンルームがあることで、天気や花粉、黄砂などの影響を気にせずいつでも洗濯物を干すことができます。これは、2つのタイプの共通のメリットといえます。
外付けタイプのメリット
次に、外付けタイプのメリットは以下のとおりです。
光をたくさん取り入れることができる
全面ガラス張りでダイレクトに日光を取り入れることができるのが、外付けタイプのサンルームのメリット。遮るものがないため、室内の空間よりも明るくなり、洗濯物を干したり植物を育てるのに適しています。
デザインを工夫すると外観がおしゃれに
「外付けタイプのサンルームは外観のデザインの邪魔になるのでは?」と心配になるかもしれませんが、外観と統一感のあるデザインにするなど工夫をすることで建物のアクセントになり、外観のデザイン性が高まります。
多目的に活用するケースも
「洗濯物を干すスペースをはじめ、子どもやペットの遊び場、観葉植物置き場、家族のリフレッシュスペースなど多目的に活用されている事例もあります。弊社のお客様には多くありませんが、明るく暖かい場所なので、ヨガやストレッチのための空間として使う人もいるようです」
室内タイプのメリット
次に室内タイプのメリットも紹介します。
気候に影響されにくい
「完全に建物の中にあるため、雪や冷気、湿気などの影響を受けにくく、季節や天候を問わず洗濯物を干すことができる便利な空間です。また、全館空調が採用された家であれば、冬場や梅雨の時期であっても室内の暖かさによって自然に洗濯物が乾きます」(梶谷さん)
家事動線が便利になる
「サンルームを家の中のどこに配置するかによって家事動線が便利になります。洗濯の流れを考慮し、洗濯機置き場やクローゼットなどとサンルームの位置関係を工夫した間取りが主流です。また、洗面所や脱衣所、WIC(ウォークインクローゼット)などと併設型のサンルームも設計可能です。室内タイプのサンルームは気温を気にせず、空間を有効活用できるのが魅力です」(梶谷さん)
室内タイプのメリット | 外付けタイプのメリット |
---|---|
・天気や花粉を気にせず洗濯物を干せる ・気候に影響されにくい ・家事動線が便利になる |
・天気や花粉を気にせず洗濯物を干せる ・光をたくさん取り入れることができる ・多目的に活用しやすい ・デザインを工夫すると外観がおしゃれに |
サンルームのデメリットは?
サンルームを住まいに設けるデメリットについて、サンルームのタイプ別に解説します。
外付けタイプのデメリット
まずは、外付けタイプのデメリットを紹介します。
夏は暑く冬は寒い
外気の影響を直接受けやすい空間のため、夏は暑く冬は寒いというデメリットがあります。そのため、夏や冬は思ったよりも活用できず後悔したという失敗談も。断熱性の高いガラスを採用したり、室内の空調が流れやすい設計にするなど建築時の工夫が必要です。
定期的なメンテナンスが必要
風雨にさらされる場所にあるため劣化しやすく、定期的にメンテナンスが必要になります。初期費用はかかりますが、劣化しにくい素材を選ぶことも選択肢の一つです。また、環境によってはサンルームのまわりに落ち葉や土ぼこりなどが溜まってしまうため、掃除の手間がかかります。
防犯対策が必要
施錠を忘れてしまうと不審者が侵入しやすくなります。特に室内と繋がる開口部は施錠を忘れやすいので注意しましょう。また、全面ガラス張りのためサンルームの中が外から見えやすくなります。道路から覗かれないように、建築時に配置を工夫する必要があるでしょう。
室内タイプのデメリット
次に、室内タイプのデメリットを紹介します。
間取りに制限が生まれる
室内タイプのサンルームは延床面積に含まれます。そのため、サンルームを間取りに組み込む場合、その分ほかの空間が狭くなるおそれがあります。また、日当たりをどれくらい重視するかによっては間取り決めが難しくなるでしょう。一般的にはリビングなどを最も日当たりがよい場所に配置しますが、サンルームの日当たりを優先したい場合はリビングの採光計画を工夫することが必要です。
配置によっては臭いうつりが心配
「家事動線を優先してキッチンの隣にサンルームを設けたり、間仕切りのないサンルームにする場合は臭いや煙が洗濯物に付いてしまう可能性があるので注意しましょう」(多田さん)
脱衣所や洗面所に併設する場合は洗濯物が邪魔になる
「室内タイプのサンルームで脱衣所や洗面所を併設した場合、干してある洗濯物が邪魔になってしまう可能性も考えられます。物干しを邪魔にならない位置に設置するなど工夫するとよいでしょう」(梶谷さん)
室内タイプのデメリット | 外付けタイプのデメリット |
---|---|
・間取りに制限が生まれる ・配置によっては臭いうつりが心配 ・脱衣所や洗面所に併設する場合は洗濯物が邪魔になる |
・夏は暑く冬は寒い ・定期的なメンテナンスが必要 ・防犯対策が必要 |
サンルームは家のどこに設置する?
サンルームは設置場所や床の仕様によってタイプが分かれます。ここでは、サンルームの種類に加え、最適な設置場所についても解説します。
外付けタイプならアウトサイドリビングに
リビングとサンルームを隣接させると、アウトサイドリビングのように活用しやすくなります。サンルームとリビングの床面の高さを揃えると往来がしやすくなり便利です。
また、2階リビングの外にサンルームを設けるとより採光を確保しやすくなり、道路から覗かれにくくなります。しかし、サンルームに洗濯物を干す際に1階に洗濯機置き場があると上下移動の負担があるため間取り決めの際によく検討しましょう。
室内タイプなら動線が便利になる場所に
「家の中にサンルームをつくる場合は家事動線や生活動線を重視します。そのため、洗濯機置き場や衣類を収納するクローゼット、脱衣所などの近くにサンルームを配置する間取りが人気です」(多田さん)
サンルームにオススメの設備やインテリアは?
快適なサンルームをつくるには、設備やインテリア選びも重要なポイントです。ここでは、サンルームをより快適にするためのオススメ設備やインテリアを紹介します。
カーテン・ロールスクリーン
サンルームは日光を取り込む部屋ですが、屋外からの視線を防ぎたいときにはカーテンやロールスクリーンが役に立ちます。防犯のために夜間だけ屋外から見えないようにしたいと希望する人もいます。居室で使用する遮光カーテンではなく、薄手のレースカーテンでも十分に目隠しになります。
物干金物
物干金物とは、洗濯物を干すための金物のことです。サンルームで洗濯物を干す場合は必須といえます。高さを調整できる上下可動式や、使用しないときはコンパクトに収納しておけるものなどが便利です。
収納
サンルームの用途に合わせて収納を検討しましょう。主に洗濯物を干す場所としてサンルームを使う場合は、乾いた衣類やタオルをすぐにしまえるように収納計画を工夫すると家事動線が便利になります。
また、子どもの遊び場や趣味スペースとして使用する場合は、おもちゃや趣味の道具をしまえるキャビネットなどを置くことを考慮して面積を決めるとよいでしょう。
家具
サンルームでくつろいだり食事を楽しみたい場合は、ソファやテーブルセットを設置すると第2のリビングのように使用できます。直射日光によって家具が日焼けしやすいため、劣化しにくい素材の家具を選んだり、サンルームを使っていないときにはカーテンを閉めておくなど対策をしたほうがよいでしょう。
換気扇
「サンルームで洗濯物を干す場合、湿気対策のために換気扇は必須です。換気扇を取り入れることで、窓を開けて換気をしなくても湿気を外へ逃すことができます」(多田さん)
室内・外どちらのタイプでも換気扇はあったほうが安心です。外付けタイプのサンルームでは設置のための電気工事が必要になる場合もあります。
サンルームの活用方法!オススメの使い方5選【SUUMO編集部】
日差しを思う存分取り込めるサンルームが完成したら、さまざまな方法で活用していきましょう。ここでは、サンルームのオススメの使い方を5つ紹介します。
リラックススペースとして活用
サンルームは、自然のぬくもりや明るさを感じられる心地よい空間です。リラックスできるスペースとして活用すれば、日々の疲れを癒す場所にもなります。
十分な広さがあれば、第二のリビングとしてくつろげる環境が整い、家族や友人とゆったりとした時間を過ごせるのも魅力です。開放的な雰囲気に合わせて椅子やソファを配置し、快適な空間に整えれば、室内にいながら屋外の景色を楽しめます。
また、庭が見える位置にサンルームを設置すれば、四季折々の景色や植物を眺めながら過ごせる、自然と一体化した空間に。アイデア次第で、自分好みのリラックス方法をかなえられる、理想的なスペースとなるでしょう。
洗濯物干しスペースとして活用
日当たりの良いサンルームは、洗濯物を干すスペースとしても便利です。天候を気にせず干せるため、梅雨時や寒い季節でも安心して使用できます。
外に直接干さないことで、虫や花粉、PM2.5などの付着を防ぎやすく、アレルギー体質の家族がいる場合にも適しています。また、壁とガラスで区切られた空間のため冬場など洗濯物が乾きにくい時期に除湿機やサーキュレーターを効果的に併用して、効率よく乾かすこともできます。
さらに、家事動線を考えてサンルームを設置すれば、ベランダに干すよりもスムーズに洗濯物を干したり取り込んだりできるため、家事の負担が軽減されます。生活動線を圧迫しにくい点も、サンルームを洗濯スペースとして活用する大きなメリットです。
ガーデニングや家庭菜園の場として活用
サンルームは洗濯物を干す場所としてのイメージが強いですが、ガーデニングや家庭菜園のスペースとしても活用できます。
例えば、雨や湿気に弱い植物は、サンルームで育てることで雨よけや霜よけができ、より適した環境で管理できます。また、トマトや葉野菜などの家庭菜園も、キットを活用すれば手軽に始められます。サンルームは室内にありながら日当たりが確保できるため、カラスなどの鳥害を防ぎながら安心して野菜を育てられるのもメリットです。
ただし、夏場は直射日光が強くなりすぎることがあるため、植物によっては遮光対策が必要です。特に観葉植物などは日差しが強くなりすぎないよう、適度な管理を心がけるとよいでしょう。
子どもやペットの遊び場として活用
天候が悪い日や感染症の流行時には、小さな子どもが外で遊べる機会が限られてしまうこともあります。しかし、サンルームなら自然光がたっぷり入り、屋外にいるような感覚で快適に遊ぶことができます。
子どもの遊び場として活用すれば、室内よりものびのびと遊べる空間になり、外の景色を眺めながら過ごせるのも魅力です。多少動き回っても問題がないため、体を動かす遊びにも適しています。
また、ペットにとってもサンルームは快適なスペースになります。外の景色を楽しみながら過ごせるので、天候に左右されることなく気分転換が可能です。散歩が難しい日でも、サンルームで遊ぶことで運動不足を補いやすくなるでしょう。
趣味の空間(読書、ヨガ、DIYなど)
サンルームは、趣味を楽しむ空間としても最適です。自然光が差し込み、穏やかなぬくもりを感じられる環境は、自分だけの時間を満喫したい方にぴったりでしょう。
外の景色を眺めながら、読書や絵を描く、ヨガや体操をする、DIYに没頭するなど、さまざまな趣味に活用できます。開放的な空間は、創作活動のインスピレーションを得るのにも役立つでしょう。
また、庭に面したサンルームなら、キャンプが趣味の方にもオススメです。室内の快適さと屋外の開放感を兼ね備えているため、天候に左右されることなくキャンプ気分を楽しめます。バーベキューをしたり、アウトドアグッズを試したりと、気軽にキャンプ体験ができるのも魅力です。
天候が変わってもすぐに室内に移動できるため、快適な環境を維持しながら趣味を満喫できます。さらに、電源を利用すれば、アウトドアの雰囲気を自宅で気軽に再現できるでしょう。
サンルームを設置した後の後悔でよくあるケースとは?
サンルームは利便性が高く、多目的に活用できる魅力的な空間ですが、設置後に「思っていたのと違った」と後悔するケースも少なくありません。では、どのような点に注意しなければならないのでしょうか?
季節や天候による温度差が激しい
サンルームは、季節や天候によって温度差が大きくなりやすい空間です。断熱性の低さが想像以上だったと感じ、後悔するケースも少なくありません。
これは、サンルームに断熱性が十分ではないガラスを使用するとおこるケースです。サンルームはその特性上外気の影響を受けやすく、十分な断熱をしないと夏場は湿気と熱がこもり、高温多湿の状態になりやすく、場合によっては熱中症のリスクも考えられます。一方で冬は、外気の冷たさがダイレクトに伝わり、サンルーム全体が屋外と変わらない寒さになることも。
収納スペースとして活用していた場合、気温差によって収納物の品質が劣化することもあります。また、エアコンで温度調整をしようとすると、光熱費が予想以上に高騰する可能性も。
サンルームを快適に利用するためには、断熱性を高める工夫や適切な温度管理が必要です。設置を検討する際は、ガラスの種類や換気方法、遮熱対策などもしっかり考慮しましょう。
外部からの視線や音が気になる
開放感を重視したガラス張りのサンルームにすると、周囲からの視線や外部の音が気になるケースが少なくありません。特に、洗濯物を干すためにサンルームを設置した場合、外からの視線が気になり、プライバシーの確保が難しく感じることがあります。
また、道路に面したサンルームでは、家族や友人と過ごしている様子が外から見えやすく、気づかないうちに通行人の視線を感じることもあるでしょう。知らない人に家族構成や生活スタイルが知られるのを避けたい場合は、適切な対策が必要です。
プライバシーを守るためには、部分的にカーテンを取り付ける、目隠しフィルムを活用する、外からの視線を遮る植栽を配置するなどの工夫を検討しましょう。視線対策を行うことで、サンルームをより快適に活用できます。
メンテナンスに手間がかかる
サンルームは使い勝手の良い空間ですが、維持するためのメンテナンスには手間がかかります。ガラスで覆われているとはいえ、雨やほこりが入りやすく、汚れやすいのが特徴です。特に、庭や外への出入り口として利用している場合や、家庭菜園・ガーデニングを行っている場合は、頻繁な掃除が必要になるでしょう。
サンルームの掃除は床だけでなく、周囲のガラスや屋根部分も対象になります。屋根の清掃には脚立を使うことが多いですが、2階以上に設置している場合は危険が伴うため、専門会社に依頼する必要があります。
また、高圧洗浄機を使用すれば汚れを落としやすくなりますが、サンルームの素材を傷つけるリスクもあるため注意が必要です。さらに、サンルーム自体の耐用年数は10~20年程度とされており、つなぎ目部分のコーキングは5年ほどで劣化するため、定期的な補修も欠かせません。
このように、サンルームを快適に使い続けるためには、日々の手入れや定期的なメンテナンス費用を考慮しておくことが大切です。
思ったより使う機会が少なく、物置になってしまった
サンルームを設置した当初は、洗濯物を干したり植物を育てたりと活用していたものの、家事動線が不便に感じたり、洗濯物が思うように乾かなかったり、植物が元気に育たなかったりして、次第に使用頻度が減ってしまうケースがあります。結果的に、サンルームが物置代わりになってしまうことも少なくありません。
特に、設置前にサンルームのメリットやデメリットを十分に理解していないと、このような事態に陥りやすくなります。
もちろん、サンルームを物置として活用すること自体は間違いではありません。しかし、本来の魅力を最大限に活かすためには、設置前に用途をしっかり考え、ライフスタイルに合った使い方ができるよう計画することが大切です。
注文住宅にサンルームを設けて後悔しないための注意点
注文住宅でサンルームの設置を検討している場合、後悔しないためには以下の点に注意しましょう。
周辺環境や土地の気候を考慮する
「周辺環境や気候によって、適切なサンルームの構造は異なります。サンルームをどのような目的で使いたいのかにもよりますが、サンルームを建物の外につけるのか建物のなかに取り入れるのかをはじめ、よく検討することをオススメします」(多田さん)
都市部の住宅密集地では、1階のリビングの外にサンルームをつくっても十分な採光が確保できなかったり、防犯上の不安を感じたりする人もいます。また、多湿地域では屋外に面しているサンルームでは洗濯物が乾きにくいというケースも。外付けタイプのサンルームをつくりたい場合は、特に注意が必要です。
防犯対策をする
繰り返しになりますが、外付けタイプのサンルームは防犯対策が必須です。施錠を忘れないことと、カーテンなどで外からの視線を遮ることができるようにしておきましょう。もっと念入りな対策をしたい場合は、サンルームの外に目隠し用のフェンスを設ける選択肢もあります。
室内タイプのサンルームは、通常の居室と同程度の防犯対策をしてあれば問題ないとされています。心配であれば、窓の設置位置を目線よりも少し高めにしたり、曇りガラスを採用したりすると防犯対策を強化できます。
実用性重視で計画する
「多くの方は洗濯物を干す目的でサンルームをつくります。そのため、デザイン性よりも使いやすさや手入れのしやすさ、家事動線などを重視したほうが後悔のないサンルームになると思います」(多田さん)
サンルームをリフレッシュスペースや趣味部屋のように使用したい場合は、入居後にインテリアや観葉植物を設置してレイアウトにこだわることもできます。建築時にはできるだけシンプルに、実用性を重視して計画するのがポイントです。
床や壁には手入れしやすい素材を選ぶ
サンルームで洗濯物を干すと湿気がたまりやすいため、素材選びにも気をつけましょう。
「床は水濡れに強く掃除がしやすいものが適しています。室内タイプのサンルームでは拭き掃除がしやすいフロアタイルが人気です。また、壁材は調湿効果がある漆喰(しっくい)がオススメです。漆喰はサンルームに限らず家のなかの空気を心地よく保ってくれる素材です」(多田さん)
サンルームが本当に必要かどうかを考える
ライフスタイルによってはサンルームが必要ない、もしくはサンルームではないスペースにしたほうがよい可能性もあります。
「乾燥機で洗濯物を乾かす場合、洗濯物を干すためのサンルームは必要ないかもしれません。限られた面積のなかで間取りを決めると思うので、本当に必要かどうかを慎重に検討したほうがよいと思います」(梶谷さん)
例えば、アウトドアな趣味を楽しむために外付けタイプのサンルームを設けたい場合は、広めの土間玄関を確保したほうが使い勝手がよいというケースもあります。用途を明確にした上で検討しましょう。
先輩たちのおしゃれなサンルームの実例4選
これからサンルームの設置を検討している場合は、先輩たちの使い方を参考にしてみてください。ここでは、サンルームの実例を4つ紹介します。
【case1】テラスとつながる広々したサンルーム
日当たりのよいテラスとつながるサンルームの実例です。洗濯機置き場も併設しているので、洗い終わった洗濯物を移動せずにその場で干すことができます。テラスで外干ししていた洗濯物を、すぐにサンルームに移動しやすいのもメリットです。
【case2】洗濯物落としの小窓を設けたサンルーム
こちらはユニークな仕掛けのあるサンルームの実例です。隣接した脱衣所とサンルームの間に洗濯物を移動させるための小窓を設け、脱いだ衣類や使用したタオルなどを小窓から洗濯籠に落とすことができるのです。サンルームには洗濯機置き場もあるので、籠から洗濯機への動線もコンパクト。毎日の洗濯物が楽しくなりそうな設計です。
【case3】WIC併設のサンルーム
こちらはWICとサンルームを合体させた空間。天井に物干金物を取り付け、洗濯物が干せるようになっています。乾いた洗濯物はすぐにクローゼットに収納できるので便利です。
【case4】寝室の横にサンルームを設置した家
気温の変化が大きい賃貸物件で、結露やカビに悩まされていたTさん一家。より快適な生活環境を求め、新居の購入を検討しました。理想としたのは、断熱性が高く、日当たりや風通しの良い家。しかし、家づくりの進め方が分からず、情報収集を兼ねてスーモカウンターに相談することにしました。
「断熱性能に力を入れていて、比較的コストパフォーマンスがいい会社を希望していました」スーモカウンターでは3社を紹介され、それぞれの概算見積もりを比較しながら検討を進めました。
「1ヶ月未満で希望していた土地を見つけることができたのは、スーモカウンターの丁寧なアドバイスのおかげです」
妥協せず理想を追求したTさんの新居には、寝室の横にサンルームを設置。室内の快適さを維持しながら、自然光をたっぷり取り入れられる空間が完成し、心地よい暮らしを実現しています。
この実例をもっと詳しく→
快適な暮らしを叶える性能と立地を重視。動線にもこだわった自由設計の家
新築の注文住宅にサンルームを設けるときのポイント
最後に、注文住宅にサンルームを設けるときのポイントをお聞きしました。
「サンルームは気候や天候に関係なく洗濯物を干すことができる便利な空間です。住む地域によっては、サンルームはキッチンやお風呂と同じくらい生活に必要な設備になります。配置や広さ、設備など、新築時の設計の仕方によってさまざまな使い方ができるので、家族の暮らしに合った理想のサンルームを考えてみてください」(多田さん)
スーモカウンターに相談してみよう
注文住宅にサンルームを取り入れたいと検討している人は、ぜひスーモカウンターに相談してみてください。アドバイザーがお客様の家づくりを全面サポートします。注文住宅を建てたいけど何から始めたらいいの?という方も大歓迎。家づくりのヒントからお金のことまで親身になって相談に乗ります。
取材・執筆/佐藤愛美(りんかく)、SUUMO編集部
イラスト/くぼあやこ