和室に床の間があると華やかさが生まれ、格式高い雰囲気を演出することができます。しかし、古風な印象に傾いてしまわないか心配という人も多いのでは? また、せっかく床の間をつくったのに空間を持て余してしまうという悩みもあるかもしれませんね。
今回は、数多くの住宅を手掛けてきたルポハウスの石田悠衣さんに、おしゃれで実用性の高い床の間について聞きました。
床の間とは?
床の間とは、鎌倉・室町時代の書院建築から発達した座敷飾りのこと。和室の中に床を一段高くした空間を設け、花や置物を置いたり奥の壁に掛け軸を飾ったりするのが伝統的な使い方です。しかし、一口に「床の間」といっても、その様式は多種多様。代表的な種類やそれぞれの特徴をまとめました。
プロに聞く、床の間のメリット&デメリット
伝統的な様式からモダンなものまでさまざまなスタイルを楽しむことができる床の間ですが、実際にマイホームに取り入れる前に、本当に必要かどうかをよく検討したいものです。マイホーム計画のヒントとして、石田さんに床の間のメリットとデメリットについて聞いてみました。
床の間のメリット
「床の間を和室に取り入れることで空間に広がりを持たせることができます。床の間を確保する空間があれば、その代わりに扉付きの収納を設置することもできますが、あえて床の間を設けて床面を見せることで部屋が広々とした印象になる良さがあります」(石田さん、以下同)
また、床の間には子どもがいる家族ならではのメリットもあるのだとか。
「床の間は兜飾りや雛人形を置くスペースにもぴったりです。季節人形はどうしても場所を取るので、どこに飾ろうか迷っている人も多いと思います。そんなときに床の間を設けることを勧めています」
床の間のデメリット
空間を広く見せ、実用性もある床の間ですが、その一方、設置することで生じるデメリットなどはあるのでしょうか?
「床の間を設置することで、本来あるはずの収納スペースが減ってしまうというデメリットがあります。収納を減らしてまで床の間を設けるべきかは、計画段階でよく相談したほうがいいと思います。また、床の間も収納もどちらも欲しいという人には床の間の上部空間を利用して押入れ収納を設けるスタイルが人気です」
空間を引き立て、季節人形や掛け軸の置き場所にもなる床の間ですが、デメリットについても理解した上で設置を検討しましょう。限られたスペースを最大限利用しながらおしゃれな床の間をつくるためには、設計者に「どうして床の間がほしいのか」を十分に伝えることが大切です。
床の間の上手な活用法やアレンジのポイントは?
次に、床の間を上手に活用するためのアレンジポイントを、石田さんに聞いてみました。
収納を併設する
モダンな床の間は、あまり形式にとらわれる必要はありません。畳スペースの一画に収納を兼ねた板張りの場所を設置するだけでも床の間になります。床の間の上部や下部に戸棚を設置して、収納を確保する方法もあります。
「和室に床の間をつくりたいけれど収納スペースも削りたくない、という場合は収納併設型の床の間がおすすめです。収納を併設する場合、間接照明をつけることで床の間を明るく照らすことができます」
掛け軸のコーディネート
床の間の飾りつけは、すっきりとシンプルにするのがおしゃれに見せるためのコツです。掛け軸をかける場合は、真ん中に1本。小さい掛け軸でも、2~3本にしましょう。
「掛け軸を飾るのは床の間の伝統的な使い方の一つです。掛け軸のデザインによって空間の雰囲気を変えられる面白さがあります」
間接照明を置く
床の間に掛け軸を飾る場合は、照明を付けた方がいいでしょう。しかし、照明器具が正面から見えると床の間の落ち着いた雰囲気を損ねてしまうことも。照明器具を隠しながら明かりを灯せる間接照明がおすすめです。
「床の間の上部に収納を設ける場合、収納の下に間接照明を埋め込む手法があります。照明器具が見えないことや、飾った季節人形などをライトアップできるといったメリットがあります」
仏壇を置くスペースにする
将来的に仏壇を置くスペースとして床の間を計画する人もいます。
「実家から仏壇を引き取るまでは通常の床の間として、仏壇が来たら床の間に設置といったように活用します。従来は仏壇は仏間に置くことが普通とされていましたが、近年は床の間を仏間代わりにすることも珍しくはありません」
窓を設けて採光をとる
床の間のスペースを有効活用して外から日光を取り入れることもできます。
「床の間の背面、もしくは横の壁面に窓を設けて採光を確保することも可能です。特に和室の採光確保が難しい場合、床の間の一部を窓にすることは効果的です」
間取りによっては床の間にしか窓を設けることができない場合もあります。間取り決めの際は建築会社と窓の位置もよく相談して決めるとよいでしょう。
【編集部解説】おしゃれな床の間づくりのために事前に考えておくと良いこと
おしゃれな床の間をつくるために、次の4つを事前に押さえておきましょう。
- 方角
- 和室全体のデザイン・イメージ
- 置きたいインテリアの色や敷材
- 照明の質と量
これらをバランスよく考えることで、より魅力的な床の間を目指せます。
方角
床の間の正面は、「西を背にした東向き」「北を背にした南向き」「北西を背にした東南向き」が良い方角といわれることがあります。客人を北向きや西向きに座らせない配慮などに基づく知恵です。客人に対し、冬の北風を防ぎ、夏の暑い西日を遮る効果もあります。
しかし、床の間に仏壇を置く場合、その向きは宗派によりさまざまな解釈もあり、どの方角がよいかは一概に言えません。
現代では、家の敷地条件や間取り全体など制約条件も多く、考え方も多様化していますので、あまり方角にこだわらない方もいるようです。
ただし、床の間は和室の入口から一番遠い壁際に作ると、客人が部屋に入ったときに目を引くポイントとなります。生け花や掛け軸などの装飾品なども目に留まりやすくなり、おしゃれさを演出できるでしょう。
和室全体のデザイン・イメージ
床の間は伝統的な和室のポイントになるだけでなく、おしゃれさを引き立てることができ、和室全体のアクセントとして活用できます。そのため、和室全体のデザイン・イメージを事前に考えましょう。
天井・壁・畳などは同系色でまとめて、床の間だけ違う色彩を施すと和モダンな印象になります。
一方、伝統や格式などの印象を与えたい場合、本床を設置し濃色の木材などを床柱や床板に使うと重厚感があふれる空間を演出できるでしょう。
おしゃれな床の間にするには和室全体との役割分担を考えてデザインしましょう。
置きたいインテリアの色や素材
演出したいイメージを決めたら、それらに合ったインテリア・色・素材をチョイスしましょう。
和モダンなデザインにしたい場合、例えばカーブを施した意匠壁などを活用すれば直線の多い和室のアクセントになります。また、壁の色を部屋の天井と違った斬新なカラーにすると、アクセントカラーになり大胆さが演出できます。
一方、本来の和室の良さを引き立てたい場合、壁材に漆喰(しっくい)や珪藻土(けいそうど)などといった自然素材を用いると、和室によくなじみます。
高級感を打ち出したい場合、床の間の床板に無垢の一枚板など素材にこだわると効果的です。
床の間に合った照明の種類
照明も演出した床の間のデザインを考慮して設置しましょう。明るい雰囲気にしたいのか、旅館のような落ち着いた柔らかな雰囲気にしたいのかによっても照明選びは変わってきます。
床の間によく使用される照明には、行燈、スタンドライト、ダウンライト、ブラケット、ペンダントライトなどがあります。
- 行燈:和紙や木工製品でできているものが多く、生け花と相性が良い
- スタンドライト:季節に合わせたデザインも多いため四季折々の雰囲気を演出できる
- ダウンライト:掛け軸や絵画と相性が良い
- ブラケット:ダウンライト同様に壁面のディスプレイを楽しめるため掛け軸や絵画と相性が良い
- ペンダントライト:自在器付きタイプなら壁を照らし奥行きが生まれる、また竹製など素材によっては和の風情を演出できる
ただしダウンライトは、天井に使用される断熱材によっては、熱がこもり使用できないケースもあります。事前に施工業者などに相談してください。
ほかにも床の間には間接照明を使用するケースがあります。こちらも紹介した照明と同様に、掛け軸や絵画、生け花、そのほかインテリアを美しく照らし、床の間の雰囲気づくりに寄与します。
元来、床の間は明るくしない考え方もありますが、昨今では床の間の使い方も自由ですので、感性に応じて照明選びを楽しむとよいでしょう。
和モダンでおしゃれな床の間のデザインを紹介!
昔ながらのスタイルにこだわらない、現代の暮らしに合ったおしゃれな床の間も増えてきました。若い世代にも人気のデザインを見ていきましょう。
押入れ収納とセットになった実用性の高い床の間
小上がりの畳敷き空間の奥に設けた床の間。床の間の上には大容量の押入れ収納があり、客用布団の収納場所としても便利です。
「収納も床の間も欲しいという施主さんのニーズに寄り添った形にしました。もしも収納の扉が床面まであったら空間全体がもう少し狭い印象になると思いますが、床面を出して床の間にすることで広がりのある印象に仕上がっています」
コンパクトながらも伝統的な風合いを取り入れた床の間
現代の住宅の限られたスペースに合わせてコンパクトなつくりの床の間。壁紙はクロスですが、奥の壁は珪藻土クロス仕上げになっており、現代風でありながら伝統的な風合いも取り入れた床の間です。
「床の間の板には廊下の素材と合わせてむく材を使っています。同じ素材を使用することで空間に統一感が生まれ、空間全体に繋がりを持たせることができます」
本棚や机として活用できる便利な床の間
和室の壁一面を床の間風に仕上げ、棚を設置した事例です。本や小物を収納したり、アロマディフューザーの置き場所にもなります。本を読んだり、書き物をする作業台としても活用可能です。
「伝統的な様式からは少し離れますが、現代の暮らしに合わせてアレンジした人気の床の間のスタイルです。実用性、デザイン性ともに高く、空間を有効活用しながら床の間の良さも取り入れています」
棚と床に木の素材を使用したことで、温もりが感じられる空間になっている(写真提供/ルポハウス)
モダンな印象の掛け軸を飾った床の間
仏壇の横に設けた床の間に掛け軸や生け花を飾ることで、訪れた人の印象に残る空間になりました。和室の床には、縁なし半畳の畳を採用し、建具も高さのある引き戸を採用することでモダンな印象を与える、おしゃれな和室になっています。
「仏間と床の間を横並びにするのは伝統的なレイアウトですが、掛け軸やインテリアなどによってモダンでおしゃれな雰囲気を演出することもできます」
季節飾りや子どもの作品を飾ることができるシンプルな床の間
シンプルなデザインの床の間は、どんなものを飾っても違和感なく馴染みます。白いクロスを使用し、床の間が空間に溶け込んでいるのがポイント。床の間の横面の壁に窓を設け、外から光を取り込んでいるため掛け軸や季節飾りを自然光で照らすことができます。現代の暮らしに馴染むスマートな床の間です。
地窓のある床の間
畳コーナーの一画に設けた床の間です。上部は吊り収納になっていて、十分な収納力を確保しています。また、地窓を設けることで、暗くなりがちな畳コーナーにも陽の光が入って明るい印象に。壁は、落ち着いた色の青系のアクセントクロスにしました。隣接するリビングの白いクロスとの対比でメリハリをつけながらも調和のとれた空間になっています。
和テイストの花柄クロスが、ほっとする床の間
床の間の壁に、和テイストの花柄クロスを採用した例です。天井とお揃いにし、横の襖とも同系色でコーディネートすることで、モダンな印象ながら、ほっと落ち着ける空間になっています。この和室にも地窓を設けて、優しい光が差し込むつくりにしています。
庭の風景と調和した床の間
個室として独立する和室に床の間を設けて、和の雰囲気に浸れる空間に。屋外に面する障子戸は、障子を上げ下げすることで、庭の風景を切り取ったり、落ち着いた光量に抑えたりと、気分やシーンに合わせた場づくりができます。
畳と地続きのフラットな床の間は空間を広く見せたいときにも有効です。大きな掛け軸を飾ると空間全体が荘厳な印象になります。
リビングの奥に設けたモダンな和室に映えるシンプルな床の間
リビングの奥にモダンな和室、その一角に床の間を設けました。床の間の壁には、黒のアクセントクロスを張ることで全体が締まり、手前に置く装飾品も美しく引き立ちます。床の間の横に設けた押し入れはアクセントクロスと合わせて黒い建具を設置。シンプルで小ぶりながらも収納力のある床の間が実現しました。
収納扉の大胆な色使いで個性を演出した床の間
縁のないモダンな畳を敷いた和室にぴったりな、個性的な床の間の実例です。床の間の上部には大きめの収納をつくりました。天井や床面、建具などの色合いは空間全体で統一するのがポピュラーですが、この実例では扉を赤茶色で塗り床の間の印象を強めています。
床の間にコンセントを設けたことで、間接照明のスタンドライトなども置くことができます。日中は窓から日光が差し込む明るい和室、夜間は間接照明の明かりが照らすおしゃれな和室と2つの表情を楽しめるでしょう。
床の間を取り入れたおしゃれな和室空間の実例集
ここからは、スーモカウンターに相談した先輩たちの住まいを見ていきましょう。現代の家になじんだ素敵な床の間の実例を紹介します。
【case1】むく床の優しい色となじんだ和モダンな床の間
漆喰やむく材など自然素材にこだわって建築したSさん夫妻の住まい。リビングに隣接した小上がりの和室には、可動式の棚や押入れ、そして床の間を設置しました。和モダンな空間に溶け込んだコンパクトな床の間が和室のアクセントになっています。間接照明や花瓶などを置くのにぴったりのスペースですね。
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【case2】母が使う和室に御霊舎と共に設置した床の間
母と暮らす築60年の平屋を建て替えたIさんの住まいです。できるだけローコストで、母と共に安心して暮らせる家を希望して家づくりをスタート。母が使う和室には御霊舎(みたまや)を設置し、いつでも手を合わせることができるようにしました。その横には床の間を設け、掛け軸や生け花を楽しめるようになっています。建具や天井に淡い色の木材を使用したことで和室全体が柔らかな雰囲気に仕上がりました。
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【case3】カーブのラインを取り入れた現代風の床の間
木の香りに癒やされる家を建てたいと希望したMさん夫妻。玄関の扉を開けてすぐの場所に、ヒノキ柱を使った本格的な和室を設けました。和室の奥には床より一段高くなった床の間が。特徴的なのは床の間の上部の小壁です。伝統的な水平のラインではなくあえてカーブを取り入れ、現代風のおしゃれなデザインに仕上げています。来客にも見せたくなる自慢の和室が完成しました。
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木の香りと温もりに包まれた、のんびりリラックスできる家
【case4】ホテルライクな個性あふれる床の間
デザインにこだわって壁紙を選んだというSさん夫妻の住まい。和室には畳と同じ高さの床の間を設け、その背面に桜模様のおしゃれな壁紙を張りました。床の間の上部にはブルーとホワイトの壁を交差させたり、背面に小窓を設けて日光が入るようにするなど細部にもこだわっています。伝統を抜け出した新しい和室空間に仕上がりました。
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【case5】床の間で季節のしつらえを生活に取り入れた
のびのびと子育てをしたいとの思いから賃貸のタワーマンションから一戸建てに住み替えたGさん夫妻。
家づくりで重視したのは、子育て環境以外に災害時にも耐えうる丈夫な住まいでした。間取りに関しては、子ども部屋などプライバシーを確保したスペースと、リビングなど家族が集うスペースのゾーン分けを重視。収納も十分なスペースが確保されています。
また、妻のこだわりで、季節のしつらえを生活に取り入れるために純和風の和室をつくり、床の間を確保しました。マンションでは、和室はあっても床の間がないケースも多く、憧れの季節感を演出できる床の間を持て、満足できる仕上がりになったそうです。
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タワマンから自由に走り回れる戸建てに のびのび子育てを叶えた家
【編集部が解説】おしゃれな床の間にするための注意点
床の間をシンプルでおしゃれに演出するには、床の間内のバランスに注意しましょう。まず、床の間のサイズを計測してから、置くものを購入するのがよいでしょう。
次にインテリアなども少なめにするのがコツです。適切な広さの空間を、シンプルなアイテムで飾り、床の間の魅力を最大限に発揮させましょう。
サイズ計測をしてから置くものを購入する
床の間に装飾品を購入する前に、幅、奥行き、高さの正確なサイズを計測しましょう。計測を怠ると、選んだアイテムのおさまりが悪くなる可能性があり、結果として部屋全体のバランスが崩れてしまいます。
具体的には、飾り物がスペースを圧迫して窮屈な印象を与えたり、逆に小さすぎると存在感が失われます。おしゃれな床の間にするために、適切な寸法を把握して、バランスの取れた空間を計画しましょう。
インテリアなどは少なめにする
おしゃれな床の間を演出するためには、インテリアや装飾品の数を厳選しましょう。
いろいろなアイテムをたくさん置きたくなるかもしれませんが、実は控えめにする方が効果的です。たとえば、お気に入りの花瓶や絵など、選りすぐりのアイテムだけを配置することで、床の間の落ち着いた雰囲気をぐっと引き立て、床の間のおしゃれ度を高めてくれます。
また、シンプルな空間は掃除やお手入れも簡単になります。家事・子育て・仕事など多忙な方には実用的な選択ともいえます。
将来リフォームやDIYで活用方法を変えるのも良し
せっかくつくった床の間も「使わなくなったらどうしよう」という不安がよぎるかもしれません。
床の間は装飾品、あるいは仏壇を置くスペースなど神聖なイメージもありますが、必要がなくなったら思い切ってリフォームしてみるのも手です。DIYで個性を演出してもいいでしょう。
リフォームやDIYで床の間を活用する場合、扉をつける方法と、扉をつけずにオープンにする方法があります。
扉をつける場合、棚板を設置すれば布団などが入る押入れに。ハンガーパイプを段違いで2本設置することもできます。
オープンにする場合は、カウンター板を置けば作業場に、棚を置いて書籍や小物を並べれば収納を兼ねたインテリアになるでしょう。
床の間に使われる素材や部位の名前は?種類や特徴も
ここでは、本格的な床の間に使われる素材や部位の名前、および、その種類・特徴について解説します。
一つひとつの名前を覚える必要はありません。しかし、床の間について深く理解できれば、各部位の特徴を最大限に引き出せるため、一層おしゃれな床の間を演出できるでしょう。
素材や部位の名前
⒈天袋(てんぶくろ)
床脇の上部に収納のために設けられた戸棚のこと。現在は押入れ上部など、天井の近くに設けられた戸棚全般を指すことが多いです。
⒉下げ束(さげづか)
床脇にある天袋の襖の戸当たり部分に設ける束のこと。天袋の底板を支える役割があります。また、小壁に設けた吊り束や落とし掛けを支える小さな柱も下げ束と呼ばれます。
⒊海老束(えびづか)
違い棚をつなぐ束のこと。雛束(ひなづか)とも呼ばれ、上部には筆返しという装飾が施されます。 また、海老束の角にある三角形の切り込みを「几帳面(きちょうめん)」といいます。
⒋違い棚(ちがいだな)
書院造の床脇に設けられる飾り棚のこと。筆返しが設けられた上の段には筆や冠、香炉を、下の段には書物や巻物、硯箱を置くのが一般的です。
⒌床柱(とこばしら)
床の間の片方の脇に立つ化粧柱のこと。床の間を構成する重要な部材の一つです。角柱のほか、丸柱、絞り丸太などさまざまな形があります。
⒍地袋(じぶくろ)
低い位置に設けられた収納。扉に日本画が描かれた華やかなものもあります。
⒎地板(じいた)
和室の畳と同じ高さに張られた床板のこと。床の間の前や床脇にあり、箪笥などを置く場所として使用されるのが一般的です。
⒏床板(とこいた)
床の間の地板となる板材のこと。板材で仕上げた床の間は板床(いたどこ)、畳を敷いた床の間は畳床(たたみどこ)と呼ばれます。
⒐床框(とこがまち)
床の間を一段高くする場合、床の間の手前の立ち上がりに設ける化粧材のこと。
⒑立足束(たたらづか)
書院の甲板(地板)を支える束のこと。床框から立ち上げる形で設けられ、床柱の反対側で床框を突き付けて納めています。
11.書院甲板(しょいんこういた)
書院に設けられた机のような板材。もともとは読書や書き物などの用途で使用されていましたが、現在は床の間の装飾として設けられる場合が多いです。
12.書院障子(しょいんしょうじ)
床の間の横にある書院に設けられた障子。格子や組子の障子や、彫刻飾りが組み込まれた格式高い障子などがあります。
13.書院欄間(しょいんらんま)
床の間の横にある書院の上に設けられた欄間。菱組欄間、透かし欄間などさまざまな形があります。
14.落とし掛け(おとしがけ)
床の間の垂れ壁の下に取り付ける横木のこと。竹や丸太を使用する場合もあります。
15.雲板(くもいた)
床の間の奥の壁上部に設置する化粧幕板。設置することで格式高い印象になります。
床の間の種類とそれぞれの特徴は?
本床(ほんどこ)
床板(とこいた)に床框(とこがまち)を施し、畳より一段高くしたスタイルの床の間。壁面に床柱を立て、上部に小壁を設けた代表的な様式。
蹴込み床(けこみどこ)
床框を施さないスタイルの床の間。床板の下に蹴込み板という垂直に立てる板を取り付けて一段高くしています。本床と比較すると、床框がない分、簡易的なつくりになっています。
踏込み床(ふみこみどこ)
床と同じ高さの床の間。地板を張るなど畳の一部だけ素材を変えて床の間にしています。「敷込み床(しきこみどこ)」とも呼ばれます。
織部床(おりべどこ)
床板を取り払い、天井と壁の境目を抑える廻縁(まわりぶち)に化粧板をつけた床の間の様式。安土桃山時代の武将・古田織部が好んだため「織部床」と呼ばれています。
置き床(おきどこ)
部屋の壁際に移動できる床板を設置したスタイルの床の間。家が完成してから後付けで気軽に取り入れることができます。
「床の間にはさまざまな伝統的なスタイルがありますが、近年は伝統に捉われず洋風の家にも合うモダンな床の間を設置する人が増えています。収納を設けたり間接照明と組み合わせることにより、現代の暮らしに合った新しい床の間が仕上がります」
おしゃれな床の間をつくるときのポイントは?
最後に、おしゃれな床の間をつくるポイントについて石田さんに聞いてみました。
「現代風のおしゃれな床の間をつくるときは、昔ながらのつくりにこだわらず、柱を取り払ったり洋風の壁紙を使用したりと、住む人の好みに合わせてアレンジを効かせることがポイントです。また、仏間と床の間の高さを合わせるなど、ラインをそろえるように設計することが美しい空間づくりの基本です」
そして、床の間をおしゃれに演出するには、「何を置くか」も重要です。最初の打ち合わせの段階で、季節人形や掛け軸の有無などを伝えておくことをおすすめします。
「床の間に和風のスタンドライトを置いて明かりを灯したり、生け花を飾ったりすることで空間がより華やかになります。奥の壁には書画を飾るのが伝統スタイルですが、趣味の書道の作品やお子さんの図工の製作物などを飾ってもいいですね。ミニギャラリーのように使うことができるのも床の間の良さです」
住む人のライフスタイルに合わせていろいろな使い方ができそうな床の間。ぜひ、住まいづくりのヒントにしてみてください。
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イラスト/小林敦子
監修/SUUMO編集部(【編集部解説】おしゃれな床の間づくりのために事前に考えておくと良いこと/【編集部が解説】おしゃれな床の間にするための注意点/将来リフォームやDIYで活用方法を変えるのも良し)
株式会社ルポハウス 近江八幡オープンスタジオ 設計士・インテリアコーディネーター